第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

11 知的財産権侵害事犯、環境事犯等

(1)知的財産権侵害事犯
 平成17年中の知的財産権侵害事犯の検挙件数は1,615件(前年比382件(31.0%)増)、検挙人員は798人(前年比158人(24.7%)増)と、いずれも前年より増加した。
 偽ブランド事犯(商標法違反)では、仕出国が判明した押収品の大半は、依然として韓国、中国を中心としたアジア諸国・地域から国際郵便、手荷物等として密輸入されていた。また、同年は、自動車部品に係る偽ブランド品を大量に押収したため、台湾を仕出国とする押収品数が急増した。販売形態は、街頭販売が約4割、店舗販売が約4割、インターネット・オークション利用販売が約2割であった。街頭販売では、来日外国人によるものが約7割を占めた。
 海賊版事犯(著作権法違反)では、会社員や学生等の一般のコンピュータ利用者が海賊版のCDやDVDを作成し、販売する事犯が約4割と目立ち、また、販売形態としては、インターネット・オークションを利用するものが約4割を占めた。
 警察では、韓国及び中国から大量の偽ブランド品が密輸入されていることや両国において我が国の企業の知的財産権が侵害される例が増加していることを踏まえ、両国の捜査機関に対し国内での取締りの強化を要請するとともに、両国の捜査機関と情報交換を行うなど連携強化を図っている。また、不正商品対策協議会(注)における活動を始め、権利者等と連携した知的財産の保護及び不正商品の排除に向けた広報啓発活動を推進している。

注:昭和61年、不正商品の排除及び知的財産の保護を目的として、知的財産権侵害に悩む各種業界団体により設立された任意団体。警察庁等の関係機関と連携し、シンポジウムの主催や各種催物への参加を通じて、広報啓発活動、海外における不正商品販売の実態調査、海外の捜査機関や税関等に対する働き掛け等を行っている。


 
 表2-7 知的財産権侵害事犯の法令別検挙状況の推移(平成13~17年)
表2-7 知的財産権侵害事犯の法令別検挙状況の推移(平成13~17年)
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 表2-8 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国別押収状況の推移(平成13~17年)
表2-8 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国別押収状況の推移(平成13~17年)
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事例1
 ぱちんこ景品卸売業者の男(50)は、外国から密輸入された腕時計等の偽ブランド品をぱちんこ店の景品として販売していた。17年10月までに、この男と偽ブランド品を密輸入していた業者を含む3法人11人を商標法違反(販売目的所持)で検挙し、偽ブランド品約1万1,000点を押収した(北海道)。

事例2
 イスラエル人の男(46)ら4人は、17年8月、繁華街において腕時計等の偽ブランド品を露店で販売していた。同月、商標法違反(販売目的所持)等で逮捕し、約340点の偽ブランド品を押収した(熊本)。

 
 押収した偽ブランド品
写真 押収した偽ブランド品

 
 ほんと?ホント!フェアin仙台
写真 ほんと?ホント!フェアin仙台

事例3
 17年5月に不正商品対策協議会が開催した「不正商品防止キャンペーン「ほんと?ホント!フェアin仙台」」では、宮城県警察職員等が、最近の検挙事例を交えながら、司会者との対話形式により、知的財産権保護の重要性や取締りの状況等について説明を行った。

事例4
 18年3月に不正商品対策協議会が開催した「アジア知的財産権シンポジウム2006」では、警察庁職員が、司会者との対話形式により、最近の知的財産権侵害事犯の取締り状況等について説明を行った。

(2)環境事犯
〔1〕 廃棄物事犯
 警察では、環境を破壊する犯罪のうち、特に、廃棄物の不法投棄事犯等を重点取締り対象とし、組織的・広域的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯等を中心に取締りを強化し、排出事業者の責任を厳しく追及している。また、関係機関に必要な情報を提供して積極的な行政措置をとることができるよう支援し、環境被害の拡大防止と早期の原状回復を促している。
 平成17年中の廃棄物事犯の検挙事件数は4,123件、検挙人員は5,728人と、いずれも同事犯の統計を取り始めた2年以降では最多となった。このうち、産業廃棄物の処理責任を負っている排出事業者を不法投棄、委託違反等で検挙した事件は308事件であった。また、軽油の密造に伴い生成される硫酸ピッチ(注1)やスラッジ(注2)の不適正処分事犯を8事件、63人、5法人検挙した。

