第4節 ボーダーレス時代における暴力団

 社会経済活動が、都道府県境や国境の垣根を越えて拡大したことに対応して、暴力団の広域化、国際化はますます進展している。
 中でも、山口組をはじめとする広域暴力団、特に重点対象3団体(注)は、全国各地において新たな資金源を求めてその勢力の拡大を図っており、これらの組織による寡占化が進行した結果、その勢力範囲は全国の多くの都道府県で複雑に入り組むに至っている。加えて、暴力団は、海外からのけん銃、覚せい剤等の密輸入や、海外進出を活発化させており、その国際化の傾向を顕著なものとしている。
 また、暴力団は、裏の社会における賭博(とばく)、覚せい剤等の伝統的な資金獲得活動のほか、巨大化した組織の威嚇力を背景として、民事介入暴力事案や企業対象暴力事案を引き起こし、また、証券取引等への介入を強めるなど、「経済マフィア」化し、裏の社会の垣根を越え、公然と表(おもて)の社会に進出しつつある。
 このような暴力団の活動に対する国民の強い危機感を背景として、平成3年5月、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)」が制定され、4年3月1日から施行された。
 一方、暴力団は、暴力団対策法の成立と前後して、組事務所から看板や代紋等を撤去するなど暴力団対策法の適用逃れを図るとともに、暴力団に厳しい目を向ける世論に対抗するため、対立抗争や銃器発砲等の過激な行動を慎み、顕在的な動きを手控えている状況にある。
(注) 警察庁では、集中的に取り締まるべき暴力団を「指定暴力団」と呼称してきたが、暴力団対策法の成立に伴い、同法中の「指定暴力団等」との混同を避けるため、これまでの指定暴力団」を「重点対象暴力団」と改めたものである。「重点対象暴力団」には、山口組、稲川会、住吉会の3団体が指定されている。

1 暴力団の活動の広域化~山口組等量点対象3団体による具占化

 近年、暴力団は、重点対象3団体による寡占化の傾向を強めている。
 平成3年末現在、暴力団の構成員は約6万3,800人、準構成員(注)は約2万7,200人で、合計約9万1,000人の勢力を有しており、前年に比べ約2,700人(3.1%)増加している。このうち、山口組、稲川会及び住吉会の重点対象3団体は、42都道府県に、構成員約3万8,500人、準構成員約1万7,600人、合計約5万6,100人(全暴力団勢力の61.6%)の勢力を有しており、前年に比べ約1万3,400人(31.7%)増加している。これは、全暴力団勢力の増加の割合に比べ著しく高く、重点対象3団体による寡占化が急速に進展していることを示している。特に、我が国最大の暴力団である山口組は、3年末現在、全暴力団勢力の38.9%の勢力を有し、傘下組織の活動範囲はほぼ全国に及んでいる。
(注) 暴力団の構成員は、その所属団体内の地位又は所属団体との関係により首領、幹部及び組員に分類される。準構成員とは、構成員ではないが、暴力団と関係を持ちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者、又は暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力若しくは関与する者をいい、これらの者も暴力団の組織をささえている。
 広域暴力団に係る対立抗争が発生した場合には、最初に発生した都道府県の県境を越えて抗争が波及することが多くなっている。例えば、2年には、広島県内の暴力団共政会が、北海道への進出を図ったが、札幌市に権益を持つ山口組がその進出を阻止しようとしたことから、共政会 と山口組との間に対立抗争が生じた。山口組は、大阪等他地域の構成員を動員するなど組織を挙げて、北海道、広島県内で計7回、共政会に対するけん銃使用を含む攻撃を行った。このような事案に対処するため、暴力団の取締りに当たって、各都道府県警察が緊密に連携して対応することがますます必要となっている。

