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犯罪被害者等施策
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平成18年度 海外調査結果最終報告書   |   戻る > III-i)経済的支援に関する検討会関係   次へ >  III-iii)民間団体援助に関する検討会関係

III 海外調査結果報告

ii)支援のための連携に関する検討会関係

<調査結果概要>

第1 アメリカ
1.訪問先
司法省司法プログラム局犯罪被害者対策室(OVC)、NOVA、
NY州犯罪被害者委員会(CVB)、SAFE HORIZON
2.主な内容
1.全米レベルでの関係機関間の連携を確保する仕組み
(1)OVCによる第4回全米連邦犯罪被害者シンポジウム(2005年)の開催。
犯罪被害者支援改善のための情報交換・研修を実施。司法省、国務省、国土安全保障省といった連邦機関関係者が参加。
2.研修システム
(1)1995年、OVCが4大学の協力を得て、全米被害者支援アカデミー(NVAA)を設立。被害者の権利に関する基礎レベルカリキュラムの提供。現在、実務家のための基礎レベルカリキュラムを作成中。
(2)1999年、OVCが5州から補助金を得て、州立被害者支援アカデミー(SVAA)を設立。各州固有の特徴やニーズを踏まえた基礎レベルの教育を提供。2010年までに全州での設立を予定。
3.支援者の水準を確保するためのシステム
(1)OVC出資による、被害者支援制度及び団体に関する基準(SVAPP)の作成。全米被害者支援基準協会(NVASC)の被害者支援制度及び団体が満たすべき倫理基準を列記。
(2)OVCが民間会社に委託し、支援を行う機関・団体が使用できる標準的な研修プログラムを作成。ウェブ上で公開。
(3)全米支援者資格認定制度(NACP)の設立。NOVAが、一定の要件に基づいて支援者を4つのレベルに分け、該当するレベルの証明書を支援者に交付。
4.情報共有システム
(1)全米自動被害者情報通知システム(VNS)。司法省のシステムで、連邦犯罪の被害者が、当該事件の詳細情報にアクセスすることが可能。
(2)被害者情報通知システム(VINE)。VNSのNY州版。民間会社が開発したソフトを基に運営。
(3)ケースマネジメントシステム。各被害者の支援サービスの内容を管理・調整するSAFE HORIZONのシステム。

第2 イギリス
1.訪問先
内務省、VS本部
2.主な内容
1.関係機関間の連携を確保する仕組み
(1)パイロットスキーム(試験的な枠組み)の実施。パイロットスキームや支援の強化により継ぎ目のない支援をこれから具体化。現在、政府とVSと共同で被害者ケアユニット(Victim Care Unit)及び証人ケアユニット(Witness Care Unit)の2つのパイロットスキーム(試験的な枠組み)を実施。
(2)VSと地方行政サービスとの連携(例えば住宅の問題)は組織化されていない。
2.ボランティア・コーディネーターの育成
(1)VS本部で中核となる研修プログラムを作成し、地方支部が地域に合わせた形で実施。30名のアソシエイト・トレーナーにより毎年100余りのプログラムを実施。
(2)VSでは、全国職業水準(National Occupational Standards)を遵守して研修を実施。職員はコミュニティ司法における全国職業資格を取得する機会がある。

第3 フランス
1.訪問先
司法省、INAVEM
2.主な内容
1.関係機関間の連携を確保する仕組み
(1)INAVEM加盟機関において裁判所、警察、病院、学校等司法機関を始めとする関係機関等との密接な連携を図り、情報提供や助言、心理的な支援を実施。
(2)加盟機関の多くが警察と協定を結んで交番に担当窓口を設置。
ただし、事件直後警察から被害者に関する情報が加盟機関に提供されるような仕組みにはなっていない。
2.全国電話相談
(1)全国各地からの電話をINAVEMが集中的に受け付け、データベース化された情報を基に、身近な加盟機関や加盟機関以外の関係機関を紹介。
(2)加盟機関以外の関係機関については、定期的に情報交換を行うとともに、協定を結んでINAVEMから適切に橋渡しできるようにしている。
(3)相談員は、被害者の意向を確認した上で、電話相談に対し、a適切な関係機関・団体の連絡先を教示する、b被害者の氏名・連絡先を記録して適切な関係機関・団体にFAXし、関係機関・団体から連絡を取るようにする、c被害者からの電話を適当な関係機関・団体へ転送する、形で主に対応。
3.ボランティア・コーディネーターの育成
(1)INAVEMは、各団体の職員およびボランティアの養成を請け負うため、支援者の活動の内容・活動レベルに応じ、講座を開講。

