第3章 組織犯罪対策 

2 薬物犯罪組織の動向

(1)密輸入事犯の現状
 平成17年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は198件、検挙人員は210人と、それぞれ前年より155件(43.9%)、194人(48.0%)減少した。我が国で乱用される薬物のほとんどは、国際的な薬物犯罪組織の関与の下に海外から密輸入されており、航空機を利用して、手荷物品の中に隠匿したり、身体に巻き付けたり、国際郵便・国際宅配便を利用するなどの方法が用いられている。
 大量押収(覚せい剤及び大麻については1キログラム以上、MDMA(他の薬物との混合錠剤を含む。)については1,000錠以上の押収をいう。)事件での主な仕出地は、覚せい剤では中国、タイ、乾燥大麻では南アフリカ、ベルギー、大麻樹脂ではインド、イスラエル、MDMAではオランダ、フランスであった。
 
 チョコレートに偽装して密輸された覚せい剤
写真 チョコレートに偽装して密輸された覚せい剤
写真 チョコレートに偽装して密輸された覚せい剤
写真 チョコレートに偽装して密輸された覚せい剤

(2)薬物事犯への暴力団の関与
 平成17年中の覚せい剤事犯の検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の割合は51.3%であり、依然として覚せい剤事犯に暴力団が深く関与している状況がうかがえる。
 
 図3-5 暴力団構成員等による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成8~17年)
図3-5 暴力団構成員等による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成8~17年)
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事例
 侠道会傘下組織組長(61)ら5人は、14年2月ころから17年3月にかけて、配下の構成員らにプリペイド式携帯電話で注文を受けさせるなどして、組織的に覚せい剤を密売した。17年6月、麻薬特例法違反(業としての譲渡し)で逮捕した。同人らは、約3年間で約7.5キログラムの覚せい剤を密売し、約3億5,000万円の収益を得ていた(岡山、広島)。

(3)来日外国人による薬物事犯
〔1〕 イラン人薬物密売組織
 平成17年中のイラン人による覚せい剤事犯の検挙人員は88人と、前年より14人(18.9%)増加した。このうち、営利犯(営利目的所持及び営利目的譲渡をいう。)は45人で51.1%を占め、他の国籍・地域の者と比べると著しく高い割合を占めており、依然としてイラン人が覚せい剤の密売に深くかかわっている状況がうかがえる。最近では、繁華街等での無差別的な密売は減少したものの、携帯電話を利用して客に接触場所を指定する方法による密売が多数敢行されている。
 
 図3-6 来日外国人による覚せい剤事犯の検挙人員に占める営利犯(平成17年)
図3-6 来日外国人による覚せい剤事犯の検挙人員に占める営利犯(平成17年)
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〔2〕 国籍・地域別の検挙状況
 17年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は608人と、前年より16人(2.6%)減少した。このうち、覚せい剤事犯は412人と、前年より38人増加し、麻薬及び向精神薬事犯は47人(前年比34人減)、大麻事犯は145人(前年比16人減)、あへん事犯は4人(前年比4人減)であった。
 国籍・地域別の検挙状況をみると、ブラジルが121人(前年比22人増)、イランが107人(前年比18人増)、フィリピンが85人(前年比17人増)とそれぞれ前年より増加し、ブラジル人、イラン人、フィリピン人の検挙人員が多い状態が続いている。

(4)インターネット利用による薬物密売事犯
 平成17年中にインターネットを利用した薬物密売事犯で密売人を検挙した事件は18件と、前年より12件(200.0%)増加した。このうち、密売人が暴力団構成員及び準構成員であった事件は10件で、その多くを占めた。
 密売の主な手口は、インターネット上の電子掲示板等に「エス 0.3g 1万」等と掲載して薬物の購入を勧誘し、これに連絡してきた客から注文を受け、指定した預貯金口座に代金を振り込ませた後、薬物を配送するというものである。このように、検挙に係る薬物密売事犯の多くが、密売人が客と実際に会うことなく、インターネット上だけで薬物の売買を行っており、インターネット特有の匿名性を悪用したものである。

 第3節 薬物銃器対策

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