2 暴力団の活動の国際化

 最近の暴力団は、その巨大な組織力を背景として、海外進出等の国際的な活動を活発化させており、さらに、海外から入手したけん銃等により武装化の傾向を強めている。これにより、我が国の警察が外国の捜査機関等と密接な協力を行っていくことがますます必要となっている。
(1) 暴力団犯罪の国際化
 近年、暴力団の海外進出が顕著となってきているが、その主たる目的は、銃器、覚せい剤等の調達、日本人観光客を相手とした賭博(とばく)等の資金獲得活動、逃亡先としての拠点づくり等とみられる。
 また、暴力団は、「じゃぱゆきさん」と呼ばれる外国人女性に売春をさせるなど外国人の不法就労に関与し、その労賃をピンハネするなどして暴利を得ている。また、不動産の購入や不動産取引等の事業開拓等にも乗り出しており、国際的な問題にもなっている。
 さらに、最近は、暴力団が海外の犯罪組織と連携を強めて擬制的血縁関係を結んだりする例もみられる一方、海外の犯罪組織が我が国に本格的に進出することも懸念される。
〔事例〕 平成3年3月、フィリピンのマニラ国際空港で暴力団員17人が入国を拒否され、日本に戻された。
(2) 暴力団の武装化の進展~けん銃押収量の増加
 平成3年の暴力団関係者からの銃器押収数は954丁で、暴力団が対立抗争等の過激な動きを手控えたにもかかわらず、前年に比べ36丁(3.9%)増加している。また、そのうち875丁(91.7%)が真正けん銃で、銃器押収数に占める真正けん銃の割合は依然として高い水準にある(図1-45)。
 押収銃器における近年の特徴として、中国方面から密輸入されたトカレフ型けん銃の押収数が増加していることが挙げられる。同型けん銃は、

図1-45 暴力団関係者からのけん銃押収数の推移(昭和57~平成3年)



昭和63年に初めて押収されて以来、年々その押収数が増加し、平成3年には265丁(総押収銃器の27.8%)が押収されており、過去最高となっている。
〔事例1〕 暴力団幹部(35)らは、2年11月、漁船を利用して中国からけん銃約800丁(押収数97丁)、実包5万4,000個を密輸入した。3年8月検挙(警視庁)
〔事例2〕 4月、兵庫県警察は、山口組の定例会に的を絞った大規模な交通検問を実施し、高速道路検問で停車させた車両のスペアタイヤの中からトカレフ型けん銃20丁、実包400個を押収し、山口組系暴力団幹部(49)らを現行犯逮捕した。

3 多様化、巧妙化の進む資金獲得活動

 犯罪組織である暴力団の資金獲得活動は、表(おもて)の経済社会に公然と進出するなど、一層巧妙化、多様化の様相を呈し、市民の生活の安全と平穏に対する大きな脅威となっている。
 すなわち、暴力団は、覚せい剤の密売、賭博(とばく)、みかじめ料等の伝統的な資金獲得活動を依然として活発に行っている一方、民事介入暴力、企業対象暴力等の新しい形態の資金獲得活動を活発に行うことで資金の獲得を図るほか、豊富な資金を利用して合法的事業分野に進出するなど市民生活や経済活動への介入を強めている。
 これは、従来のような伝統的な資金獲得活動に対する取締りのみでは暴力団の資金源を絶つことができなくなってきていることを意味しており、警察は、これまでの暴力団犯罪に関する既成概念にとらわれない幅広い手法をもって、暴力団の資金源の根絶を進めていく必要に迫られている。
(1) 市民を食い物にする民事介入暴力
ア 民事介入暴力の実態
 民事介入暴力とは、一般市民の日常生活や経済取引に、民事上の権利者や関係者の形で介入、関与して、違法、不当な利益の獲得を図るものである。交通事故の示談、不動産の賃貸借に伴うトラブル等の当事者の中には、暴力団を利用して自己に有利に交渉を進めようとする者も存在するため、暴力団の民事介入暴力が助長されている。しかし、このような暴力団の利用者も、結局は、暴力団の被害を受ける結果になるということが多い。
 民事介入暴力は、大都市を中心とする地価の高騰を背景とした「地上げ」にみられるように極めて大規模化しており、暴力団は、これらの事案に関与することによって、より巨額な不法利益の獲得を図っている。
 こうした民事介入暴力に対して、警察は、相談活動を行うなど積極的に対応しているが、昭和56年には9,665件であった民事介入暴力事案の相

