イ 活動の不透明化
暴力団は,組織実態を不透明化させる一方で,健全な企業による事業活動,政治団体による政治活動,人権や環境問題等に係る社会運動等を装いながら巧妙に資金獲得活動を行うようになった。
全国暴力追放運動推進センターは,15年1月から2月にかけて,全国の企業を対象に「企業対象暴力に関するアンケート調査」(以下「企業アンケート」という。)(注)を実施した。
(注)企業アンケートは,特殊暴力防止対策連合会,企業防衛連絡協議会に加盟しているなどの企業の中から,地域・業種・企業規模に偏りを生じないように各都道府県警察が選んだ3,000企業を対象に郵送法で実施し,1,897社(回収率63.2%)から回答を得た。なお,5年2月にもほぼ同内容の企業アンケートを全国の大企業3,061社対象に郵送法で実施しており,2,359社(回収率77.1%)から回答を得た。
(ア)要求等の有無について
15年の企業アンケートによると,暴力団,暴力団関係企業,総会屋,社会運動標ぼうゴロ,政治活動標ぼうゴロ等の反社会的勢力から金品の要求,契約の締結の強要等(以下「要求等」という。)を受けた経験の有無について,「ある」とする企業が783社(41.3%)に上っている。また,5年の企業アンケートによると,993社(42.1%)に上る。
(イ)要求等を行ってきた者について
15年の企業アンケートによると,過去に要求等を受けた企業783社について,要求等を行ってきた者(複数回答)をみると,8割以上が「えせ同和行為者・えせ右翼」(81.9%)をあげ,「暴力団」(15.8%)が続いている。また,5年の企業アンケートによると,「えせ同和行為者・えせ右翼」(80.5%),「暴力団」(25.8%)となっており,過去10年間で,暴力団員としてではなく,政治活動や社会運動を仮装して金品等を要求する形態に移行したこともうかがえる結果となっている(表1-4)。
表1-4 要求等を行ってきた者について(複数回答)
(ウ)暴力団と認識した理由
企業アンケートによると,過去10年の要求等を行ってきた者を暴力団と認識した理由(複数回答)について,5年に比べて15年は,「暴力団の名前の入った名刺」,「特有の言動」,「服装・頭髪」と回答した企業が減少した(表1-5)。
表1-5 暴力団と認識した理由(複数回答)
事例1
環境保全運動を目的として設立された特定非営利活動法人の顧問である山口組傘下組織元幹部(55)は,14年4月から10月までの間,当該NPO法人の名称を名乗って,岡山県住宅供給公社に架電し,同公社発注工事について,「環境基準を満たしているのか。今の業者では廃棄物を適正に処理できない」などと因縁をつけ,職員を脅し,特定の業者を当該工事の下請に参入させようとした。14年12月,同顧問ら2人を恐喝,強要,威力業務妨害で検挙した(兵庫)。
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事例2
山口組傘下組織が運営に関与する右翼団体の代表者(38),構成員(34),特定非営利活動法人事務局長(35)は,特殊法人発注工事を受注した建設業者に対して,下請参入を迫ったが断られたため,発注元の特殊法人事務所に押しかけ,職員を脅迫した。14年2月,同代表者ら3人を暴力行為等で検挙した(岡山)。
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