第2節 少年の非行防止と健全育成

1 深刻化する少年非行情勢

(1) 少年非行の概況
 最近の少年非行の現状は、少年人口の減少にもかかわらず、刑法犯少年の補導人員が増加しているほか、その内容をみても、凶悪化が進展するとともに、覚せい剤乱用の拡大や「遊ぶ金欲しさ」の性の逸脱行為が高水準で推移するなど、急速に深刻化しており、戦後第4の上昇局面を迎えたということができる。
 平成9年の刑法犯少年は15万2,825人(前年比1万9,244人(14.4%)増)、刑法犯少年の人口比(注)は16.1(2.4増)、刑法犯総検挙人員に占める割合は48.7%(3.5ポイント増)で、前年に比べいずれも増加した。特に、刑法犯少年の人口比は、少年非行の戦後第3のピーク時にあった昭和63年以来9年振りに16台を記録した。
 主要刑法犯で補導した少年の人員、人口比の推移を少年法が施行された24年以降についてみると、図3-3のとおりである。
(注) 人口比とは、同年齢層の人口1,000人当たりの補導人員をいう。
 9年の刑法犯少年の包括罪種別補導状況は表3-10のとおりで、窃盗犯が9万7,836人(全体の64.0%)で最も多いが、増加率では、凶悪犯、粗暴犯が高くなっている。また、初発型

図3-3 主要刑法犯で補導した少年の人員・人口比の推移(昭和24~平成9年)

表3-10 刑法犯少年の包括罪種別、学識別状況(平成9年)

非行(万引き、自転車盗、オートバイ盗、占有離脱物横領の4種をいう。)で補導した少年は11万3,887人で、刑法犯少年総数に占める割合は74.5%(前年比1.1ポイント増)となった。
(2) 平成9年の少年非行の特徴
ア 凶悪な非行の増加
 平成9年に凶悪犯で補導した刑法犯少年は2,263人(前年比767人(51.3%)増)で、昭和50年以降の最悪となった。罪種別にみると、強姦401人(180人(81.4%)増)と強盗1,675人(607人(56.8%)増)の急増が目立っており、特に、強盗の補導人員が1,500人を超えたのは、42年以来30年振りである。また、殺人の補導人員は、前年に比べ22人(22.9%)の減少となったが、社会に衝撃を与える特異な事件が発生した。
 63年以降の凶悪犯少年の補導人員の推移は、図3-4のとおりである。
[事例] 2月、男子中学生(14)は、小学生の女児2人の頭部を鈍器で殴打して、うち1人に全治1週間の傷害を負わせ、3月には、小学生の女児の頭部を鈍器で殴打して殺害した後、他の小学生の女児を刃物で刺して全治2週間の傷害を負わせた。さらに、5月、

図3-4 凶悪犯少年の補導人員の推移(昭和63~平成9年)

 小学生の男児の首を絞めて殺害し、同月、遺体から切断した頭部に、犯行を誇示する内容の文書を添え、中学校正門横に遺棄した。6月、殺人罪等により検挙(兵庫)
 また、平成10年に入ってからも、バタフライナイフ等の刃物を使用した少年の凶悪な事件が相次いで発生し、少年非行の凶悪化を強く印象付けた。
[事例] 10年1月、男子中学生(13)は、女性教師に授業に遅れた理由等を詰問されたため、同人を脅かそうと思い、隠し持っていたバタフライナイフを突き付けたものの、同人が驚かなかったため立腹し、胸部等を刺して殺害した(栃木)。
イ 少年の薬物乱用
 9年に覚せい剤事犯、大麻事犯及びシンナー等の乱用で補導した犯罪少年の学識別状況は、表3-11のとおりである。
 少年による覚せい剤の乱用はここ数年増加傾向にあるが、9年に覚せい剤事犯で補導した犯罪少年は1,596人(前年比160人(11.1%)増)となった(図3-5)。このうち中・高校生は262人で、過去最悪を記録した8年を27人(11.5%)上回るなど、中・高校生による覚せい剤乱用の増加が著しい(図3-6)。
 このような状況の背景としては、少年でも繁華街や駅前等で外国人等の密売人から容易に覚せい剤を入手できる状況となっていること、少年が覚せい剤に対し、「ダイエット効果がある」などと誤った認識を持っていたり、「S(エス)」とか「スピード」等と呼び、抵抗感が希薄になっていたりするなど、少年に薬物の危険性、有害性についての認識が欠如していることが挙げられる。