図1-46 民事介入暴力相談の類型別受理状況(昭和62~平成3年)

談受理件数が、平成3年には2万984件に達しており、民事介入暴力の広がりがうかがわれる。民事介入暴力相談の類型別受理状況は、 図1-46のとおりである。
〔事例〕 暴力団員2人は、物件事故を知るや、「委任状を書け。わしが示談をしてやる」などといい、これを無視されると相手を喫茶店に呼び出し、「うちには若い者がゴロゴロいる。嫁さんもいてまうぞ」などと脅迫して現金10万円と自動車1台を脅し取った。6月検挙(兵庫)
イ 「地上げ」等への介入
 地上げに絡む不法事案の相談件数は、最近のいわゆるバブル経済の崩壊によって減少傾向にあるものの、なお昭和61年の1.7倍の水準にあり、検挙した事件のすべてに暴力団が関与しているなど、依然として暴力団が地上げに深く関与している状況がうかがわれる。
 平成3年中の地上げ等に絡む不法行為の検挙件数は13件、人員は41人で、検挙した13件すべてに暴力団が関与しているのが特徴である。内容をみると、土地売却の強要が6件と最も多く、次いで借地、借家からの立ち退きに絡むものの順になっている。
 また、首都圏や阪神圏地域の地価高騰がおさまり、地価高騰の波が地方に及んでいる中で、暴力団による地上げ絡みの不法事案も地方に波及している。3年中に検挙した13件の地上げ事案のうち、11件までが首都圏及び京阪神地域以外の地域におけるものであった。
〔事例1〕 山口組系暴力団組長(47)らは、土地売買でトラブルを生じていた不動産業者に面会を迫っていたが、同人がこれを避けたことに憤慨して同人方に押し掛け、「火災保険に入っているか。この家はないと思え」など暗に放火することをほのめかした上、窓ガラスを破損するなどした。5月検挙(愛知)
〔事例2〕 暴力団関係会社社長(44)らは、マリーナに隣接する滋賀県内の5,500平方メートルの土地の開発を企画し、土地所有者に対し「わしらのとこは大企業だ。お前らの一人や二人はどうにでもなるんじゃ。協力せい。土地を売らんかい」などと脅したが、被害者が警察に届けたため未遂に終わった。2月検挙(滋賀)
〔事例3〕 右翼標ぼう暴力団員(35)らは、共謀して、自己の勤務する不動産会社が買収した土地に居住する被害者と立ち退き交渉をしていたが、被害者がこれに応じず弁護士に委任したことから「ここはおれの土地やし中庭をつぶして住む。大阪、神戸から怖い連中が来るぞ。一回怖い目に遭うか。火をつけられても知らんぞ」などと脅迫した。9月検挙(京都)
(2) 企業対象暴力
 暴力団は、個人を対象とする不当な行為によってばく大な資金を獲得しているだけでなく、総会屋等(総会屋、新聞ゴロ、会社ゴロ等)や社会運動等標ぼうゴロ(社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ)との結び付きを強めて、企業を対象とした不当な行為も行っている。暴力団は、株主権の行使に名を借りたり、社会運動や政治活動を仮装、標ぼうするなど、合法的な行為を装いつつ、企業を揺さぶって、ばく大な不法利益を獲得している。その手口も、工事騒音に対する迷惑料や事業資金の融資の名目で金を引き出したり、機関紙(誌)を高額で購入させたりするなど、一層巧妙化している。
〔事例〕 山口組系暴力団員ら4人は、ビル建築現場で、「クレーン車が通行の邪魔だ」などと言い掛かりを付けて現場監督を組事務所に連行し、「通行止めをするのだったら菓子箱の一つも持ってきてあいさつするのが普通や」などと脅迫した。2月検挙(京都)
(3) 暴力団の表(おもて)の経済システムへの進出
 暴力団の資金獲得活動の中には、民事介入暴力や企業対象暴力等の違法、不当なものばかりでなく、いわゆる財テクブームを背景として活況を呈した証券取引に絡んで利益を得ようとする事案の発生がみられるなど、合法的な企業の経営等に関与、参加するなどして資金の獲得を図る、いわば表(おもて)の経済シスナムへの進出を図るものもみられている。
 殊に、山口組、稲川会等の暴力団については、証券市場等において大規模な資金獲得活動を行っていた実態が明らかになるなど、従来、裏の社会にひそんでいた暴力団が表(おもて)の経済社会に進出し、「経済マフィア」化している状況が白日の下にさらされることとなった。
ア 合法を装った資金獲得活動
 暴力団は、建設業も不動産業等の様々な事業分野において、合法的な企業の経営に関与して資金獲得を図っている。しかし、表見的には合法的な企業活動であっても、事業の過程で組織の威力を背景とした強引な活動を行うことが多く、実態は暴力団と変わらないことが少なくない。