第4 ドイツ
1.訪問先
デュッセルドルフ援護庁、白い環
2.主な内容
1.関係機関間の連携を確保する仕組み
(1)女性解放運動団体、保健所、犯罪被害者相談を行っているボランティア団体、病院、悩み相談窓口等で構成されるネットワークが存在。
(2)関係機関の連絡先一覧を市町村ごとに発行。
(3)白い環では、専門的支援は直接行わず、専門家のいる関係機関に橋渡しを行う。また、裁判所を始め関係機関への付添いも行っている。
(4)個人情報保護の問題もあり、警察から白い環に被害者に関する情報が提供する仕組みは制度化されていないが、警察が白い環の存在を被害者に教示することは義務づけられている。
2.ボランティア・コーディネーターの育成
(1)白い環のボランティア応募者は、指導者の指導のもと3ヶ月間で3人以上被害者支援を体験し、合意が得られれば基礎セミナーを受講。ミーティングを経てボランティア職員に任命された者は、2年以内に補習セミナーを受講。
3.被害者情報を一括して管理・共有する仕組み
(1)白い環マインツ本部には、各地方支部での支援活動に関する情報を検索できるデータベースがあり、アクセスできる者を規定により決めている。

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第1 アメリカ

1 司法省司法プログラム局犯罪被害者対策室(OVC:Office for Victims of Crime)

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)法的制度
○ 被害者支援に関する各種司法制度について調整を行うための正式な連邦の「法的制度」はないが、(補助金)出資制度に適用される運営上、制定法上の要件は、犯罪被害者に提供される支援のある程度の一貫性や標準化を確保するうえで役立つ。
(2)連携のための統一基準
○  関係機関・団体は無数にあり、自治体、部族、州、連邦の管轄区が含まれ、その範囲があまりにも広く、犯罪被害者に対応するあらゆる実務者に適用される全米レベルの義務的、強制的基準というものはない。地域拠点の支援団体(家庭内暴力被害者の保護施設や婦女暴行相談センターの被害者支援団体など)もいれば、医療、精神衛生、司法、社会事業の各種サービスを提供している者もいる。警察、検察、法医学、矯正、被害者擁護など、刑事司法関係で働く刑事司法制度関係者もいる。
(3)連携のための取り組み
○ OVCは2005年に第4回全米連邦犯罪被害者シンポジウム(National Symposium on Victims of Federal Crime) を開催した。このシンポジウムには、連邦犯罪の被害者の扱いをさらに改善するために連邦制度全体から様々な関係者が一堂に会した。司法省、国務省、国土安全保障省、米郵便物検査局、そして軍は、各機関の被害者支援コーディネーターを研修に派遣した。シンポジウムは、新しい法規や有望な活動から各種犯罪への対応における固有の問題まで様々な話題を提供した。連邦機関の関係者らと情報交換やネットワーキングをする機会も設けられた。
 各機関のニーズ評価に基づき、対象者(参加者)の多様な研修ニーズに対応するには、いくつかの領域に分けて研修を行うことが一番だろうという判断から、シンポジウムでは、基本研修や特殊な被害者支援ニーズのある研修など5つの領域が用意された。また、プログラム開発や協働戦略は100以上ものワークショップで扱われた。さらに、2004年の犯罪被害者権利法(Crime Victims Rights Act) に関連した専門セッションも4件行われた。

