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犯罪被害者等施策
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平成18年度 海外調査結果最終報告書   |   戻る > III-ii)支援のための連携に関する検討会関係   次へ >  目次

III 海外調査結果報告

iii)民間団体への援助に関する検討会関係

<調査結果概要>

第1 アメリカ
1.訪問先
司法省司法プログラム局犯罪被害者対策室(OVC)、NOVA
NY州犯罪被害者委員会(CVB)、SAFE HORIZON
2.主な内容
1.民間団体への財政援助
(1)援助を受ける団体の満たすべき全米統一の基準(同基準に反しない限りで州の裁量が認められている。)を犯罪被害者法(VOCA)に規定。以下に例示。
(a) 民間又は非営利団体であること。
(b) 犯罪被害者に有効なサービスを提供していること。
(c) 地域社会における犯罪被害者支援の取組を奨励すること。
(d) 州政府が設定した受給資格又はサービス基準に従うこと。
(e) 州の犯罪被害者と同基準のサービスを連邦犯罪被害者にも提供すること。
(f) 犯罪被害者に関する情報の機密を保持すること。
 なお、アメリカでは、団体の運営費ではなく、その実施するプログラムに対して援助が行われる。
(2)CVBでは、プログラムの目標、被害者への支援、費用の効率性に関する評価を実施。民間団体は、四半期ごとに業績及び財務報告書を提出し、補助金の使途を明示しなければならない。
(3)犯罪被害者基金の財源は、ほぼ全額が連邦犯罪に係る罰金。
 NY州犯罪被害者委員会補償金の財源は、基金の6割が連邦政府からの補助金。残り4割は、州犯罪に係る罰金、特別課徴金、交通違反に係る過料、受刑者による刑務作業に係る収益など。
2.財政援助以外の援助
(1)OVCは、全米犯罪被害者研修技術支援センター(TTAC)を1998年に設立。研修や技術支援活動を全国的に普及するための調整をし、全米及び州の支援プログラムを管理する。また、全米被害者支援アカデミー(NVAA)や州立被害者支援アカデミー(SVAA)などへの技術支援の提供を監督する。

第2 イギリス
1.訪問先
内務省、VS本部
2.主な内容
1.被害者基金
(1)性犯罪被害者は被害が表面化せず、VSでもあまり目を向けられていないため、一般財源とは別に支援することとなり、設立。
(2)政府は、2004~2005年に犯罪収益(proceeds of crime)400万ポンド(約9.2億円)を被害者基金の財源とし、108のプロジェクトを支援。刑罰賦課金(surcharge)については、ITシステムが構築されていないためまだ収集できていない。
(3)被害者基金は、他の目的で使用されず犯罪被害者支援を行う団体への支援に特化。今後は、性犯罪被害以外の被害類型を支援する組織にも活用する予定。
(4)加害者の支払いの優先順位は、1.損害賠償命令、2.刑罰賦課金、3.裁判費用、4.罰金。
2.民間団体の活動を評価・監視する仕組み
(1)会計監査院からの勧告を受けて、内務省では、2006年4月から民間団体に対する財政的援助の効果を検証する取組を始めている。
(2)VS本部が地方支部の活動を評価・監視する仕組みとしては,
(a) 検査官が3年おきに、地方支部の活動が全国水準を遵守しているか質的な面から現地調査を実施。現地調査が行われない間は地方支部内で本部が設定した150余りの評価項目に沿って自己評価を実施。
(b) 現地調査の結果が悪い場合には、支援サービスを向上させるための行動計画の提出を地方支部に求め、見直し期間を6か月、1年間と設定。
(c) 検査官は公募して採用。検査官単独ではなく、刑事司法機関と共同で調査する場合もある。
3.税制上の優遇措置
(1)チャリティ財団として優遇措置を受けている以外には、特に優遇措置は設けていない。
4.VSにおける財源確保の取組
(1) 多くの人々がVSをチャリティではなく政府機関の一部と誤解しているため、全国レベルでの資金集めに苦労することがある。
(2) 今後特に充実させていきたい分野は、DV被害者、人種的偏見に基づく犯罪(race crime)、性犯罪、傷つきやすくかつ脅えた証人(vulnerable and intimidated witness)、若年層の被害者。
5.VS地方支部への補助金の分配
(1)犯罪発生件数や立件はされなくとも警察から連絡を受けた数等に基づき地方支部に配分している。犯罪類型別には細かく分けて考えてはいない。