 これらの合法を装った資金獲得活動には、暴力団の準構成員として、暴力団の威力を背景としつつ、合法企業の形態をもって各種の利権をあさる「フロント企業」(従来「企業舎弟」等といわれていたもので、暴力団の周辺にあってこれに資金提供等を行うものをいう。)が関与していることがある。これらは、暴力団を利用する見返りとして資金を提供するとともに、暴力団が市民生活や企業取引のトラブルに介入するための触覚としての役割を担っているとみられる。
イ 証券取引等に介入する暴力団
 暴力団は、そのばく大な資金を、経営に関与する企業だけでなく、不動産や証券等に投資することにより、もともとは犯罪によって獲得した「黒い金」から更に多くの利益を取得している。しかも、このようにして増やされた不法利益は、新たな犯罪のための資金にもなっているとみられる。
 特に、巨大化した広域暴力団についてはその傾向が著しく、最近においては、暴力団が大企業の関連会社から数百億円にも上る巨額の融資を受けていたことや、東証一部上場企業の株式を大量に取得していた実態が、いわゆるバブル経済崩壊の過程で明らかになるなど、裏の経済社会から表(おもて)の経済社会への進出を強めている暴力団の姿が浮き彫りになった。
 こうした事態は、暴力団が、従来の単なる粗暴的暴力集団から知能的暴力集団へと質的変化を遂げつつあることを如実に示しており、暴力団の存在は、我が国の健全な経済システムにとっても重大な脅威となっている。
〔事例1〕 稲川会前会長が大きな影響力を持っていたゴルフ場開発会社は、13社から総額384億円に上る融資を受け、このうち約160億円を稲川会前会長による鉄道会社の株式購入資金に充てていた。同人は、これによって得た株式を担保としながら、大手企業の系列ノンバンクから総額362億円の融資を受けて更に同社の株式を購入し、平成元年4月ころから2年11月ころにかけて、約2,900万株に上る大量の株式を取得した。
〔事例2〕 2年8月から9月にかけて、山口組系暴力団組長が代表取締役をしている会社が、大手繊維会社の発行済み株式総数の5.6%に当たる1,500万株(時価205億5,000万円)を所有していることが判明した。
(4) 伝統的資金獲得活動
 覚せい剤の密売、賭博(とばく)、みかじめ料等の伝統的な資金獲得活動も、依然として活発に行われている。
 平成3年に検挙した暴力団員1万6,188人のうち、伝統的な資金獲得犯罪である覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博(とばく)及び公営競技関係4法違反(ノミ行為等)の4罪種に係る検挙人員は7,047人(暴力団総検挙人員の43.5%)で、前年に比べ25人(0.4%)減少しているが、暴力団の最も大きな資金源となっている覚せい剤事案をみると、覚せい剤取締法違反の検挙人員は、前年に比べ415人(10.9%)増加している。
4 暴力団対策法成立後の暴力団の動向
 暴力団対策法により指定暴力団として指定を受けることとなると、暴力的要求行為を行うことが禁止されるなど、暴力団にとって相当の打撃 となるため、暴力団の側でも、この法律の適用を逃れるため様々な対策を講じ、暴力団としての表象を秘匿したり、法人化等によりその目的を仮装するなどして、暴力団としての実態を隠ぺいするなどの組織防衛活動を活発化させている。
 また、暴力団対策法の成立の原動力となった暴力団排除の世論の批判をかわし、その犯罪組織としての性格を隠ぺいするため、過激な行動を手控えたことにより、平成3年中における対立抗争事件等は、前年に比べ、半分以下に激減した。
 なお、暴力団対策法による暴力団の指定の状況等については、第5節2(3)参照。
(1) 激減した対立抗争事件と銃器発砲事件
ア 対立抗争事件の状況
 平成3年中の対立抗争事件の発生状況は12事件、47回で、前年に比べ事件数で15事件(55.6%)、発生回数で99回(67.8%)それぞれ減少し、暴力団が暴力団対策法の施行に向け、抗争等の過激な行動を慎んでいる状況がうかがわれる(図1-47)。
 しかし、対立抗争事件における重点対象3団体(山口組、稲川会、住吉会)の関与率をみると、12事件中10事件(83.3%)に関与しており、他の団体と比べ、重点対象3団体が戦闘的である状況がうかがわれる。
イ 暴力団関係者による銃器発砲事件
 暴力団関係者による銃器発砲事件は、平成3年中、182回発生しているが、前年に比べ73回(28.6%)大幅に減少している。また、これに伴って死者数は12人(34.3%)、負傷者数は20人(30.8%)、それぞれ減少している。

