第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

4 法務省との情報の共有

 警察庁やその附属機関の科学警察研究所が行った調査から、平成16年中に検挙した子どもを対象とした暴力的な性犯罪(強姦、強制わいせつ、強盗強姦、わいせつ目的略取・誘拐)の被疑者466人のうち、15.9%に当たる74人は、それ以前にも同種の性犯罪を犯していることが明らかになった。また、昭和57年から平成9年にかけて検挙した子どもを対象とした強姦事件の被疑者で追跡が可能な506人のうち、9.3%に当たる47人は、16年6月末までに再び子どもを対象とした強姦事件や強制わいせつ事件を犯していることが明らかになった。
 また、同年12月、子ども対象・暴力的性犯罪の前歴者が奈良県内で少女を誘拐して殺害した事件、17年2月、所在不明となっていた仮釈放者が愛知県内で幼児を殺害した事件及び同年5月、所在不明となっていた保護観察付執行猶予者が東京都内で少女を監禁していた事件について、それぞれ被疑者が検挙されたが、このような者による再犯が相次いで発覚したことは社会に大きな不安を与えた。そこで、警察庁と法務省は、これらの者による再犯の防止等を図るため、両省庁間で所要の情報を共有し、連携を図る仕組みを同年中に構築し、運用を開始した。

(1)子ども対象・暴力的性犯罪に係る出所情報の共有
 警察では、子どもを対象とした暴力的な性犯罪により刑事施設に服役している者の出所予定日、出所後の帰住予定先等の出所情報について、平成17年6月から、法務省から提供を受け、出所者の更生や社会復帰を妨げないよう配慮しつつ、犯罪の予防や捜査の迅速化等への活用を図っている。
 
 図2-23 子ども対象・暴力的性犯罪に係る出所情報の活用
図2-23 子ども対象・暴力的性犯罪に係る出所情報の活用

(2)凶悪重大犯罪等に係る出所情報の共有
 警察では、凶悪重大犯罪等(殺人、強盗等の凶悪重大犯罪及びこれらの犯罪に結びつきやすく、再犯のおそれが大きい侵入窃盗、薬物犯罪等)により服役中の刑事施設から出所した者又は出所する予定の者の出所情報について、平成17年9月から、法務省から提供を受け、同種の犯罪が発生した場合の迅速かつ的確な被疑者の絞り込み等に活用している。

(3)保護観察中に所在不明となった者の情報の共有
 所在不明となった仮釈放者及び保護観察付執行猶予者について、平成17年12月から、保護観察所からの協力依頼に基づき、警察がその者の所在調査に協力することとし、その者に関する情報を警察が把握した場合に、その情報を保護観察所に提供することなどにより、保護観察制度の適正な運用に寄与することとしている。

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤強化

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