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2003年(15年)3月、米国等によるイラクに対する武力行使が開始され、翌4月、首都バグダッドが陥落し、フセイン政権は事実上崩壊しました。ブッシュ米国大統領は、同年5月、イラクにおける主要な戦闘の終結を宣言しました。 その後、2004年(16年)6月には主権委譲が行われ、イラク暫定政府が発足しましたが、主権委譲を前にして治安は悪化し、外国人を対象とした人質事件も多発しました。 2005年(17年)1月には暫定国民議会選挙が実施され、同年4月には移行政府が発足しました。しかし、イラクの治安は依然として安定せず、同政府発足後も、同政府や米軍に対する反感、宗派間の対立等を背景に、米軍等の駐留外国軍、治安部隊等イラク移行政府の関係者、同国の政党幹部等を対象とした武装グループによるテロ事件が頻発しています。 現在、イラクでは、アブ・ムサブ・アル・ザルカウィのような外国人テロリストのほか、旧フセイン政権関係者等のスンニ派武装勢力が活発に活動しているとみられ、イスラム過激派の活動が最も盛んな地域の一つとなっています。こうした中、ザルカウィが、2004年(16年)10月、オサマ・ビンラディンとの連携を明確にするなどの動向もあり、イラク情勢が今後、国際社会の治安情勢に与える影響が注目されます。 3 東南アジアのテロ情勢 イスラム過激派のテロ・ネットワークは、今やアジアを含む世界各地に拡大しているとみられており、東南アジア地域においても、「ジェマア・イスラミア」を始めとするイスラム過激派によるテロ事件が頻発しています。 (1)「ジェマア・イスラミア」の動向 「ジェマア・イスラミア」は、インドネシア人らにより1993年(5年)ころに設立されたとみられるイスラム過激派組織で、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン南部、タイ南部にまたがる広大なイスラム国家の建設を目的に、国境を越えて東南アジア一帯を活動拠点としているとみられます。「ジェマア・イスラミア」は、オサマ・ビンラディン率いる「アル・カーイダ」とも関係を有しているとされており、東南アジアに存在するイスラム過激派組織の中で、大規模・無差別テロを行う危険性の最も高い組織です。 これまで、「ジェマア・イスラミア」又はその幹部が関与したとみられる主なテロ事件は次のとおりです。
(2)フィリピンのテロ情勢
タイ南部は、イスラム教徒が多数居住しており、歴史的に分離独立運動が活発な地域とされています。 2004年(16年)1月以降、タイでは、治安当局者等をねらった襲撃事件が相次いでおり、これまでに1,000人以上が死亡したとされています。この背景としては、分離独立運動のほか、犯罪組織等による利権争い、中央政府への反発等が指摘されています。 2005年(17年)2月及び4月には、自動車爆弾によるテロ事件や、これまで襲撃事件等が発生していた同国南部3県以外の地域の国際空港に対するテロ事件が発生するなど、これまでみられなかった手法を用いたり、これまでと異なる地域や対象を標的としたりする傾向がみられ、国際テロ組織の関与が懸念されています。 4 NBCテロの脅威 近年、核・生物・化学物質を使用したテロの脅威が高まっています。2001年(13年)には、米国で炭疽(たんそ)菌事件が発生したほか、2002年(14年)には、「アル・カーイダ」メンバーの米国人が、放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」(ダーティ・ボム)によって米国を攻撃する計画を立てていたことが明らかとなっています。2003年(15年)1月には、英国・ロンドンにおいて、北アフリカ系とみられるイスラム過激派グループが、猛毒リシン関連物質を所持していたことが判明しています。2004年(16年)2月には、米国・ワシントンにおいて、上院院内総務事務所からリシンが発見される事案が発生しています。 「アル・カーイダ」等の国際テロ組織が、NBCテロに関心を有していることは度々指摘されており、今後もNBCテロ関連事案が発生する可能性があります。 |
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