2.ボランティア・コーディネーターの育成システムについて
(1)全米で統一的なレベルを担保するための育成システムの概要
○  全米で統一的なレベルのボランティア募集、研修、保持を確保するための育成システムというものはない。民間非営利の被害者支援部門では、家庭内暴力や婦女暴行の分野は、昔から家庭内暴力被害者の保護施設や婦女暴行相談センターに要員を配置するにあたってはボランティアに依存してきた。飲酒運転防止母の会(MADD:Mothers Against Drunk Driving)や子どもを殺された親の会(POMC:Parents of Murdered Children)もボランティアにかなり頼っている。こうした機関はいずれも、当該州の特定の法律にあわせた固有の研修カリキュラムを作成してきた。
(2)被害者支援の標準化に向けた取り組み
○ 司法省は、被害者支援の標準化に向けた提言の作成と普及を連邦レベルで指揮してきた。例えば、OVCは、被害者へのサービス提供における一貫性と有効性を確保するために、被害者支援制度および団体に関する基準(SVAPP:Standards for Victim Assistance Programs and Providers) に出資した。こうした基本的なガイドラインは様々な専門分野や地理的場所を代表する被害者支援の専門家で構成される全米被害者支援基準協会(NVASC:The National Victim Assistance Standards Consortium)が作成した。このグループが、被害者支援活動について調査し、各専門家から意見聴取をし、ガイドの草案を作成した。このガイドに、被害者支援制度に関する一連の基準をまとめ、被害者擁護団体のための研修で扱うべき一連の技能や知識について概説し、犯罪被害者の支援者にとっての一連の倫理基準を列記している。
 もう一例が、A National Protocol for Sexual Assault Medical Forensic Examinations で、OVCの発案により、婦女暴行対策室が作成した。文書内にまとめられたプロトコル(手順)は、婦女暴行被害者への対応に係わる各種専門分野による合意を得るために会議やレビューを経て作成された。任意の出資により、OVCは引き続き、警察、歯科医などその他の医療関係者、民間弁護士、ソーシャルワーカーなど、様々な分野の標準手順や慣行の統合に関して研修および技術協力の展開を支援していく。
○ OVCは、婦女暴行被害者擁護団体(一般にボランティア)のために標準化した研修カリキュラムを作成し、全米30地域以上で試行した。しかし、このカリキュラムでさえ、州や管轄区が異なれば、法律、手順、資源の違いを考慮して、修正しなければならない。
(3)アカデミーの設立
○ OVCは1995年に、被害者学や被害者の権利やサービスに関する基礎レベルの教育に重点をおいた学問的な内容のカリキュラムを提供するために全米被害者支援アカデミー(NVAA:National Victim Assistance Academy )を設立した。最初のNVAAは、4大学との協力のもと、被害者支援法律機関(VALOR:Victims’ Assistance Legal Organization)がコーディネートし、最高5箇所で開催された。2003年の正式評価の後、OVCは、テキストや構造を刷新し、カリキュラムを標準化するために、新しいNVAAモデルを作成することにした。現在作成中の基礎レベルのカリキュラムは、犯罪被害者や遺族を支援する、実務経験3年以下の専門家やボランティアのための教育研修を行う教室講習である。
○ OVCは、1999年に、5州から補助金を得て、州立被害者支援アカデミー(SVAA:State Victim Assistance Academies)を開始した。SVAAは、被害者支援団体、被害者擁護団体、関連専門家らを対象とした、総合的な学問主体の基礎レベルの教育を提供することを目的とする。SVAAは初期のNVAAモデルをもとに、特定の州の固有の特徴やニーズに合わせて調整されている。これまでに出資を受け稼動しているSVAAは25箇所であり、OVCは2010年までに全50州に独自のSVAAを設立することを目指している。
○ NVAAとSVAAの研修は、協会の被害者支援制度および団体に関する基準を参考にしている。さらに、稼働中のSVAAのうち15箇所では、SVAA研修修了後に州の参加者についてNOVAに修了証の申請を行っている。
(4)研修用テキスト
○  支援者(プロバイダー)に対する研修プログラムについて、実際に支援を行う機関・団体における研修に資するため、何百もの種類のプログラムをオンライン上で公開している。これらの研修プログラムは、民間の研修プログラム作成会社に作成を委託し、OVCはその内容を監督する立場にある。また、実際に活動している機関・団体から寄せられる声を踏まえ、適切に反映するようにしている。しかし、これは始まったばかりの状況である。
○ 参考資料は以下のとおり。
(a) 最新(2002年)のテキスト(NVAA)
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/assist/nvaa2002/welcome.html
(b) Standards for Victim Assistance Programs and Providers(NVASC)
 http://www.sc.edu/ccfs/training/victimstandards.pdf [PDF形式]
(5)資格認定制度
○  多くの州の家庭内暴力や婦女暴行に関する団体は、この2つの犯罪の被害者に直接サービスを提供することを希望する個人を対象とした認証制度を用意している。現在、6~7州で、より総合的な被害者支援を行っている者を対象とした倫理規定や認証ガイドラインが、整備されているか作成中である。こうした指針では、支援者が認証ガイドラインを満たすために終了すべき研修時間(倫理研修含め)を参考に出している。オレゴンは認証ガイドラインのある州の一つである。
○ OVCは、NVAAの研修プログラムへの参加について各教育機関において履修単位認定されるように、教育機関との戦略的な協働を模索している。また、参加者らが継続教育単位(CEU:Continuing Education Units)を申請できるよう別の戦略も検討中である。参加者らは、NOVAの実施する全米擁護団体資格認定制度(NACP:National Advocate Credentialing Program )による資格認定を受けることもできるだろう。  
 なお、NACPでは、以下のカテゴリーの資格認定を出している。
(a) 仮認定 Provisional Advocate Credential
(b) 初級 Basic Advocate Credential
(c) 中級 Intermediate Advocate Credential
(d) 上級 Advanced Advocate Credential
(e) 資格認定プログラムに限り最初の2年におけるベテラン活動家(団体)の監督育成(2005年10月31日で終了)
(f) 2年毎に生涯教育について文書化し資格更新