表3-11 覚せい剤、大麻事犯及びシンナー等の乱用で補導した犯罪少年の学識別状況(平成9年)

[事例] 8年10月から9年2月までの間、女子高校生(18)ら6人は、イラン人等から購入した覚せい剤を仲間に譲り渡したり、乱用したりしていた。同高校生らの供述によると、デートクラブ等で稼いだ金を購入資金として充てていた者や「覚せい剤はダイエット効果がある」と信じて乱用していた者もいた(埼玉)。
 また、9年にシンナー等の乱用で補導した犯罪少年は4,157人(前年比332人(7.4%)減)で、依然として少年の薬物事犯の中では最も多いが、減少傾向にある。

図3-5 覚せい剤事犯で補導した犯罪少年の推移(昭和63~平成9年)

図3-6 覚せい剤事犯で補導した犯罪少年のうち中・高校生の推移(昭和63~平成9年)

ウ 女子少年の性の逸脱行為
 9年に性の逸脱行為で補導・保護した女子少年(注)は4,912人で、前年に比べ466人(8.7%)の減少となったが、学識別では中・高校生の割合が67.1%と、初めて3分の2を超えた。
 また、このうち「遊ぶ金欲しさ」を動機とする者は2,309人で、過去最悪を記録した8年

図3-7 「遊ぶ金欲しさ」を動機とする性の逸脱行為で補導・保護した女子少年の数の推移(昭和63~平成9年)

に比べ208人(8.3%)減少したものの、依然として高い水準で推移している(図3-7)。
(注) 「性の逸脱行為で補導・保護した女子少年」とは、売春防止法違反事件の売春をしていた女子少年、児童福祉法違反(淫行をさせる行為)事件、青少年保護育成条例違反(みだらな性行為)事件及び刑法上の淫行勧誘事件の被害女子少年、ぐ犯少年のうち不純な性行為を行っていた女子少年並びに不良行為少年のうち不純な性行為を反復していた女子少年をいう。
エ 最近の少年非行の質的特徴
 最近の少年非行は、質的にも変化がみられる。
 9年に凶悪犯で補導した少年のうち、非行歴のなかった者は1,081人で、全体の47.8%と半分近くに上っており、それまでに非行を犯したことのない少年がいきなり重大な非行に走るケースが目立っている。ただし、これらの少年についても、重大な非行に走るまでには、飲酒、喫煙や深夜遊興等、非行の前兆となり得る問題行動があることが指摘されている。
 また、動機をみると、カラオケ代やゲーム代を目当てとする強盗や性の逸脱行為等遊興費を得るための非行が増加する一方、「遊び、スリルや好奇心」からのものは減少している。
 さらに、凶悪犯については、集団により引き起こされる傾向が特に顕著であり、9年の凶悪犯のうち共犯事件は54.7%と、昭和63年の33.3%から、21.4ポイントの増加となっている。一方、非行集団(注1)への加入は逆に減少しており、明確な組織性を有さない不良行為グループ(注2)が非行に走っていることを示していると考えられる。
(注1)暴走族、窃盗集団等によく見られるように、組織性・継続性を有する集団であって、自ら非行行為を繰り返すほか、構成員の非行を容認、助長し、かつ、非行により構成員間の連帯を強める性格のあるものをいう。
(注2)グループ員が複数で飲酒、喫煙、けんかその他自己又は他人の徳性を害する行為を繰り返している「遊び仲間」等のグループで、非行集団に至らないものをいう。

2 犯罪等による少年の被害の状況

(1) 少年が被害者となる刑法犯の状況
 平成9年に少年が被害者となった刑法犯の認知件数は32万4,467件(前年比1,403件(0.4%)増)で、昭和63年と比べ15.1%増加した。
 罪種別にみると、凶悪犯被害が1,419件、粗暴犯被害が1万5,926件で、前年に比べそれぞれ268件(23.3%)、1,476件(10.2%)増加した。なかでも、性犯罪被害については、成人が被害者となる強姦や強制わいせつの件数が減少又は横ばいとなっている中で、少年が被害者となるものは、それぞれ774件、2,907件で、前年に比べ199件(34.6%)、352件(13.8%)と大幅に増加した。また、学識別にみると、高校生の被害が14万600件と最も多く、次いで中学生となっているが、前年に比べた増加率でみると、未就学児童の被害が86%増加しており、最も高くなっている(表3-12)。

