第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

5 事件・事故への即応

 交番、駐在所等の警察官は、事件、事故等が発生した際には、直ちに発生現場に向かい、犯人の逮捕、現場保存等の措置をとっている。警察では、警察官が迅速に現場に駆けつけることができるよう、110番通報の受理や警察署等への指令を行うシステムを整備するとともに、パトカー等の機動力の活用に努めている。

(1)110番通報の現状
 110番通報受理件数は、平成17年中は約939万件と、前年より約15万件減少したが、依然として高い水準にある。これは、3.4秒に1回、国民約14人に1人の割合で通報がされたことになる。また、携帯電話等移動電話からの110番通報が半数以上(59.0%)を占め、件数は過去10年間で4.1倍になっている。
 警察では、毎年1月10日を「110番の日」と定め、110番通報を適切に利用するとともに、警察による緊急の対応を必要としない相談等の電話には、専用の「#(シャープ)9110番」を利用するよう呼び掛けている。また、移動電話を用いて110番通報をするときは、所在地や番地、目標物を確認するほか、通話中にはできる限り場所を移動しないことなどを呼び掛けている。
 
 表2-12 110番通報受理件数の推移(平成8~17年)
表2-12 110番通報受理件数の推移(平成8~17年)
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(2)通信指令システム
 110番通報に的確に対応するため、都道府県警察に通信指令室が設けられている。110番通報を受理した通信指令室では、直ちに通報内容を警察署等に伝え、パトカーや交番等の地域警察官を現場に急行させるとともに、必要に応じて緊急配備の発令、他の都道府県警察への通報等を行っている。
 緊急配備とは、重要事件等が発生した際に、迅速に被疑者を検挙するため、交番・駐在所の地域警察官を中心に警戒員を配置して検問、張り込み等を行うことをいうが、平成17年中の緊急配備の実施件数は10,133件(前年比1,674件減)であった。
 
 通信指令室
写真 通信指令室

 また、通信指令室が110番通報を受理し、パトカー等に指令してから警察官が現場に到着するまでの所要時間をリスポンス・タイムというが、同年中に警察本部の通信指令室で直接受理した110番通報に対するリスポンス・タイムの平均は、7分3秒であった。
 警察では、リスポンス・タイムの短縮のため、通報場所を早急に把握できる地理情報システムやパトカーの活動状況を容易に把握できるカーロケータ・システムを導入するなど、通信指令システムの高度化に努めている。18年度には、主要な警察本部に携帯電話等の発信地を表示するシステムを導入し、19年4月から運用を開始する予定である。

(3)パトカー、警察用航空機・船舶の活動
 全国の警察本部や警察署に配備されたパトカーは、交番・駐在所の地域警察官と連携して管内のパトロールを行うとともに、事件、事故等の発生時における初動措置をとっている。
 また、パトカー以外にも、全国に警察用航空機(ヘリコプター)が約80機、警察用船舶が約200隻配備されており、通信指令室やパトカーと連携し、その機動力をいかしたパトロール、事件・事故発生時の情報収集、交通情報の収集、災害や山岳遭難等の事故発生時の救助活動等を行っている。
 
 警察用航空機
写真 警察用航空機

事例
 17年7月に子どもの連れ去り事件が発生したが、被疑者の使用車両の型や塗色が判明したため、警察用航空機を用いて空から捜索していたところ、手配された特徴と一致する車両が、現場から約2キロメートル離れた駐車場に駐車してあるのを発見した。そこで、通信指令室を通じて地上の警察官をその車両の所有者方に向かわせ、同人から事情を聴取した結果、犯行を自供したため、未成年者略取罪で逮捕した(愛知)。

(4)鉄道警察隊の活動
 鉄道警察隊は、駅構内に本隊や分駐隊を置いて、列車内、駅等の鉄道施設及びその周辺のパトロールや警戒警備を行い、すり、置き引き、痴漢等の犯罪の予防及び検挙を図っている。
 また、痴漢の被害に遭った女性からの相談を受理した場合は、女性に同行して警乗を行うなど、必要な措置をとっている。
 
 鉄道警察隊
写真 鉄道警察隊
写真 鉄道警察隊

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤強化

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