3.被害者通知システムについて
(1)全米自動被害者情報通知システム(VNS:Nationwide Automated Victim Information and Notification System)
○ 2001年、司法省は新しい全米被害者情報通知システムのパイロットテストを行った。このシステムは、全米の連邦犯罪の被害者を保護し情報を提供するために開発された。訴訟関連情報が、被害者に事件についての情報を提供する目的で中央のデータベースに保管されている。2004年の犯罪被害者権利法 (Crime Victims Rights Act)以降、被害者の権利は大幅に拡大され、捜査内容の公開から矯正段階に至るまでほぼすべての裁判内容について通知を受ける権利が認められた。例えば、連邦制度内では、家庭内暴力の被害者は、加害者が最初に逮捕されてから連邦矯正施設からの釈放予定までその拘置状態を知ることができる。連邦捜査局、連邦検察局、連邦刑務局は、当該事件に関して当局が講じた措置に関するデータをシステムに提供し、協力する。
○  連邦犯罪の被害者は、捜査が公開されると、事件について情報と通知を受け取る権利について通知を受ける。被害者がプログラムに参加することにした場合、コールセンターに連絡して電話、メール、ファックス等で事件についての情報を得られるよう、被害者識別番号と個人識別番号を与えられる。
○  さらに、このプログラムでは、犯罪被害者が事件の情報にアクセスできるウェブサイトも開設している。例えば、多くの被害者がいる場合、事件情報と審問や裁判の概要をアップロードし、被害者が事件の状況について詳細を得られるようにしている。被害者は、事件係属中いつでもプログラムをやめることができる。

