目次

1.はじめに

1-1:調査実施の概要

本報告は、「諸外国におけるテロ事件被害者等への経済的支援に関する調査」の結果をまとめたものである。

平成19年11月に犯罪被害者等施策推進会議が決定した「経済的支援に関する検討会」最終取りまとめにおいては、テロ事件の被害者等に対する特例的措置について、「対象となるテロ事件の定義付けは困難である上、テロ事件の態様は様々であることから、一般の犯罪被害者別に特別の救済策をとることをあらかじめ包括的に定めておくことは困難である。ただし、国家または社会に対するテロ行為により無差別大量の死傷者が生じた場合には、国は迅速に、当該テロ事件を指定して特別措置法を制定するなどにより、当該テロ事件に対する国の対処方針を決定し、そのなかで、被害者等に対する医療、カウンセリング等の早期支援の実施を定めるとともに、社会の連帯共助の精神に基づく基金を設置するなどにより、事案に即した被害者等の経済的救済を図る措置を明確に示すべきである」とされている。

本調査は、上記最終とりまとめに関連して、国内外のテロ事案を含む犯罪被害者等に対する経済的支援について、欧米諸国の法制度等を調査することにより、海外で邦人が犯罪被害に遭った場合に適切な対応ができるよう、どのような措置をとるべきか検討するための一助とすることを目的とする。

以上の目的を踏まえ、本報告にあたり、諸外国(アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ)におけるテロ事案を含む犯罪被害者等に対する経済的支援について、既存の文献(和文及び外国語文)やインターネット等による調査を実施した。実施した調査項目は以下のとおりである。

  • 各国における犯罪被害者に対する経済的支援の概要(根拠法令、理念・趣旨、給付対象、給付内容、併給調整、給付実績、財源、申請方法、査定方法等)
  • 各国におけるテロ事案被害者に特化した経済的支援の概要(制度の有無、有れば根拠法令、理念・趣旨、給付対象、給付内容、併給調整、給付実績、財源、申請方法、査定方法等)

本調査では、犯罪被害者支援およびテロ被害者支援について、それぞれ、被害が当該国の国内で発生した場合と国外で発生した場合とに分けて上記項目に関する調査を実施している。

最後に、本報告書の構成を示す。本報告書は全6章からなっており、本章では、調査対象や調査項目等、調査の実施概要を明らかにすると共に、本調査によって確認された各国の制度概要を一覧表として整理した。以降、「2.アメリカ」、「3.イギリス」、「4.フランス」、「5.ドイツ」の順に各国における犯罪被害者への経済的支援に関する制度等についての調査結果を詳述している。最後に、「6.終わりに」として、本調査の内容を改めて整理している。また、本報告書では、本報告にて用いた法令等の一部の仮訳文とその原文を資料として巻末に収録している。

なお、本報告書において取り扱っている各国における経済的支援に関する制度等と当該制度等が対象とする犯罪・テロの範囲について、表1-1として整理した。

表1-1:各国における犯罪・テロ被害者への経済的支援制度
制度名 犯罪 テロ
国内 国外 国内 国外
アメリカ 各州における犯罪被害者補償制度* ** **
国際テロ被害者費用償還制度 × × ×
イギリス 犯罪被害補償制度 × ×***
英国赤十字テロ被害者救援基金**** × ×***
海外テロ被害者のための例外的支出措置^ × × ×
北アイルランド犯罪被害補償制度 × × ×
フランス テロ及び一般犯罪被害の被害者補償基金(FGTI)
犯罪被害者に対する取引支援サービス(SARVI)^^ × ×***
ドイツ 犯罪被害者保障法 × ×***
極右暴力被害者のための過酷事件給付 ^^^ ^^^ × ×***
テロ被害者のための過酷事件給付 × ×
*
連邦政府による州への補助金制度あり。
**
実施している州としていない州がある。
***
EU加盟国においては当該国の制度による救済が保証されている。
****
英国赤十字による独自の取組み。
^
外務省による例外的な措置であり、定着した制度ではない。
^^
FGTIでの補償を申請できないようなケースにおいて適用される。
^^^
極右による暴力事件においてのみ適用される。
(出典:株式会社 独立総合研究所作成)

1-2:諸外国におけるテロ事件被害者等への経済支援一覧

本調査では、「国内における犯罪」、「国内におけるテロ」、「国外における犯罪」、「国外におけるテロ」の4つのケースについて、各国ごとの制度の内容等を一覧表で整理した。(一覧表は目次ページからご覧になれます。)

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