第3章 組織犯罪対策 

4 民事介入暴力対策と暴力団排除活動

(1)都道府県暴力追放運動推進センター、弁護士会との連携
 警察では、暴力団の不当要求による被害を防止するため、暴力団対策法の規定に基づき都道府県公安委員会が指定した都道府県暴力追放運動推進センター(以下「都道府県センター」という。)で実施される不当要求防止責任者講習に警察官を講師として派遣したり、都道府県センター、弁護士会と緊密に連携し、暴力団からの被害の救済を行ったりするなど、民事介入暴力対策や暴力団排除活動を活発に展開している。
 
 暴力団排除広報ポスター
写真 暴力団排除広報ポスター

(2)行政対象暴力対策の推進
 暴力団を始めとした反社会的勢力が、不正な利益を得る目的で、行政機関やその職員を対象として違法又は不法な行為を行っている実態が明らかになっている。これに対して、都道府県警察では、都道府県センターや弁護士会と連携し、行政機関の職員を対象とした不当要求防止責任者講習を実施するなど、このような行政対象暴力を排除する対策を推進している。
 全国の地方公共団体では、暴力団等の不当要求等に対する組織的な対応を規定した、いわゆるコンプライアンス(法令遵守)条例、要綱等の制定を進めており、平成17年末現在、全国の地方公共団体の87.9%が、こうした条例、要綱等を制定している。
 また、国の行政機関でも、行政対象暴力関係省庁等連絡会議が開催されるなど、組織的な対応の強化が進められている。
 
 行政対象暴力関係省庁等連絡会議の開催
写真 行政対象暴力関係省庁等連絡会議の開催

(3)各種業及び公共工事からの暴力団排除
 警察では、暴力団の資金源を遮断し、業の健全化を図るため、国及び地方公共団体と連携して、産業廃棄物処理業、貸金業、建設業等の各種業からの暴力団排除を推進している。また、国及び地方公共団体と連携して、公共工事の請負業者から暴力団関係企業を排除するなど、公共事業からの暴力団排除を推進している。
 また、警察庁は、平成17年6月、国発注の公共工事からの暴力団排除を一層推進するため、国土交通省と協議を行い、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する業者については指名業者から排除するとともに、都道府県警察と国土交通省地方整備局等との連携を強化することについて同省と合意するなど、都道府県警察と国土交通省地方整備局等との協力関係を確立した。
 
 暴力団排除を訴える看板の掲示
写真 暴力団排除を訴える看板の掲示

事例1
 青森県警察本部長は、青森県知事から貸金業等の規制等に関する法律の規定に基づく意見照会を受け、貸金業の登録更新を申請した者について所要の調査を実施したところ、申請者が山口組傘下組織幹部の妻(24)であり、申請者が経営する貸金業者の事業活動を暴力団員が支配していることが判明したことから、その旨の意見陳述を行った。これを受け、17年6月、青森県知事は、当該登録申請を拒否した。

事例2
 三重県警察と国土交通省中部地方整備局は、17年9月、「中部地方整備局発注工事等からの暴力団関係業者の排除に関する合意書」を締結し、相互に連携を強化し、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する建設会社等を中部地方整備局が発注する公共工事等から排除することで合意した。
 これに基づき三重県警察は、同月、山口組と関係を有する建設会社を公共工事等から排除するよう中部地方整備局に通知し、これを受けた中部地方整備局は、この建設会社について、公共工事等の指名競争入札に参加する資格を停止した。

(4)暴力団員を相手方とする民事訴訟等に係る支援
 警察では、都道府県センター、弁護士会等と連携し、暴力団構成員及び準構成員による違法行為の被害者が当該暴力団構成員及び準構成員に対して提起した損害賠償請求訴訟や、暴力団事務所の明渡し又は使用差止請求訴訟等について、必要な支援を行っている。中でも、暴力団犯罪の被害者が、当該犯罪の実行行為者のみならず、その所属する暴力団の組長等の使用者責任や共同不法行為責任を追及する損害賠償請求訴訟は、被害回復に寄与することはもとより、暴力団組織に経済的な打撃を与え、対立抗争等の不法行為を抑制する効果がある。
 平成17年中に警察が行った暴力団関係事案に係る民事訴訟支援の件数は134件であり、そのうち、訴訟の提起に係る支援が62件、仮処分の申請に係る支援が36件であった。
 
 住民による暴力団事務所の撤去運動
写真 住民による暴力団事務所の撤去運動

事例
 17年4月に発生した対立抗争事件を契機とする暴力団事務所の明渡し請求訴訟について、北海道警察は、都道府県センター等と連携して、訴訟関係者に対し、身辺警護等の必要な支援を行うとともに、市民団体等による暴力団排除活動を支援した結果、当該事務所の撤去に至った。

コラム1 暴力団資金源等総合対策に係る省庁横断的な取組み

 平成4年の暴力団対策法の施行により、暴力団の社会からの孤立化が進んだ結果、暴力団構成員等の数は一時8万人を下回るまでに減少したが、最近は徐々にその勢力を回復させ、暴力団対策法施行以前の水準に迫りつつある。この背景には、暴力団の資金獲得活動の巧妙化と暴力団の存在を許容又は利用する土壌の存在があることから、社会から暴力団を排除するためには、関係省庁及び官民が連携して社会全体で公共事業、企業活動等から暴力団を排除し、その資金源を遮断する必要がある。
 そこで、18年6月20日に開催された犯罪対策閣僚会議・青少年育成推進本部合同会議において、犯罪対策閣僚会議に、関係省庁から成るワーキングチームを設置し、関係省庁が連携して、暴力団の資金獲得活動の巧妙化等に対する効果的な対策を検討することとされた。

 第2節 暴力団対策

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