第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤強化

1 捜査体制の整備

(1)組織・人員の効率的な運用と捜査員の増強
 犯罪情勢の悪化に伴い、捜査すべき事件の数は増加し、その内容も複雑化・高度化している。これに対し、警察では、業務の合理化を徹底しているほか、刑事部門と他の部門が連携した横断的なプロジェクトチームを設けたり、機動捜査隊等警察本部の執行隊を情勢に応じて集中配置したりするなど、限られた組織・人員の効率的な運用に努めている。
 他方、こうした取組みにもかかわらず、多発する事件に捜査と検挙が追い付かないのが現状であることから、効率的運用や合理化を進めてもなお不足する捜査員の増強を行い、捜査体制を強化している。

(2)初動捜査体制の整備
 事件発生時には、迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、又は現場の証拠物や目撃者の証言等を確保することが重要である。
 このため、自動車の機動力を生かした捜査活動を行い、事件発生時には現場や関係箇所に急行して犯人確保等を行う機動捜査隊や、現場鑑識活動が特に重視される事件について、高度な鑑識活動を行うため現場に臨場する機動鑑識隊(班)を編成し、24時間体制で事件の発生に備えている。
 
 出動する機動捜査隊
写真 出動する機動捜査隊

事例
 平成17年4月、茨城県鹿嶋市内の民家で強盗事件が発生したとの110番通報を受け、現場を管轄する警察署の地域課員と機動捜査隊の隊員が現場に急行したところ、民家の台所で刃物を所持した無職の男(39)を発見し、強盗未遂罪で逮捕した。この事件では、110番受理後、約10分で被疑者を逮捕することができた(茨城)。

(3)鑑識活動の強化・鑑定技術の高度化
 犯罪の現場等から採取した資料は、犯人の絞り込みや特定のために活用され、公判でも、犯罪の立証上極めて重要な役割を担う。
 このため、警察では、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等の設置・運用により、現場鑑識活動を強化するとともに、関連技術の研究開発や資機材の開発・整備を推進している。

事例
 平成17年12月、鹿児島県内の離島でタクシーの運転手に対する強盗殺人事件及び強盗殺人未遂事件が相次いで発生した。機動鑑識隊員等は事件の発生直後から現場鑑識活動を行い、強盗殺人未遂事件の現場から被疑者が遺留した可能性の高い指紋を採取した。これを指紋自動識別システムにより照合した結果、犯罪経歴のある無職の男(30)の指紋と一致したことから、この男を被疑者として割り出すことができた。18年1月までに、強盗殺人罪等で逮捕した(鹿児島)。

 
 機動鑑識隊
写真 機動鑑識隊

 
 現場鑑識活動
写真 現場鑑識活動

(4)捜査員の育成
 「捜査は人なり」と言われ、捜査力の充実強化には、優れた人材を登用し、その知識及び能力を伸ばすことが不可欠である。このため、都道府県警察では、刑事部門の捜査員として任用する者の選考に当たっては、適性を的確に見極めるとともに、任用予定者に対して所定の教育訓練を行っている。警察学校で教育した知識、理論及び技能は、経験豊富な捜査員と共に行う実務を通じて、実践的に体得させるよう努めている。
 また、犯罪捜査には、特定分野に関する高度な専門知識、専門技能が必要とされることが多く、その傾向は、経済社会の進歩に伴い強くなっているため、警察庁の附属機関である警察大学校等において、特殊事件捜査、科学捜査、財務捜査等に従事する者に専門的な教育訓練を施している。

(5)国民との協力による捜査
 犯人を検挙し、事件を解決するためには、犯罪捜査に対する国民の理解と協力が不可欠である。しかし、犯罪捜査に対する国民の意識は変化し、その理解と協力を得ることは、これまで以上に困難となりつつある。
 警察では、様々な媒体を活用して、事件発生時の速やかな通報、聞き込み捜査に対する協力、事件に関する情報の提供等を広く国民に呼び掛けている。また、必要に応じ、被疑者の発見、検挙や犯罪の再発防止のため、被疑者の氏名等を広く一般に公表して捜査を行う、公開捜査を行っている。

事例1
 平成17年3月、愛知県警察が詐欺罪等で指名手配していた被疑者について情報の提供をテレビ番組で呼び掛けたところ、数日後、番組の視聴者から福岡県警察に対して、福岡県北九州市内で被疑者に似た男を見掛けたとの110番通報がなされた。これを受け、福岡県警察の機動捜査隊員が現場に急行し付近を検索したところ、被疑者に似た男を発見し、職務質問等を実施した結果、愛知県警察が指名手配していた被疑者であることが判明したことから、詐欺罪等で逮捕した。

事例2
 徳島県警察では、17年7月1日から31日にかけて、インターネット上の広告事業を行う会社の協力を得て、同社のウェブサイトに、13年4月に発生した殺人事件の警察庁指定重要指名手配被疑者に関する広告を掲載し、情報の提供を呼び掛けた。18年6月現在、捜査中である。

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤強化

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