第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

6 交番・駐在所の活動

 交番・駐在所では、パトロールや巡回連絡等の様々な活動を通じて、管轄する地域の実態や地域住民の要望を把握し、地域住民の要望にこたえている。また、昼夜を分かたず常に警戒体制を保ち、様々な警察事象に即応する活動を行うことにより、地域住民の安全と安心のよりどころとなり、国民の身近な不安を解消する機能を果たしている。
 平成18年4月1日現在、全国に交番は6,362か所、駐在所は7,196か所設置されている。

(1)パトロール、立番等
〔1〕 パトロール
 地域警察官は、パトロールを強化してほしいという国民からの要望にこたえ、事件・事故の発生を未然に防ぐとともに、犯罪を検挙するため、犯罪の多発する時間帯・地域に重点を置いたパトロールを行っている。パトロールに当たっては、不審な者に対する職務質問、危険箇所の把握、犯罪多発地域の家庭や事業所に対する防犯指導、パトロールカードによる情報提供等を行っている。
 
 パトロール
写真 パトロール

事例
 平成17年6月、パトロール中の地域警察官が、落ち着きなく辺りを見回している男(40)ら2人が乗車した自動車に保管場所標章が表示されていないことに気付き、その男らに職務質問を行った。その際、助手席にいた男が何かを隠すような動作を見せたことから両人の同意を得て座席の下を確認したところ、運転席の下から他人名義の預貯金通帳を発見した。そこで、引き続き職務質問を実施したところ、空き巣事件の被疑者であることが判明し、窃盗罪で逮捕した(熊本)。

〔2〕 立番等による警戒
 地域警察官は、交番、駐在所等の施設の外に立って警戒に当たる立番を行っている。また、駅、交通要点等の人が多く集まる場所や犯罪が多発している場所において、一定の時間立って警戒する駐留警戒等を行っている。
 
 立番
写真 立番

〔3〕 職務執行力の強化
 警察では、地域警察官の職務執行力を強化するため、職務質問、書類作成等の能力向上を目的とした教育訓練を実施するとともに、卓越した職務質問の技能を有する者を選抜して、警察庁指定広域技能指導官又は都道府県警察の職務質問技能指導員として指定し、職務質問技能の指導者の育成等に当たらせている。
 17年中の地域警察官による刑法犯検挙人員は32万6,685人と、警察による刑法犯の総検挙人員の84.4%を占めている。
 
 図2-24 地域警察官による刑法犯検挙人員の推移(平成13~17年)
図2-24 地域警察官による刑法犯検挙人員の推移(平成13~17年)
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(2)地域住民と連携した活動
〔1〕 巡回連絡
 地域警察官は、担当する地域の家庭、事業所等を訪問し、犯罪の予防、交通事故や災害の防止等、住民の安全で平穏な生活を確保するために必要な事項の指導・連絡や、住民からの意見・要望等の聴取を行う巡回連絡を行っている。

〔2〕 交番・駐在所連絡協議会
 平成17年末現在、全国の交番・駐在所に1万3,172の交番・駐在所連絡協議会が設置されている。
 そこでは、地域警察官が、地域住民と地域の治安に関する問題について協議したり、地域住民の警察に対する意見、要望を把握したりすることにより、地域社会と協力して事件・事故の防止等を図っている。

〔3〕 情報発信活動
 地域警察官は、様々な活動を通じて、地域住民に対し管轄地域の事件・事故の発生状況やその防止等の身近な情報を伝えている。
 例えば、管轄地域で侵入窃盗事件が発生した場合に、発生地域や手口等を記載した「交番速報」を作成し、あらかじめ登録した送付先にFAXで送付したり、自治会の掲示板のような地域住民の目に触れやすい場所へ掲示したりしている。また、地域の身近な出来事や事件・事故の発生状況を記した「ミニ広報誌」を作成し、自治会を通じた回覧等を行っている。
 
 巡回連絡
写真 巡回連絡

 
 交番速報
写真 交番速報

(3)遺失物・拾得物の取扱い
 地域警察官は、遺失物・拾得物を速やかに遺失者等に返還するため、遺失・拾得届の受理業務を行っている。平成17年中に警察が取り扱った遺失届は約350万件、拾得届は約640万件であった。拾得届のあった金品のうち、通貨は約7割、物品は約3割が遺失者等に返還されている。
 物品ごとの返還率をみると、同年中に警視庁に届けられた拾得物のうち、携帯電話は77.6%、証明書類は64.7%が遺失者等に返還されているが、衣類は2.2%、傘類は0.3%しか返還されておらず、また、このような遺失者等に連絡をする手掛かりが少なく返還が困難な物件や安価な物件についても、約6か月間保管しており、保管に伴う負担は極めて重い。
 警察の遺失物取扱業務は、明治32年に制定された遺失物法に基づいて行われているが、近年、経済の発展や社会情勢の変化に伴い、拾得物品の数は増大し、全国で年間1千万点を超えており、また、携帯電話や珍しいペット等、新しい種類の拾得物品も多くなっている。
 遺失物を取り巻くこうした社会・経済情勢の変化を踏まえ、国民にとって利便性が高く、かつ、合理的な遺失物取扱システムを構築するため、改正遺失物法が、18年6月、第164回国会において成立した。
 この法律の概要は、次のとおりである。
 ・ インターネット等による拾得物に関する情報の公表等、遺失場所を問わず拾得物を発見することができる仕組みを整備すること。
 ・ 拾得物の保管期間を6か月から3か月に短縮すること。
 ・ 大量・安価な物件や保管に不相当な費用を要する物件については、2週間以内に返還ができないときは売却等の処分をできるようにすること。
 ・ 取り扱う拾得物が多数に上り、かつ、これを適切に保管できる施設占有者については、高額な物件等を除き、警察署長への提出を免除すること。
 ・ 法律の公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
 
 表2-13 遺失物・拾得物の取扱い状況(平成13~17年)
表2-13 遺失物・拾得物の取扱い状況(平成13~17年)
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 遺失物センター
写真 遺失物センター

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤強化

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