表3-12 少年の刑法犯被害認知件数(平成8、9年)

(2) 少年の福祉を害する犯罪の状況
 警察では、少年の心身に有害な影響を与え、また、少年の非行を助長する原因ともなる福祉犯の取締りを推進するとともに、その被害を受けている少年の発見、保護に努めている。
 平成9年に福祉犯の被害者となった少年は1万1,399人で、前年に比べ1,283人(10.1%)減少した。学識別では、高校生が4019人(35.3%)と最も多く、次いで無職少年となっているが、小学生及び中学生が前年に比べ増加している(表3-13)。

表3-13 福祉犯の被害少年の学識別状況(平成8、9年)

図3-8 福祉犯の法令別検挙状況(平成9年)

 また、9年の福祉犯の検挙人員は8,608人で、前年に比べ757人(8.1%)減少した。法令別では、青少年保護育成条例違反が最も多く、次いで毒物及び劇物取締法違反となっている(図3-8)。
(3) 児童買春・児童ポルノ問題
 我が国の国民によるいわゆる児童買春ツアーや児童ポルノが国際的にも問題となっている状況を受け、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案が第142回国会に提出されるなど、児童買春・児童ポルノ問題が関心を集めているところである。警察では、刑罰法令に触れる行為について厳正に対処しているほか、被害者対策の観点から、被害児童の受けた精神的打撃を軽減し、早期立ち直りを図るため、心理学等に関する知識を有する警察職員等による継続的な支援を実施している(第2章第2節3(2)参照)。
(4) いじめに起因する事件の状況
 平成9年に警察が取り扱ったいじめ(注)に起因する事件の件数は93件、補導した少年は310人で、前年に比べそれぞれ69件(42.6%)、116人(27.2%)減少したものの、7年、8年と高水準にあり、依然予断を許さない状況にある。5年以降のいじめに起因する事件で補導した少年の推移は、図3-9のとおりである。
 いじめにより少年を補導した事件について、いじめた原因、動機をみると、被害少年が「力が弱い・無抵抗」だからとするものが31件(33.3%)で最も多い。また、発生場所をみると、学校外が50件(54.9%)で、学校内よりも多くなっている。
(注) 「いじめ」とは、単独又は複数の特定人に対し、身体に対する物理的攻撃又は言動による脅し、いやがらせ、

図3-9 いじめに起因する事件で補導した少年の推移(平成5~9年)