図1-47 対立抗争事件、銃器発砲事件の発生状況(昭和57~平成3年)

(2) 暴力団の実態を偽装する動き等
ア 看板、名札の撤去等
 暴力団は、暴力団対策法の成立や盛り上がる暴力団排除活動に対して強い危機感を持ち、組事務所から看板や代紋等を撤去するなどの組織防衛を強めており、例えば、山口組は、3月から、
○ 組織名の入った看板等の撤去
○ 覚せい剤使用者との交友禁止
○ 18歳未満の者の組事務所への立入り禁止
などを指示している。
〔事例〕 山口組傘下組織からの看板、代紋の撤去
 3月10日から12日までの間、山口組の傘下組織について調査したところ、108の組事務所のうち41の事務所で看板、代紋が撤去されていた。
イ 法人化等の仮装の動向
 暴力団対策法の適用を逃れる動向の一つに、威力を用いた資金獲得活動を行うという暴力団の目的を隠ぺいし、法人化や政治団体等を仮装するものがある。
 山口組は、3月、総本部に「株式会社Y」を設立し、その傘下組織にも同様の動向がみられたほか、他の暴力団にも同様の動向がみられた。また、暴力団が右翼団体を設立して街頭宣伝活動を展開したり、右翼団体から団体結成のノウハウを聴取したり、反共団体主催の学習会に組員を参加させるなど、政治団体を仮装しようとするなどのほか、慈善活動を行い、イメージ向上に努めようとする特異な動向もあった。
〔事例1〕 山ロ組系暴力団の法人化の動向
 2月から3月にかけて、山口組系の特定傘下組織のうち3組織が相次いで有限会社を設立したほか、静岡県に本拠を有する山口組系暴力団は、8月、その組事務所に「株式会社G物産」を設立した。
〔事例2〕 慈善活動を装う動向
 山口組は、長崎県で発生した噴火災害の見舞金として、6月、組長名義で深江町に1,000万円、株式会社Y名義で島原市に100万円を寄付した。また、4年1月には、同組幹部を役員とした「全国国土浄化同盟」を政治団体として届け出た。
(3) 暴力団の解散等
 暴力団対策法の施行に伴う取締り強化を予想して、暴力団の解散や、暴力団員が暴力団を脱退する傾向が現れている。
〔事例〕 義人党の解散
 平成4年1月、上野を拠点とし、首都圏に勢力を持つ暴力団「義人党」は、幹部会を開催し、暴力団対策法への対応を協議した結果、解散を決定した(警視庁)。


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