第1章 組織犯罪との闘い 

イ 組織的な犯罪に対する捜査手法等

(ア)通信等の傍受
 合衆国法典第18編の第2510条から第2522条に関連規定が置かれており,
 ・有線通信や電気通信(ファックスやコンピュータ通信等)だけでなく,いわゆるバギング等の手法を用いて口頭通信の傍受を行うこともできること。
 ・傍受の対象犯罪として,有線通信及び口頭通信については第2516条(a)に多数の犯罪のリストが掲げられ,電気通信については連邦法上の重罪すべてが対象犯罪とされていること。
 ・傍受の許可のために求められる犯罪の嫌疑としては,それら対象犯罪が発生したと信ずるに足りる相当の理由で足りるとされていること。
 ・無令状による緊急傍受が認められていること。
 ・傍受期間が30日とされており,延長の回数にも制限がないこと。
などの点で我が国の通信傍受法との違いがある。傍受の実施状況は,毎年,議会に報告されることになっており,2001年(平成13年)中は,連邦・州合わせて計1,491件の傍受が行われたとの報告が行われている。

(イ)潜入捜査と秘密情報提供者の利用
 「FBIの潜入捜査活動に関する司法長官指針」においては,潜入捜査とは,潜入捜査員による一定期間にわたる一連の関連する潜入活動(FBI職員又はこれと共同する他の連邦,州又は地方の法執行機関職員による架空氏名又は覆面身分の使用を伴う捜査活動)を伴う捜査とされている。
 また,「情報提供者の利用に関する司法長官指針」においては,情報提供者とは,重罪に当たる犯罪活動に関する有益かつ信頼できる情報を連邦の法執行機関に提供する者又はそのような情報の将来における提供を法執行機関が期待する者とされ,このうち将来公判で証言することに合意している者を「協力的証人(又は被告人)」というものとされている。
 組織的な犯罪の捜査においてこうした潜入捜査や秘密情報提供者を利用する手法を用いる場合,潜入捜査員や秘密情報提供者自身が違法な行為に関与せざるを得ない事態が生じることも想定されるが,これらの指針では,そうした本来であれば違法な行為を許容する要件や手続についても定めている。また,「FBIの潜入捜査活動に関する司法長官指針」は,潜入捜査の過程においていわゆるおとり捜査を行う場合の留意事項等についても定めている。

(ウ)証人保護プログラム
 合衆国法典第18編の第3521条は,組織的犯罪活動その他の重要犯罪に関する公的な手続に関し,連邦又は州政府の証人又は潜在的証人に対する暴力的犯罪等が行われる見込みがあると司法長官が判断するときは,当該証人の移住その他の保護措置(例えば,新たな身分を設け,保護に必要な適当な文書を与えること,住宅を与えること,生活費を与えること,就職の支援をすることなど)をとることができると規定している。1970年にプログラム開始されて以来,7,000人以上の証人と9,000人以上のその家族が保護を受けており,近年においても,毎年150人程度の証人が新規にプログラムの適用を受けているという。

 

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