2 NOVA: National Organization for Victim Assistance

1.ボランティア・コーディネーターの育成システムについて
(1) NOVAの傘下機関において統一的なレベルを担保するための育成システムの概要
○  被害者支援が草の根で開始されたことから、すでに各支援団体において独自の研修プログラムを持っているため、全体として、誰が指導を行うのかによって研修に一貫性がなく、トレーニングの質も均等ではないという問題がある。そこで、NOVAでは、入門者に最適なOVCの教育アカデミーや大学の被害者学コースを活用するなどして、来年から各支援団体における研修プログラムをコントロールし、今後2~3年でトレーニングの質を高めるための検討をしている。
○ 現在、3年前に導入されたNational Advocate Credentialing Programに基づき、支援者(プロバイダー)のレベルについて、4つのレベル(Provisional Advocate Credential, Basic Advocate Credential, Intermediate Advocate Credential, Advanced Advocate Credential)それぞれに必要な要件を設定し、支援者自身からの申請を受け、要件を満たす場合にはそれぞれ該当するレベルのCredential(証明書)を発行している。全米で支援者は8~10万人いると思われるが、これまでにそのうちの700人に対して2年間有効のCredential(証明書)を発行している。Credential(証明書)の発行には、100ドル必要であるが、中には支援者の雇用者が支払うケースも多々見られる。証明書発行に係る審査については、審査委員会を設置して実施している。また、証明書の取消については、倫理綱領を作成するとともに、倫理委員会を設置して実施している。
 全支援者の半数に対して証明書を発行することができれば、当該プログラムは成功だと考えている。長く支援を行っている者の中には、この認定システムについての反対者が多いが、「証明書によってプロとして活動できる」とか、「支援者として認められる何かがほしい」といった要望もあり、今後2~3年で新しく支援者になる人たちに適用することで、支援者にとって「当たり前」のプログラムとしたい。また、現在は証明書を持っていることが支援者の要件ではないが、今後5年ぐらいで支援者の要件となるようにしていきたい。ただし、認定システムを要件化することについて、政府は「支援者のボランティア精神がなくなる」として、消極的である。
(2)OVCとの関係
○ OVCが提供しているオンラインプログラムについては、まだ実際にその内容をテストしていないが、インターネットセミナーでの活用を検討している。OVCとNOVAは互いに競合する関係ではなく、連携協力してやっていきたいと考えている。
○  認定システムは、民間の全国組織が担うべきである。被害者支援を行うに当たって、時には政府と対立することもある。もし、政府が認定していたら、そのことが足かせとなって、政府に対して意見することを躊躇することにもつながりかねず、結果として被害者に対する支援がおろそかになってしまうからである。
○ NOVAのNational Advocate Credentialing Programに関する詳細は以下を参照。
 http://www.trynova.org/nacp/howitworks.html

3 ニューヨーク州犯罪被害者委員会(CVB:Crime Victims Board)

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)関係機関間での情報共有
○ 被害者に関する情報は、警察からCVBに提供されることになっているが、警察のコンピューターにアクセスし、更に情報を得ることができるようになっている。
○ 年4回2日間の日程で、支援者のための会議を開催し、毎回約50~80人の参加を得ており、各地区ごとでも開催している。

2.ボランティア・コーディネーターの育成について
(1)コーディネーターの育成
○ サービスをコーディネートするために特別に訓練されたスタッフはいない。

3.被害者通知システムについて
(1)VINE(Victim Information and Notification Everyday)
○ ニューヨーク州では、VINEと呼ばれる通知システムが運営されている。
○ この種のシステムは、民間会社であるAppriss社の開発したソフトウエアを用いて、アメリカ合衆国の各州において運営されている。
○ 参考資料は以下のとおり。
(a) NY州におけるシステムについて
 http://www.docs.state.ny.us/vine.html
(b) Appriss社のVINEについて
 http://www.appriss.com/VINE.html

4 Safe Horizon

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)他機関・団体との関係
○ OVCからの援助は、支援プログラムに対してなされることから、プログラムを実施するためのパートナーとして連携協力することもあれば、一方で他機関・団体は同じ予算を奪い合うライバルになることもある。

2.ボランティア・コーディネーターの育成システムについて
(1)Safe Horizon独自の育成システムの概要(研修期間、カリキュラムの重点内容)
○ 必修科目は、職員と管理/事業担当職員によって異なり、概ね1科目につき1日間費やされる。詳細は、参考資料「SAFE HORIZON研修テキスト」参照。
(a) 職員(主なもの)
・Safe Horizonについて
・援助スキル
・児童虐待
・自殺予防
・ストーカー行為の力学
・多文化理解能力 
(b) 管理/事業担当職員(主なもの)
・Safe Horizonについて
・管理経営研修
・業務関連の直接支援サービス研修
・職場の多様性
(2)研修終了の際の資格・認定制度
○ 資格ではないが、トレーニングを受けたことを証明する証書のようなものは発行している。
○ 全国統一の認定システムを構築しようとする動きがあり(NOVAのNational Advocate Credentialing Programを指す。)、標準の基準があることはいいと思うが、地域の状況、予算や時間の制約(トレーニングに派遣するための予算がないなど)といった各団体の置かれた状況のほかに、カリキュラムにどのような内容を盛り込むのかとか、誰が認定するのかなどといった課題がある。また、認定を受けていない者は支援活動や運営ができないとなるのは問題であると考える。

