第1章 組織犯罪との闘い 

(8)韓国

 韓国では,90年の「犯罪との戦争」で大規模な犯罪組織(組織暴力輩)が弱体化したが,これに乗じて小規模の新興暴力輩が乱立するとともに,最近では,刑期を終えた暴力輩幹部による組織再建の動きもみられるとされている。また,近年,外国人犯罪の取締り件数・人員の増加が続くとともに,その内容も巧妙化,組織化が目立ってきている。
 国境を越えて活動する韓国人犯罪組織は存在しないとされているものの,密入国,薬物・銃器類の密売等の犯罪が国際的な犯罪組織との連携の下で発生しており,1990年代以降,ロシアのマフィア,我が国の暴力団,中国の三合会等韓国周辺の国の犯罪組織が国内の犯罪組織と連携し国内への浸透を企てているといわれている。最近では,金融の規制緩和を悪用してマネー・ローンダリング等を敢行する組織や韓国を経由地とした密航請負組織も摘発されている。
 ○密入国の取締り状況を見ると密入国者のほとんどは中国人であるが,中国人密入国者の背後では,密入国ブローカーらによる組織的あっせんや専門詐欺行為が頻発している状況である。
 ○薬物犯罪は莫(ばく)大な収益を上げることができるため,ロシアマフィア等国際犯罪組織が主要な資金源とすることを目的として,それらの持込み・流通を増加させており,このことが韓国国内における薬物使用を急速に拡大させている要因のひとつであると推測されている。
 ○銃器類は,国内犯罪組織と連携したブローカーを介し外国船舶の入港する港湾において持ち込まれていることが知られている。
 ○クレジットカード犯罪としては,香港の国際クレジットカード偽造組織が,韓国内で短期間のうちに偽造クレジットカードを使用して商品を購入するといった手口の国際犯罪も最近出現している。
 このような状況に対して,韓国では,主要地域に警察と検察の「組織暴力事犯専担合同捜査部」を設置して暴力輩等に対する取締りの強化を図るほか,外国人の集まる地区を管轄する警察署に「外国人犯罪捜査専従チーム」が設置され,在留外国人の動向把握及び犯罪捜査活動を展開しているほか,銃器類の管理及び規制の強化も図られている。また,警察,検察,国税庁,関税庁,出入国管理当局等関係機関との連携を強化する施策も推進されている。

 

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