 無視等の心理的圧迫を反復継続して加えることにより、苦痛を与えること(ただし、番長グループや暴走族同士による対立抗争事案を除く。)をいう。

3 総合的な少年非行対策の推進

(1) 少年非行総合対策推進要綱の制定
 最近の少年非行情勢の深刻化や質的変容、少年の犯罪被害の増加等に対応するため、警察では、「強くやさしい」少年警察運営を基本方針として、少年を非行や犯罪の被害等から守り、保護するための諸対策を積極的に推進するとともに、悪質な非行や福祉犯には厳正に対処していくこととし、少年非行等に係る総合的な対策の推進に努めている。
 そのため、警察庁では、少年事件捜査力の強化等少年警察運営の刷新、少年の規範意識の啓発等、少年を取り巻く環境の浄化といった課題についての今後の少年警察の運営の指針として、平成9年8月、「少年非行総合対策推進要綱」を制定した。また、これを受けて、各都道府県警察では、それぞれの地域の実情等に応じつつ、少年非行等の問題に対し、関係機関や団体と協力しつつ、総合的な取組みを図っている。
(2) 非行少年等の補導活動
 警察では、少年係の警察官、少年補導職員等を中心に、少年補導員等地域の少年警察ボランティアと協力して、盛り場、公園等非行の行われやすい場所での街頭補導等の補導活動を日常的に実施し、非行少年等の早期発見、補導に努めている。非行少年を発見したときは、少年の特性に十分配慮しつつ、保護者等と連絡を取りながら、非行の原因、背景、少年の性格、交友関係、保護者の監護能力等を検討し、再非行防止のための処遇に関する意見を付して、関係機関に送致、通告するなどの措置をとっている。
 また、飲酒、喫煙や深夜遊興等犯罪に至らない不良行為をしている少年に対しては、警察官等がその場で注意や助言を与えたり、家庭に連絡して適切な指導を促すとともに、特に必要と認められる場合には継続補導を行っている。特に最近では非行歴のない少年による重大な非行が目立っていることから、不良行為の段階での適切な措置の強化を図っている。平成9年に警察が補導した不良行為少年は81万4,202人で、前年に比べ7万2,443人(9.8%)増加し、14歳から19歳までの少年については、同年齢層の少年人口の約8%に達している。
(3) 少年の薬物乱用防止対策
 警察では、最近の少年の覚せい剤乱用事犯の増加に伴い、[1]覚せい剤等の供給源に対する取締りの強化、[2]薬物乱用少年の発見・補導の強化、[3]教育委員会、学校等との連携の強化、[4]家庭、地域に対する広報啓発活動の強化を四本柱として、少年の薬物乱用防止のための総合的な対策を推進している。
 特に、少年に薬物の危険性・有害性についての正しい認識を持たせることが重要であることから、学校に対し生徒指導の強化を要請するとともに、警察職員を学校に派遣して行う薬物乱用防止教室の開催に力を入れている。平成9年度は、全国の高校の91.3%に当たる5,018校で開催したほか、中学校等においてもその開催に努めている。
 また、警察では、薬物乱用少年に対して、再乱用を防止する観点から、必要に応じて継続的な指導・助言を行うなど、少しでも早い段階での立ち直りを支援している。さらに、再乱用防止対策をより効果的に実施するため、関係機関・団体等の実務担当者を加えたチームによるフォローアップ・モデル事業を推進している。
(4) 少年を取り巻く環境の浄化
 少年を取り巻く環境は年々悪化しており、少年非行の深刻化の背景の一つとなっている。警察では、地域住民や関係機関・団体等と連携して、性を売り物とする営業に対する指導取締り、少年に対する有害情報の氾(はん)濫の抑止、少年による深夜の遊興や不良行為を助長する環境の浄化、少年に対する暴力団の影響の排除等の対策に努めている。また、特に環境浄化の必要性の高い地域を「少年を守る環境浄化重点地区」(平成10年3月現在全国318地区)に指定しており、少年のたまり場等の浄化運動、環境浄化住民大会の開催等の環境浄化活動を推進している。
ア 性を売り物とする営業に対する指導取締り
 テレホンクラブ営業や性風俗特殊営業等の性を売り物とする営業は、性の逸脱行為や福祉犯被害のきっかけとなるおそれが大きいことから、警察では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)等の法令による指導取締りに努めている。特に、テレホンクラブは、同営業に係る女子少年の性被害が増加しているとともに、「援助交際」と称する性の逸脱行為の温床となっていることから、テレホンクラブ営業の規制を目的とした条例が低都道府県で制定されており、これらの都道府県においては、広告・宣伝に関する規制等に違反する行為の取締りや都道府県公安委員会等による行政処分等条例の適切な運用に努めている。
イ 少年に対する有害情報の氾濫の抑止
 性や暴力に関する過激な情報を内容とする雑誌、ビデオ、コンピュータ・ソフト等が、一般書店やコンビニエンスストア等で販売されており、少年でも簡単に入手できることが少年非行の深刻化の一因となっていると指摘されていることから、警察では、関係機関・団体や地域住民等と協力して、関係業界による自主的措置の促進を図るとともに、個別の業者に対する指導や悪質な業者に対する取締りを徹底することとしている。
[事例] 11月、警察庁では、総務庁青少年対策本部と連携し、コンビニエンスストア業界の全国団体に対して、少年の非行防止と健全育成に向けての協力要請を行った。
 また、最近では、インターネット等のコンピュータ・ネットワーク上にも少年に有害な情報が氾濫し、少年が容易にアクセスできる状況も出現していることから、警察では、その実態の掌握に努めるとともに、こうした情報への少年のアクセス防止の在り方等について検討を進めている(第1章第2節5(5)イ参照)。
ウ 少年による深夜の遊興や不良行為を助長する環境の浄化
 カラオケボックス等の娯楽施設は、深夜における不良行為少年のたまり場となったり、飲酒、喫煙等の不良行為が行われたりするおそれが大きいことから、警察では、こうした営業の実態の掌握や街頭補導活動を強化するとともに、法令に違反する行為の取締りに努めている。
[事例] 警察庁では、カラオケボックス業界の全国団体に対して、自主的措置の促進を働き掛け、9月、同業界においては、自主規制基準を全面改訂した。
エ 少年に対する暴力団等の影響の排除
 9年に暴力団等が関与する福祉犯の被害者となった少年は1,473人で、福祉犯被害少年総数の12.9%を占め、暴力団等が少年に対する薬物の密売や少女売春等悪質性の高い事案に関与している実態がみられる。また、9年中に把握された少年の暴力団の構成員及び準構成員(注)の総数は、全国で325人で、1,062人の少年が暴力団の影響を強く受けて加入を勧誘されており、さらに、183の暴走族等の集団が暴力団の影響下にあるとみられている。
 警察では、暴力団等が関与する福祉犯等の取締りに努めるとともに、少年の暴力団員の離脱の促進や加入の阻止等、少年に対する暴力団等の影響の排除に努めている。
(注) 暴力団の準構成員とは、構成員ではないが、暴力団と関係をもちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者、又は暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力し若しくは関与する者をいう。
(5) 少年相談活動
 警察では、少年の非行、家出、自殺等の未然防止とその兆候の早期発見や被害少年等の保護のために少年相談の窓口を設け、少年や保護者等から悩みや困りごとの相談を受け、教育学、心理学等に関する知識を有する専門職員や経験豊富な少年補導職員、少年係の警察官が必要な助言や指導を行っている。また、「ヤング・テレホン・コーナー」等の名称で電話による相談窓口を設けているほか、FAXの設置やフリーダイヤルの導入等、少年が相談しやすい環境の整備を図っている。
 平成9年に警察が受理した少年相談の件数は10万3,252件(前年比143件(0.1%)増)となった。このうち、保護者等からの相談が7万8,249件で、全体の75.8%を占めている。また、相談の内容についてみると、少年自身からの相談では学校問題に関するものが、保護者等からの相談では非行問題に関するものが最も多くなっている(図3-10)。さらに、継続的助言・指導を必要とする相談がここ数年増加傾向にあるが、9年は3万5,818件で、全体の34.7%を占めている。

