第1章 組織犯罪との闘い 

イ 表の経済社会からの暴力団排除

(ア)業からの暴力団排除
 平成11年2月,債権管理回収業に関する特別措置法(以下「サービサー法」という。)が施行された。同法は,
 ・暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者が事業活動を支配する株式会社
 ・暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者が役員等に就任している株式会社
 ・暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をその業務に従事させ,又はその業務の補助者として使用するおそれのある株式会社
を債権管理回収業の許可に関する欠格要件とし,法務大臣は,債権管理回収業の許可をしようとするときは,警察庁長官に対して,許可申請者がこれらの欠格要件に該当するか否かについて,意見聴取できることとした。また,同法は,警察庁長官が,既に債権管理回収業の許可を受けている株式会社について,これらの欠格要件に該当すると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは,法務大臣に対して,当該債権管理会社に対して適切な措置を講ずべき旨の意見を述べることができることとした。
 その後,廃棄物処理法に定める産業廃棄物等の処分,運搬業等,使用済み自動車の再資源化等に関する法律に定める解体業者及び破砕業者についても,サービサー法と同様の仕組みが,法律の規定により設けられた。また,特定非営利活動促進法に定める特定非営利活動法人の認証・監督についても,所轄庁と警察当局との連携についての規定が設けられた。
 暴力団の不透明化が進行し,各種の業に進出して資金獲得活動を行っている事態を踏まえれば,これらの規定は極めて有効であり,今後も,暴力団員の介入により,業の適正が歪められるおそれが高い業態等については,同種の規定が設けられるように努めていく必要がある。

(イ)公共工事からの排除
 公共事業から暴力団を排除するため,事業の発注者である地方公共団体の指名停止基準に暴力団排除条項を盛り込むことを従前から関係機関に申し入れており,今後も地方公共団体との情報交換等連携を密にするとともに,「暴力団排除に関する合意書」を締結するなど,公共事業からの暴力団排除を積極的に推進していく必要がある。14年末までに全国3,287地方公共団体の6割以上,2,131地方公共団体において,指名停止基準に暴力団排除規定が整備されている。

(ウ)行政対象暴力排除
 第1節で述べたように,近年,暴力団等の反社会的勢力は,企業に対する不当な要求のみならず,地方自治体等の行政機関やその職員に対しても,機関誌の購読,賛助金の提供等の不当な要求を執拗に繰り返しており,これに応じた地方公共団体等もみられた。
 公共工事や公共施設等からの暴力団排除を実効あるものとするためには,各種の行政を担当する公務員等が,暴力団等に屈しない強い意志とそのためのノウハウを身に付けるとともに,行政に暴力団等が不当に介入できない仕組みを構築していき,「行政からの暴力団排除」を重要な課題として推進していく必要がある。
 このことを踏まえ,警察庁では,都道府県警察に対して,弁護士会,都道府県暴力追放運動推進センター等と連携した上で,
 ・行政機関の職員を対象とした暴力団対策法に基づく不当要求防止責任者講習の開催
 ・行政機関との連絡窓口の設置
 ・行政機関を対象とした違法・不当な行為の取締りの強化
等を推進するよう指導しているところである。
 また,15年7月,警察庁の主催により,国の行政機関等又はその職員を対象とする行政対象暴力の未然防止とその排除の徹底を図るため,警察庁暴力団対策部長を議長とし,関係省庁等の課長級職員により構成する行政対象暴力対策連絡会議が開催され,
 ・行政対象暴力の実態把握
 ・排除意識の高揚,組織的対応の確立等の排除対策の推進
 ・行政対象暴力に関する情報を関係省庁間で共有するための情報センターの設置
等を申し合わせた。

 

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