3.被害者情報の管理・共有について
(1)システムの概要
○ 3年前に、ケースマネジメントシステム(被害者の被害内容やこれまでの支援内容といった被害者情報を一括して管理・共有するためのシステム)を導入した。それまでは、導入のための費用がSafe Horizon全体の予算額を上回ってしまうため、導入を見送ってきたものである。
 システムを導入する以前は、各プログラムごとにバラバラの様式を使用して管理していたが、システム導入以後は、同じ被害者が他の違うプログラムも受けているといったことが分かるようになり、プログラム間の調整が可能になった。しかし、システムそのものを使いこなすこと自体が困難で、パートナーである関係機関・団体がこれまで独自に行ってきた様式などを標準化する必要性もあった。

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第2 イギリス

1 内務省(Home Office)

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)VSとの連携
○ VS(Victim Support)では、事件発生後、被害者全員に手紙を出していたが、うち75%が支援不要な者であり、効果的とはいえなかった。
 一方、犯罪被害者は、
(a) 刑事司法手続で自分がどのような扱いを受けたか聞いてくれる機関
(b) 自分が現在受けている取扱いに関する定期的な情報提供
(c) 身近な場所での適時な支援
を必要としている。また、被害直後及びしばらく経過後の心理的なカウンセリングも必要である。
 このため、現在、VSと共同で被害者ケアユニット(Victim Care Unit)及び証人ケアユニット(Witness Care Unit)の2つのパイロットスキーム(試験的な枠組み)を実施し、支援サービスの質の向上を図っている。
 被害者ケアユニットでは、VS地方支部が被害者に口頭で同意を得て被害者一人ひとりに応じた支援を目指している。
 証人ケアユニットは、財政的に苦しい状況で地方政府にも財政的援助を求めている。サービスに対する犯罪被害者の満足度は高い。
 なお、VSでは、現在、事件発生後に、手紙ではなく電話により被害者に照会を行い、電話に応じて番号をつけてケースマネージャーを割り振り、必要なサービスを行っている。ヘルプラインは通常1日10~12時間開けているが、パイロットスキームでは24時間開けている。
○ 犯罪被害補償審査会(CICA:Criminal Injuries Compensation Authorities)は、VSと連携するようにしている。
(2)課題
○ 支援ボランティアにおいて医者等の専門家を紹介しているが、その後のフォローについてはまちまちであるため、システム化していく必要がある。

2 VS本部(National Office for Victim Support)

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)連携状況
○ 被害者支援において最も重要なのは感情面での支援であり、警察・病院等の関係機関に付き添っている。
○ 地方行政サービスとの連携(例えば住宅の問題)は組織化されていない。
○ 昨年12月の「Green Paper Rebuilding Lives- supporting victims of crime」によりパイロットスキームや支援の強化により継ぎ目のない支援を実施する意図を政府は示したが、実行に移すのはこれからである。
○ 社会保障サービスを提供している機関がVSの活動を利用するように政府に働きかけている。
○ 現在、VSの90の地方支部を統一化して、同一の基準で支援サービスに格差が生じないよう、各目的に即して取組を進めている。

2.ボランティア・コーディネーターの育成システムについて
(1)研修プログラム
○ 研修の方針として、研修のニーズを把握し、各地域で研修ができるようにするとともに、本部で中核となる研修プログラムのメニューを作成している。 中核となる研修(core learning)プログラムは本部で作成するが、地方支部が地域に合わせた形で実施している。中核となる研修の教材については、年に一度、本部で改訂しDVD化した上で、90の地方支部に配布している。
○ 最初の研修は6か月程度で、その後、本人の希望または推薦により、DV、性犯罪による被害、性的嗜好による被害、性同一性障害による被害、人種差別による被害を対象に追加的な研修が実施される。このほかにも証人サービスに係る研修プログラムもある。追加的な研修の教材については、地方でのイベント等地方支部から要望があれば配布もしている。
最初の研修後、一定の水準に達しているか各支部のマネージャーが個別面接して審査する。実際に被害者支援を行っている様子を見て一定の水準に達していない場合には、ボランティアのリストから外されIDバッジを返す必要がある。
○ 本部で行っているナショナル・ラーニング・プログラムでは、30名のアソシエイト・トレーナー(全国約200名のトレーナーの中に含まれる)により、毎年100余りのプログラムを実施している。トレーナーは、VSの基準に達しないとなれない。大体、地方支部のマネージャーがトレーナーになっている。
○ 本部及び地方支部では、トレーナーの法的扶助や住宅給付に関する知識を深めるため、弁護士等を講師として呼んでいる(昨年は100名程度講師を依頼。)。本部では3人で参加するボランティアの登録、場所の提供等の研修の運営を行っている。
○ 研修プログラムの問題として、
(a) 理解が十分とはいえないのに地方支部から送られている研修者がいる
(b) 情報不足(例えば殺人被害に関する研修なのに研修者の心構えができていない。)
(c) 研修の場所や日程を確保するのが難しい
といった問題がある。