図3-10 少年相談の内容(平成9年)

(6) 少年の社会参加、スポーツ活動
 警察では、関係機関・団体、地域社会と協力しながら、環境美化活動、社会福祉活動等の社会奉仕活動や伝統文化の継承活動、地域の産業の生産体験活動等地域の実態に即した様々な少年の社会参加活動を展開している。また、スポーツ活動については、特に、警察署の道場を開放して地域の少年に柔道や剣道の指導を行う少年柔剣道教室を全国的に開催してお り、平成9年中は約1,000警察署において、約6万人の少年が参加した。これらの教室に通う少年が参加して、9年8月には、(財)全国防犯協会連合会及び(社)全国少年補導員協会の共催による「第10回全国警察少年柔道・剣道大会」が開催された。
(7) ボランテイア活動
 警察では、少年の非行を防止し、その健全な育成を図るため、約6,000人の少年指導委員、約5万2,000人の少年補導員、約1,100人の少年警察協助員等のボランティアを委嘱している(平成10年4月1日現在)。少年指導委員は、風営適正化法に基づき、都道府県公安委員会の委嘱を受け、少年を有害な風俗環境の影響から守るための少年補導活動や風俗営業者等への協力要請活動に、少年補導員は、街頭補導活動、環境浄化活動をはじめとする幅広い非行防止活動に、少年警察協助員は、非行集団の解体補導活動に、それぞれ従事している。
 警察では、少年補導職員等の警察職員とこうしたボランティアとの連携の強化を図っており、警察職員とボランティアとが一体となった地域に密着したきめ細やかな活動の展開に努めている。
 また、(社)全国少年補導員協会は、全国各地で行われているこれらの活動を支援しているほか、9年10月には、ボランティア、PTA等約400人の参加を得て少年問題シンポジウム「子どもたちはいま…~深刻化する少年非行の背景と大人の役割を考える」を(財)社会安全研究財団と共催するなど、少年の非行防止と健全育成を目指した活動を推進している。


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