第3 フランス
1.訪問先
司法省、INAVEM
2.主な内容
1.司法省が財政的援助を行う際の基準・経路
(1)民間団体に補助を行う基準は以下の3点。
(a) 控訴院と協定を締結している団体であること。
 現在、控訴院と協定を結んでいるのは、180団体。うち、司法省の補助を受けているのは168団体。内訳は、148団体がINAVEMの下部組織、残り20団体は「市民と司法の連盟」の加盟団体。
(b) 団体内の職業倫理や組織体制がきちんとしていること。
(c) (a)の協定とは別に、3か年にわたる目標協定を控訴院と締結していること。
(2)INAVEM加盟全体の予算は約3000万ユーロ(約45億円)。うち900万ユーロ(約13.5億円)が司法省からの補助金。INAVEM加盟機関への財政的援助は司法省及び地方公共団体から直接行われ、本部を経由しない。
2.司法省による財政的援助以外の援助
(1)各民間団体で法的問題が生じた際には各地域の控訴院に助言を求める場合もある。
(2)税制上の寄付控除は、各団体の規模が小さく控除基準に満たないこと、フランスではそもそも公的活動に対する個人・団体からの寄付が少ないことから、実際には行われていない。
(3)民間団体の事務所は、裁判所内、市町村役場内無償で提供される場合が多い。
3.司法省が民間団体を評価・監視する仕組み
(1)年間15万ユーロ(約2250万円)以上国から補助を受ける団体は、控訴院と協定を締結するとともに、毎年活動・会計報告を提出することが義務付けられている
(2)民間団体の評価・監視は、控訴院にいる団体政策担当の司法官が実施。

第4 ドイツ
1.訪問先
白い環、デュッセルドルフ援護庁
2.主な内容
1.白い環の活動財源
(1)刑法上の罰金の配分も受けているが、財源全体に占める割合は小さい。
(2)刑法上の罰金は、区裁判所や検察庁が徴収しているが、国庫を経由せず被告人から直接公益団体に振り込まれる(近年は財政難のため、罰金の約半分は国庫に入る。)。税務署が非営利団体という証明を行いかつ良好な評判を得ていれば、罰金の配分を受けられる。青少年関係団体や赤十字がかなり多額の配分を受けている。
2.白い環が受けている財政的援助以外の援助
(1)事務所の提供。ただし、恒常的なものではない。家賃を自ら払って事務所を借りたり、一部ではボランティアの家を借りたりしている。
(2)非営利団体として、白い環の活動については法人税が免除され、白い環に対する寄付については所得税が免除される。
3.白い環本部と地方支部との関係
(1)地方支部はいずれも本部のイニシアティブの下、設立したものであり、本部から法的に独立した組織ではない。このため、地方支部を認定するような基準はない。
(2)地方支部への財政的援助。
(a) 2006年上半期で、運営経費として、400の地方支部(AuBenstelle)に50万ユーロ(約7500万円)、18の州レベルの活動拠点(Landesburos)に70万ユーロ(約1億500万円)の計120万ユーロ(約1.8億円)を支出。
(b) 地方支部の運営経費のうち、交通費、通信費の占める割合がほとんど。人件費も研修費程度しかかからない。支援活動は被害者宅かボランティア宅で行う場合が多いので、場所代もほとんどかからない。
(3)地方支部の活動について、会計規則に則って適切に支出しているか、各種領収書の金額合計と各地方支部の支部長名で管理されている銀行口座の残額とが整合しているかといった点から、2人の監査員(ボランティア)による内部の会計監査を実施。このほか外部の会計監査も実施。
4.白い環の組織
(1)80名の有給スタッフと3000人のボランティアで構成。80名の有給スタッフのうち、46名はマインツ本部に、残りは州レベルの活動拠点に1,2名ずつ配置。46名のうち3分の1は短時間勤務の正規職員。

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第1 アメリカ

1.司法省司法プログラム局犯罪被害者対策室(OVC:Office for Victims of Crime)