3.ボランティアの資格・認定について
(1)資格取得の機会提供
○ 研修は全国職業水準(National Occupational Standards)を遵守して実施し、ハイレベルな統一化が図られている。職員は、コミュニティ司法におけるCDA:Continuing Development Award(全国職業資格(NVQ:National Vocational Qualification)の簡略版)を取得する機会がある。 
取得までに、CDAは6か月、NVQは1~2年程度要する。90の支部にはそれぞれ資格を付与する担当者(専任である必要はない。)をおくこととしている。

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第3 フランス

1.INAVEM(Insutitut National d’Aide aux Victimes Et de Mediation)

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)加盟機関間の連携
○ 加盟機関において裁判所、警察、病院、学校等司法機関を始めとする関係機関等との密接な連携を図って、被害者への情報提供や助言、心理的な支援を実施している。
○ 多くの加盟機関において、警察と協定を結んで交番に担当窓口を置いている。しかし、事件直後、警察から被害者に関する情報が加盟機関に提供されるようなシステムにはなっていない。
(2)加盟機関間の連携を促進するINAVEMの取り組み
○ 被害者がパリで事件に遭った後マルセイユに引っ越した場合、パリとマルセイユの加盟機関間で連絡体制がつくられるよう仲介する。
○ 集団事故の場合には、被害者が地理的に分散するため、被害者の氏名・住所のリストを基に、INAVEMから地元の加盟機関に対し支援を行うよう指令を出す。

2.全国電話相談について
(1)相談員と上級相談員
○ 2001年から司法省の委託を受けて、全国各地からの電話を集中的に受け付け、身近な加盟機関や加盟機関以外の関係機関を紹介する業務を行っている。
○ 電話には相談員(ecoutant)と上級相談員(ecoutant referent)とで対応している。
相談員は、直接被害者からの電話相談を受ける者で、いずれも有給のスタッフである。臨床心理、法務、社会福祉関係の学位を有する者が多い。INAVEMの行う1か月程度の研修を受けることとされている。
上級相談員は、より専門性の高い知識を有し、相談員のスーパーバイズを行う(例えば、個々の相談に関する記録のうち自分の専門のテーマに関係する部分を取り出し、評価分析を行うとともに、相談員も交えて話し合いを行う。)。
○ 相談員は、被害者の意向を確認した上で電話相談に対し以下の対応を取る。また、案件が複雑な場合には、上級相談員や同僚に相談して対応方針を決める。
(a) 紹介(対応可能な関係機関・団体を説明した後、連絡先を教示)
(b) 付託(内容の重大性、緊急性、相談者の様子等に応じ、被害者が拒否しない場合に名前や連絡先を聞く。被害者の氏名・連絡先を記録して適切な関係機関・団体にFAXし、関係機関・団体から連絡を取る。)
(c) 電話転送(被害者からの電話を適当な関係機関・団体へ転送する)
(2)情報管理
○ 加盟機関及び加盟機関以外の関係機関に関する情報は、データベース化されており、相談員は必要な情報をパソコン上で閲覧しながら、電話相談に対応している。
○ なお、加盟機関以外の関係機関については、定期的に情報交換を行うとともに、協定を結んでINAVEMから適切に橋渡しできるようにしている。協定は現在、50余り結んでおり、増加傾向にある。

3.ボランティア・コーディネーターの育成について
(1)研修プログラム
○ INAVEMは、各団体の職員およびボランティアの養成を請け負う。支援者の活動内容・活動レベルに応じ、細かい項目に分け、講座を開いている。以下、講座の大枠を挙げる。詳細は、参考資料「INAVEM研修プログラム案内」参照。
(a) 被害者への支援
(b) 被害者自身の権利についての情報提供
(c) 被害者支援における目的を踏まえた使命
(d) 刑事訴訟の実行と調停
(e) INAVEM会員を対象とした特別養成講座

