第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



《基本計画において、「1~3年以内を目途に検討の結論を得て、施策を実施する」とされたもの(「1~2年以内を目途に実施する」とされたものを含む。)》

(6) 犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲等の拡大

 警察庁において、犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲及び親族間犯罪の被害に係る支給について、現状よりも拡大する必要があることを前提に、必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施することとされた。

 そこで、平成18年3月に関連政令及び規則を改正し、重傷病給付金の支給要件の緩和、支給対象期間の延長等並びに親族間の犯罪における支給制限を緩和した(平成18年4月1日施行)。

▼犯罪被害給付制度の概要

犯罪被害給付制度の概要

提供:警察庁

(7) 経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討並びに施策の実

 犯罪被害者等は、犯罪等による被害が加害者の犯罪行為等によるものであることからすれば、加害者に対する損害賠償の請求により被害回復を図ることは当然であるが、犯罪等により精神的・身体的に大きな負担を負っている犯罪被害者等にとって、更に大きな負担となったり、民事訴訟遂行上様々な困難を生じたり、さらには、加害者の賠償能力が欠如していること等により実効的な賠償を期待できないことが相当多いと指摘されている。また、国等による積極的な救済制度についても、現行の制度では、犯罪被害者等が直面する経済的困難全体から見ると不十分であると指摘されている。

 そこで、犯罪被害者等に対する経済的支援制度を現状よりも手厚いものとする必要があることを前提に、犯罪被害者等が行う損害賠償請求に対する国の補償等の在り方に関する検討を含め、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿やその財源を検討するため、推進会議の下に、有識者並びに内閣府、警察庁、法務省及び厚生労働省から成る検討のための会を設置し、必要な調査を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施することとされた。

 平成18年4月現在、内閣府において、「経済的支援に関する検討会」を立ち上げ、関連制度等に関するヒアリング及び海外調査を踏まえた検討を行っている。本検討会では、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿やその財源と、併せて、損害賠償債務の国による立替払及び求償等の是非、公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非、被害直後の保護及び再被害の危険回避のための施設、生活の立て直しを図るための中期的な居住の確保、公的弁護人制度の導入の是非に関する検討についても検討している。

 今後は、平成19年春ごろに報告書の中間とりまとめを行い、その後、国民から広く意見を募集し(いわゆるパブコメの実施)、更にそれらの結果を踏まえた検討を行い、同年末には最終報告書をまとめる予定としている。本検討会の経過や議論の内容は、内閣府犯罪被害者等施策ホームページ上で確認することができる(http://www8.cao.go.jp/hanzai/index.html)。

(8) 性犯罪被害者の緊急避妊等に要する経費の負担軽減

 警察庁において、性犯罪被害者の緊急避妊等に要する経費について、その経済的負担を軽減する必要があることを前提に、支給方法の検討を含め、必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施することとされた。

 平成17年度までは、複数の県が県費で対応し、被害者の精神的、経済的負担の軽減に努めてきたが、新たに平成18年度予算において、性犯罪被害者に対する緊急避妊等に要する経費(初診料、診断書料、検査費用、中絶費用等を含む。)に係る予算を措置し、被害者の精神的、経済的負担の軽減を図っている(性犯罪被害者に対する緊急避妊等に要する経費(国庫補助金):平成17年度 -、平成18年度 112百万円)。

(9) 医療保険利用の利便性確保

 厚生労働省において、犯罪被害者等における医療保険利用の利便性確保につき、現状に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施することとされた。

 そこで、社会保険事務局に対し、犯罪被害者が医療機関の窓口において、保険診療の実施を拒まれることがあるとの指摘に対する現状の把握に努め、また、具体的に保険診療の実施を拒む事例があった場合には、厚生労働省本省への報告を行うとともに、当該医療機関に対して適切な指導を行うよう指示している。

《基本計画には盛り込まれていないが、基本法・基本計画を踏まえ、平成18年度から新たに実施するもの》

(10) 解剖遺体の搬送・修復費の公費負担

 海上保安庁において、司法解剖後の被害者の遺体について、遺族の新たな経済的・精神的負担を軽減するため、平成18年4月から遺体搬送費用及び解剖による切開痕等を目立たないよう修復するための費用を公費により一部負担している(海上保安庁ホームページ:http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/hanzaihigai/index.htm)。



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