注1:軽油を精製する際、不純物として出る強酸性のタール状沈殿物。触れると肌がただれ、目に入ると失明のおそれもあるほか、鼻をつく亜硫酸ガスを発生させ、これを吸入すると呼吸困難等を起こす危険がある。
 2:硫酸ピッチを取り除いた軽油をさらに精製する際に不純物として出る泥状の沈殿物。強酸性のものは硫酸ピッチと同様の危険性を持つ。


 
 表2-9 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
表2-9 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
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事例1
 土木業者(66)らは、16年2月から17年3月ころにかけて、産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者でないのに、自社の廃棄物処分場において、県内や他県の建設業者らから建設廃材等約694立方メートルを不法に受け入れ、処分した。同年12月までに、この土木業者等24法人、73人を廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反(受託禁止等)で検挙した(千葉)。

〔2〕 絶滅危惧種等の野生動植物に係る事犯
 警察では、国際的に商取引が規制されている希少野生動植物の密輸入や国内での違法取引の取締りを行っている。17年中の絶滅危惧種等の野生動植物に係る事犯の検挙件数は29件、検挙人員は18人であった。
 
保護されたガビアルモドキ
写真 保護されたガビアルモドキ

事例2
 ペットショップ経営者(36)、動物園園長(59)ら5人は、15年12月、インドネシアから密輸入した国際希少種のワニ(ガビアルモドキ)等を国内で繁殖したものと偽り、不正に環境大臣の登録を受け、販売していた。17年11月までに、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律違反(不正登録)及び免状等不実記載罪で逮捕した(警視庁)。

(3)保健衛生事犯
 近年、国民の健康、美容願望につけ込み、医学的根拠が無い効能をうたい、医薬品として厚生労働大臣の承認を受けていない食品を販売するなどの薬事法違反や、無資格で医業行為を行う医師法違反等、国民の健康に被害を及ぼすおそれのある事犯が発生している。平成17年中の保健衛生事犯の検挙件数は515件(昨年比4件減)、検挙人員は570人(昨年比49人増)であった。
 
 表2-10 保健衛生事犯の検挙状況(平成16、17年)
表2-10 保健衛生事犯の検挙状況(平成16、17年)
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事例1
 食品販売業者(57)ら19人は、15年7月から17年4月にかけて、薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でないのに、アガリクスやメシマコブを原料とした医薬品を販売した。また、13年12月から17年2月にかけて、「がんに効く」等の効能をうたい文句に架空の体験談を掲載した書籍を販売するなどして無承認医薬品の広告をした。17年11月までに、薬事法違反(医薬品の無許可販売等)で検挙した(警視庁)。

事例2
 通信販売業者(27)ら10人は、17年3月から5月にかけて、薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でないのに、「無理なくやせる」等の効能をうたい文句に、中国製ダイエット用健康食品と称して医薬品をインターネット・オークションに出品し、販売するなどした。17年11月までに、薬事法違反(医薬品の無許可販売)で検挙した(広島、警視庁、三重、兵庫)。

事例3
 無職の女(58)ら5人は、16年7月から17年6月にかけて、「顔のしわを取る」等の美容効果をうたい文句に顧客を募り、医師の資格を持たないのに、コラーゲンと称する液体を顧客の顔面に注射した。17年9月、医師法違反(非医師の医業行為禁止)で検挙した(北海道)。

(4)諸法令違反
 例年、無線局を不法に開設する事犯が多発しており、平成17年中は電波法違反事件を1,414件検挙した。また、密漁等に係る漁業法違反事件を352件(前年比67件増)、水産資源保護法違反事件を249件(前年比41件増)検挙した。
 
 表2-11 主な諸法令違反の検挙状況(平成16、17年)
表2-11 主な諸法令違反の検挙状況(平成16、17年)
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事例
 稲川会傘下組織元構成員(37)ら6人は、17年10月、岩手県漁業調整規則に定められた採捕禁止期間に、岩手県宮古市の周辺海域において、あわび1,902個を採捕し、所持していた。同年12月までに、岩手県漁業調整規則違反(採捕及び所持)で逮捕した(岩手)。

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

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