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第4 ドイツ

1 デュッセルドルフ援護庁(Versorgungsamt Duesseldorf)

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)法的根拠
○ 連携を担保する法律的な根拠はないが、警察や検察との協力関係など時間とともに制度化されたものはある。
(2)関係機関のネットワーク
○ 女性解放運動団体、保健所、犯罪被害者相談を行っているボランティア団体、病院、悩み相談窓口等で構成されるネットワークはあり、活発に活動している。
 ネットワークには、余りにも多くの機関・団体が参加しているため、今後は被害者の抱える問題に応じて関係機関が専門分野に特化して、専門家同士を点と点で結ぶネットワークをつくっていくことが望まれる。被害者がネットワークの存在すら気づかずに支援が受けられるのが最終的な目標である。
○ 関係機関の連絡先一覧を市町村ごとに発行している。
○ すべてのネットワークづくりに共通するが、個人情報保護が問題となる。
○ 警察にはビクティム・プログラムがあり、被害者の身体的・心理的な状況を類型化し、被害者の情報をプログラムに入力すると必要な支援内容や関係支援機関をコンピューターが判断し助言するようになっている。

2.ボランティア・コーディネーターの育成について
(1)民間団体との役割分担
○ きめ細やかなサービスを被害者に行う上で民間団体の果たす役割は大きく、そのためには、専門性のあるボランティアを育成することが必要となる。ボランティアに必要な基本的な知識を教育することは我々の仕事であり、今後の課題と考えている。

2 白い環(Weisser Ring)

1.関係機関による連携を担保するためのシステムについて
(1)関係機関の橋渡し
○ 白い環では、被害者に対する物質的・非物質的な援助、ロビー活動、犯罪抑止運動の3つを主な任務としており、コーディネーションはそれほど重要な位置を占めていない。
○ ボランティアは、心理学的療法やソーシャルワーカー的な支援など専門的支援は直接行わず、病院、法的後見人、市町村レベルの相談所、DV民間シェルター等専門家のいる関係機関に橋渡しを行っている。また、裁判所を始め関係機関への付添いも行っている。ドイツでは犯罪被害により重傷を負った場合には介添人を付き添わせることが可能である。通常は弁護士が介添人になるが、信頼できる人間として白い環が依頼されることもある。
(2)警察との連携
○  支援の必要な被害者すべてに白い環の存在を知ってもらう必要があることから、被害者が最初にコンタクトをとる警察との関係が重要と考えている。個人情報保護の問題もあり、警察から白い環に被害者に関する情報が流れてくるような仕組みは制度化されていないが、警察が白い環の存在を被害者に教示することは2年前に義務づけられた。

2.ボランティア・コーディネーターの育成システムについて
(1)教材
○ 研修用の教材はないが、教育係のマニュアルはある。
(2)研修内容
○ 各種セミナーがあるが、基礎セミナー、補習セミナー以外は、任意教育科目である。詳細は、参考資料「白い環研修プログラム案内」参照。
(a) ボランティア応募者
 応募者は、出先機関長あるいは経験者の指導のもと、3ヶ月間に3人以上の被害者支援を体験する。
 そのうえで、応募者と出先機関との間で活動内容に合意が得られれば、基礎セミナーに参加する。基礎セミナーは、自治体が企画準備するが、協会の活動原則を安定強化するために内容は統一されている。
 基礎セミナー修了後、ミーティングが行われ、州委嘱委員からボランティア職員に任命される。
(b) ボランティア職員
 任命後2年以内に、補習セミナーを受講しなければならない。補習セミナーでは、知識の取得と並行して、経験の共有、出先機関の垣根を超えた職員同士の交流が求められている。
 出先機関における活動は、多層的であるため、補習セミナーにおいては、被害者支援活動と広報活動の主要な部分について具体的なイメージが与えられ、基本セミナーで得られた基礎知識に対する理解を進め、それを深めていくことが目的とされる。

3.被害者情報を一括して管理・共有する仕組みについて
(1)管理体制
○ 法律上、データ管理専門の外部の企業が個人情報保護依頼人(Datenschutzbeauftragte)として監視する仕組みがある。マインツ本部には、各地方支部での支援活動に関する情報を検索できるデータベースがあるが、アクセスできる者を規定により決めている。


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