第3節 刑事手続への関与拡充への取組


コラム3:法テラスの犯罪被害者支援

1 犯罪被害にあわれた方やご家族を多角的にサポート

ひとたび犯罪の被害にあってしまった場合、平穏な生活を取り戻すのは容易ではありません。

被害者の方の置かれた状況はさまざまであり、時間の経過によっても変わっていきます。その時どきに必要とする支援を適切に受けられることが、被害からの回復にとって非常に重要となります。

法テラスでは、お問い合わせいただいた方の被害後の状況やニーズに応じて、さまざまな支援情報を提供するほか、法律専門家の力が必要な場合には、犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士を紹介したり、また一定の要件に該当される方には弁護士費用等の援助制度をご案内するなど、犯罪被害にあわれた方やご家族の方などを多角的にサポートしています。

▼(図1)こんなときには法テラスにお問い合わせください。

●犯罪の被害にあった

殺人・傷害・暴行/性犯罪/交通犯罪/ストーカー/DV/児童虐待/いじめ(子ども)/職場のいじめ・嫌がらせ・セクハラ/暴力団犯罪 など

●刑事手続/民事裁判手続について知りたい

被害届・告訴・告発/捜査/起訴/公判/裁判結果・出所情報/少年事件/損害賠償/示談 など

●犯罪被害について相談できる窓口を知りたい

●犯罪被害者が利用できる支援制度を知りたい

●犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士を紹介してほしい

●無料で弁護士による法律相談を受けたい

●弁護士費用が心配

●刑事裁判に参加したい

▼(図2)法テラスが提供する犯罪被害者支援(イメージ)
(図2)法テラスが提供する犯罪被害者支援(イメージ)

2 被害者参加制度と被害者参加人のための国選弁護制度がスタート

■被害者参加制度とは

裁判員制度に先立ち、平成20年12月1日に「被害者参加制度」がスタートしました。この制度によって、これまでは傍聴席で見守るしかなかった殺人や傷害事件などの被害者やそのご遺族などが、検察官を通じて裁判所に参加を申し出、裁判所から許可されると、「被害者参加人」として直接裁判に参加できるようになりました。

「被害者参加人」は、証人に尋問したり、被告人に対して質問したりすることができ、また、これらの行為を弁護士(被害者参加弁護士)に委託することができます。

法廷内イメージ図
▼(図3)被害者参加制度Q&A

Q1 参加の申出ができるのはどのような人ですか?

A 以下の犯罪の被害者本人やその法定代理人、被害者本人が亡くなった場合や心身に重大な故障がある場合の被害者の配偶者、直系親族、兄弟姉妹が申し出ることができます。

<1> 殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪

<2> 強制わいせつ、強姦などの罪

<3> 自動車運転過失致死傷などの罪

<4> 逮捕及び監禁の罪

<5> 略取、誘拐、人身売買の罪

<6> <2>~<5>の犯罪行為を含む他の犯罪

<7> <1>~<6>の未遂罪


Q2 被害者参加人になると何ができますか?

A 以下の行為ができるようになります。

<1> 公判期日に出席すること

<2> 検察官の権限行使に関して意見を述べ、説明を受けること

<3> 証人に尋問をすること

<4> 被告人に質問をすること

<5> 事実関係や法律の適用について意見を陳述すること

■被害者参加人のための国選弁護制度とは

被害者参加制度を利用するにあたって、経済的に余裕がない方でも弁護士の援助を受けることができるよう、裁判所が被害者参加弁護士を選定し、国がその費用を負担する「被害者参加人のための国選弁護制度」も、平成20年12月1日にスタートしました。

法テラスでは、被害者参加人のご意見を伺って、被害者参加弁護士の候補を指名し、裁判所に通知する業務を行います。

▼(図4)被害者参加人のための国選弁護制度Q&A

Q1 弁護士の選定を請求するための要件はありますか?

A 被害者参加人の資力(現金・預金等)が150万円未満であること。これを超える場合でも、犯罪被害を原因とした治療費などを考慮することができます。


Q2 制度を利用する場合の手続はどのようなものですか?

A Q1の要件を満たす被害者参加人の方は、裁判所に対し、法テラス(地方事務所)を経由して、被害者参加弁護士の選定を請求します(図5参照)。

▼(図5)国選被害者参加弁護士の選定の流れ
(図5)国選被害者参加弁護士の選定の流れ
※制度利用の流れについては、法テラスのホームページでも案内しています。
http://www.houterasu.or.jp
(トップページ→「被害者参加制度」→「制度を使う/手続の流れ」)

■損害賠償命令制度の導入

被害者参加制度、被害者参加人のための国選弁護制度とともに、「損害賠償命令制度」が導入されました。この制度は、刑事事件を担当した裁判所が有罪の言渡しをした後、引き続き損害賠償請求についての審理も行い、加害者に損害の賠償を命じることができるという制度です。この制度によって、被害者の方が刑事事件とは別の手続で民事訴訟を提起することの時間的・経済的・精神的負担が軽減されることになりました。

▼(図6)損害賠償命令制度Q&A

Q1 どのような場合に制度が利用できるのでしょうか?

A 以下の犯罪の刑事事件の被害者本人、一般承継人(相続人)が利用することができます。

<1> 殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死傷させた罪

<2> 強制わいせつ、強姦などの罪

<3> 逮捕及び監禁の罪

<4> 略取、誘拐、人身売買の罪

<5> <2>~<4>の犯罪行為を含む他の犯罪

<6> <1>~<5>の未遂罪

※過失犯(業務上過失致死傷、重過失致死傷、自動車運転過失致死傷)は対象となりません。


Q2 制度を利用する場合の手続はどのようなものですか?

A 刑事裁判の弁論の終結までに、地方裁判所に対し「損害賠償命令の申立て」を行う必要があります(申立て手数料として2,000円を要します。)。なお、申立手続を含め制度を利用する際に弁護士に依頼することも可能です。特に、経済的な理由で弁護士費用の支払が困難な方については、法テラスの「民事法律扶助」による費用立替え制度を利用いただくことができます(図7参照)。

▼(図7)損害賠償命令制度の流れ
(図7)損害賠償命令制度の流れ

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