第3節 薬物銃器対策
1 薬物情勢
平成17年中は覚せい剤事犯の検挙人員が5年ぶりに増加に転じたほか、MDMA(注)等の合成麻薬事犯の検挙人員は過去2番目に多かった。また、乾燥大麻の押収量は過去2番目に多く、さらに、MDMA等の合成麻薬の押収量は過去最高を記録するなど、我が国の薬物情勢は極めて憂慮すべき状況にある。
(1)覚せい剤情勢
平成17年中の覚せい剤事犯の検挙件数は1万9,999件、検挙人員は1万3,346人と、それぞれ前年より2,300件(13.0%)、1,126人(9.2%)増加したが、押収量は118.9キログラムと、前年より287.2キログラム(70.7%)減少した。
スーツケースに隠匿されていた覚せい剤
図3-3 覚せい剤事犯の検挙状況の推移(平成8~17年)
事例
暴力団組長(52)ら4人は、覚せい剤水溶液59.4キログラムを、水枕に隠匿して福岡県内の飲食店へ配送しようとしたほか、埼玉県内の貸倉庫にMDMA28万6,119錠を所持していた。17年3月までに、海上保安庁との合同捜査により、覚せい剤取締法違反(営利目的所持)等で逮捕した(警視庁、福岡)。
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(2)各種薬物事犯
〔1〕 大麻事犯
平成17年中の大麻事犯の検挙件数は2,831件、検挙人員は1,941人と、それぞれ前年より187件(6.2%)、268人(12.1%)減少し、検挙人員の66.0%を未成年及び20歳代の若年層が占めた。大麻樹脂の押収量は230.5キログラムと、前年より減少したが、乾燥大麻の押収量は643.1キログラムと、増加し、乾燥大麻の押収量は過去2番目に多かった。
木製彫刻に隠匿されていた乾燥大麻
表3-9 大麻事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
〔2〕 麻薬等事犯
ア MDMA等の合成麻薬
17年中のMDMA等の合成麻薬事犯の検挙件数は881件と、前年より48件(5.8%)増加し、検挙人員は403人と、前年より14人(3.4%)減少した。また、検挙人員の70.9%を未成年及び20歳代の若年層が占めた。押収量は57万1,522錠と、前年より10万2,396錠(21.8%)増加し、過去最高であった16年の押収量を上回った。
図3-4 MDMA等の合成麻薬事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
倉庫に隠匿されていたMDMA
イ コカイン
17年のコカイン事犯の検挙件数は143件、検挙人員は36人と、それぞれ前年より18件(11.2%)、40人(52.6%)減少し、押収量は2.9キログラムと、前年より82.5キログラム(96.6%)減少した。
表3-10 コカイン事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
ウ ヘロイン
17年中のヘロイン事犯の検挙件数は31件と、前年より10件(24.4%)減少し、検挙人員は21人と、前年より8人(61.5%)増加し、その押収量は107.7グラムと、前年より75.1グラム(230.4%)増加した。
表3-11 ヘロイン事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
エ 向精神薬
17年中の向精神薬事犯のうち鎮静剤事犯の検挙件数は21件、検挙人員は11人と、それぞれ前年より27件(56.3%)、13人(54.2%)減少したが、その押収量は15,010錠と、前年より7,430錠(98.0%)増加した。
表3-12 向精神薬事犯の検挙状況(平成16、17年)
〔3〕 あへん
17年中のあへん事犯の検挙件数は31件、検挙人員は12人と、それぞれ前年より49件(61.3%)、47人(79.7%)減少し、その押収量は1.0キログラムと、前年より0.7キログラム(41.2%)減少した。
表3-13 あへん事犯検挙状況の推移(平成13~17年)
〔4〕 シンナー等の有機溶剤事犯
17年中のシンナー等の有機溶剤事犯の検挙(補導を含む。)人員は、摂取、吸入及び摂取・吸入目的所持によるものが2,783人、知情販売(相手が乱用する目的で購入すると知って販売すること)等が269人であった。それぞれの50.1%、61.7%を少年が占めた。
〔5〕 違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)への対応
近年、麻薬等と同様に多幸感、快感等を高めるものとして、「合法ドラッグ」等と称して違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)を販売する事案が散見される。警察では、この問題について関係機関と連携して諸対策を講じており、成分中に規制薬物が含まれ法令に違反する場合には、厳正な取締りを行っている。
18年3月には、N-メチル-α-エチル-3・4-(メチレンジオキシ)フェネチルアミン(別名MBDB)及びその塩類等が新たに麻薬及び向精神薬取締法における麻薬として指定され、規制対象となった。