第1章 組織犯罪との闘い 

オ 台湾人犯罪組織

 台湾における犯罪組織は,台湾内で公共工事の談合,用心棒料の徴収等,社会経済に影響力を行使して様々な資金獲得を図っているといわれており,「竹聯幇」,「四海幇」等の組織が台湾内外で知られている。
 我が国とのかかわりは,昭和60年ころから,大都市の繁華街を中心として活動が目立つようになった。これは,台湾で推進された組織犯罪一掃運動の影響等により一部の構成員が我が国に進出したことが一因であるともいわれている。東京都内の新宿や池袋では,十数名からなるいくつかのグループが把握され,主に台湾人社会の中で,賭博,薬物の密売等を敢行したり,グループ同士が対立抗争を引き起こすなどしていた。
 その後,首領,幹部の検挙等を経て活動が沈静化したものの,近年においては,台湾内の犯罪組織の関係者が台湾で犯した犯罪の取締りを逃れて来日し,長期間にわたって不法滞在していた例がみられたり,台湾人グループによって敢行される多様な犯罪が発生しており,発生場所は首都圏に限られたものではない。
 平成14年中も,偽造通貨(1万円札)行使事件,偽造クレジットカード行使事件,ヒットアンドアウェイ方式で出入国を繰り返し,自動車やバイクを盗み,解体し,台湾に輸出していた自動車盗事件が発生するなど,我が国を標的にした資金獲得の動きがみられた。これらの犯罪の一部には台湾の犯罪組織の関係者が共犯者として関わっていたとみられるものもあった。

事例
 14年1月,大阪府警察は,大阪市内の食品販売店で偽造1万円札を行使した台湾人の男女5人を検挙し,さらに2月,これらの者に東京都内から宅急便を利用して段ボール箱に偽造1万円札約1,200枚を入れ,送付した貿易業を営む台湾人1人を検挙した。被疑者らは,犯行の直前に短期滞在の資格で入国していた。
 これらの偽造紙幣は,一部印刷が欠けていたり,赤みがかっているなどの特徴があった。また,同月,香港人らが東京都台東区内の土産物店で行使した偽造1万円札及び暴力団員らが東京都,千葉県及び静岡県で行使した偽造1万円札と一部の番号が一致しており,製造元が一致するとみられた。台湾内の犯罪組織が報酬を約束して使用させていたとみられた。

 

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