第1章 組織犯罪との闘い 

2 組織犯罪対策法制等

(1)米国

ア 組織的な犯罪の規制

(ア)RICO:Racketeer Influenced and Corrupt Organization
 合衆国法典第18編の第1961条から第1968条には,RICO法と通称される組織犯罪対策のための規定が置かれている。本法においては,殺人,誘拐,賭(と)博等の行為又は脅迫であって州法によって犯罪とされ1年を超える拘禁刑に処せられる行為等を「ラケッティアリング活動」と定義した上,そのようなラケッティアリング活動の反復を通じてエンタプライズ(個人,法人のほか,個人の事実上の結合体を含む。)の活動を遂行し又はこれに参加する行為等4種類の行為を禁止し,それらの違反行為を行った者に,罰金刑若しくは20年以下の拘禁刑(当該違反が最高刑として終身刑を含むラケッティアリング活動に基づく場合は,終身刑)又はその併科及び没収刑を科することなどが定められている。

(イ)CCE:Continuing Criminal Enterprise
 合衆国法典第21編第13章の第848条は,第13章に規定されている薬物犯罪を犯して重罪(1年を超える拘禁刑に当たる罪)に当たる行為を行った者に対し,それが継続的な一連の違反行為の一部であり,そうした一連の行為が自らの管理等に係る5名以上の者との共同によるものであって,かつ,そこから実質的な収入又は財産を得ているという場合には,継続的な組織的エンタプライズ(Continuing Criminal Enterprise)に従事したものとし,初犯でも,20年以上又は終身の拘禁刑,少なくとも200万ドル以下の罰金刑及び没収刑に処するものとしている。また,刑事没収の対象については,第853条に広範な対象が定められている。

(ウ)共謀罪
 2人以上の者が,合衆国に対する何らかの犯罪を犯すこと又は合衆国若しくはその機関を何らかの方法及び目的で騙(だま)すことを共謀し,かつ,そのうちの一人以上の者が,共謀の対象を達成するために何らかの行為を行ったときは,5年以下の拘禁刑若しくは罰金又はその併科に処するという規定が合衆国法典第18編の第371条に置かれているほか,多数の共謀罪規定が設けられている。

(エ)マネー・ローンダリング罪
 合衆国法典第18編第1956条及び1957条に関連規定が置かれている。第1956条は,経済取引や国際的な資金移動によるマネー・ローンダリング行為を規制するものであり,その前提となる犯罪行為(特定違反行為)については,同条(c)(7)に,RICO法違反行為,薬物犯罪,殺人,誘拐,強盗等の行為を始めとする多数の犯罪のリストが掲げられている。また,第1957条は,情を知って,特定違法行為に由来する1万ドルを超える犯罪由来財産に係る金融取引に関与する行為を罰することを定めている。

 

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