1.民間支援団体(private service providers)の活動や州政府における民間支援団体への援助の状況について
(1)要件
○ 犯罪被害者法(VOCA:Victims of Crime Act)は、各州によるVOCA被害者支援補助金の使い道については州政府の裁量を認めているが、資金を受け取る組織が満たすべき受給基準は定めている。また、援助は、団体の運営費ではなく、その実施するプログラムに対して行われる。基金は職員を介して犯罪被害者にサービスを提供している場合にのみ、団体に支給される。各団体は以下の要件を満たさなければならない。
(a) 民間/非営利団体
VOCA資金の受給資格を得るには、民間又は非営利団体の運営によるもの、又は、そのような団体の連携したものであり、犯罪被害者にサービスを提供していなければならない。
(b) 実施サービスの記録
犯罪被害者に有効なサービスを提供しているという記録を示す。例えば、地域社会によるサービスへの支持や承認、コスト効率のよい方法で直接サービスを提供してきた実績、そして、他の財源からの資金援助などが挙げられる。
(c) 新規プログラム
まだサービス提供実績のないプログラムも、その資金援助の25~50%を連邦以外の財源から受けていることが立証できれば、VOCA資金の受給資格がある。組織が経済的安定性を保つには、連邦以外の財源を豊富に確保することが重要である。州は、25~50%の範囲内に必要な非連邦支援の基本水準を設定しなければならない。
(d) プログラムマッチ要件
マッチ(組み合わせ資金)として、プログラムに見合った金額(現物でも可)を非連邦財源から確保することが要件とされている。その目的は、補助金の支援を受けるプロジェクトに利用できる資金総額を増やすことにある。VOCA出資プロジェクトについては、各プロジェクトの費用合計の20%のマッチング拠出(VOCA補助金+マッチ)が求められ、司法プログラム局の財務ガイド(OJP Financial Guide)の最新版(パートIII 受給後の要件、第3章 マッチングまたは費用分担)に規定する場合を除き、非連邦財源から得ていなければならない。マッチとして指定された資金はすべて、VOCA被害者支援資金と同じ使途に限定され、支給期間内に使わなければならない。この方針に合致しない点についてはOVCの承認を得なければならない。
このプログラムの目的上、現物マッチには、提供されるサービスが出資対象プロジェクトにとって不可欠なものである場合には、消耗(使い捨て)機器、事務用品、ワークショップや教室での教材、作業空間、又は専門家、技術者、その他の熟練/非熟練労働者が提供する時間(金銭的価値)の寄付が含まれる。寄付を受けたサービスの価額は、受給団体における同様の労働に対して支払われる対価と合致していなければならない。必要な技能が当該団体内で手に入らない場合、対価は労働市場の相当物に合致していなければならない。
いずれにせよ、価額評価には付加給付を入れることができる。
貸借又は寄付された機器の価額はその適正市場価格を超えてはならない。
寄付された空間の価額は、同じ地域で民間が所有する建物における相当する空間と施設を独立評価して設定された相当する空間に対する公正な賃貸価格を超えてはならない。
ア.記録管理
VOCAの受給者およびその下位受給者は、財源、金額、マッチの算出対象となる期間を明記した記録を保管しなければならない。個人サービス、資材、機器、空間の価額の決定基準を文書にまとめなければならない。ボランティアサービスについて文書にまとめ、出来る限り、有給職員に対して受給団体が使っているのと同じ方法で裏づけをしなければならない。
州は、受給団体が要件を満たしているか確認する代表責任を担う。州政府は過度なマッチング資金を求めてはならない。
イ.20%マッチの例外
OVCは以下については低めのマッチング要件を設けている。
・ネイティブアメリカン部族/居留地にある団体
ネイティブアメリカン部族または居留地にある団体である新規または既存のVOCA受給団体に対するマッチングはVOCAプロジェクト全体の5%(現金又は現物)とする。この補助金の目的上、ネイティブアメリカン部族/団体は、米国が、ネイティブアメリカンとしての身分ゆえに、提供する専門プログラムやサービスの受給資格があるとして認められた、すべての部族、バンド、ネーション、あるいはその他の組織化された団体やコミュニティとして定義する。居留地とは、ネイティブアメリカンの使用または居住を目的に保存された一地帯と定義する。
・米ヴァージン諸島、その他の米国領土および所有地(プエルトリコを除く)
VOCA資金マッチングを義務付けられていない。
・特別なニーズ
OVCは、特別なニーズが州のVOCA運営者により文書で示された場合には、マッチング要件を免除することができる。
(e) ボランティア
 受給団体は、州政府がこの要件を満たせないやむを得ない理由があると判断する場合を除き、ボランティアを使わなければならない。
 「やむを得ない理由」とは、特定の職位についてボランティアの利用を禁じている、カウンセラーや被害者の情報の信頼性または機密性に関する制定法上または契約上の規定がある、又は持続的かつ積極的に尽力したがボランティアを募り維持することができない場合などがある。
(f) 犯罪被害者を支援する地域社会の取り組み奨励
地域社会において、犯罪被害者を支援するための官民協力による取り組みを奨励する。
調整活動としては、例えば、州、連邦、自治体、またはネイティブアメリカンのタスクフォース、委員会、作業部会、連合、もしくは学際的チームなどへの参加が挙げられるだろう。また、犯罪被害者に対するより適切かつ総合的なサービスの役に立つ契約書の作成なども含まれる。調整活動は、組織がVOCAの被害者支援資金を受け取る資格とはなるが、組織がVOCA資金で支援できる活動ではない。
(g) 補償給付申請の協力
被害者の補償給付申請に協力する。そのような支援としては、補償の有無を把握し犯罪被害者に知らせる、申請用紙の記入方法や手順に関して協力する、必要な書類を入手する、申請の処理状況を確認する、などが挙げられる。
(h) 補助金規制連邦規定(Federal Rules Regulating Grants)の遵守
受給団体は、VOCA、プログラム指針、司法プログラム局の財務ガイド(最新版)の要件に該当する規定を遵守しなければならない。
例えば、受け取ったVOCA資金の額と使途を完全に開示した適当な活動/会計記録を保管する。具体的には、支出の会計記録、正当なVOCA被害者支援に投じられた時間を明記した日時や担当者情報、利用者ファイル、他の財源の支援を受けたプロジェクトの割合、職務内容、サービス契約、有効な監査を促すその他の記録などが挙げられる。
(i) 人権情報の保管
州政府が設定した日程内で、人種、国籍、性別、年齢、障害別に対象となる被害者に関する制定法上義務付けられた人権関連統計を保管し、受給団体による人権関連法規の遵守状況を判断するために、その簿記、文書、書類、記録に適当なアクセスを認める。この要件は、電話相談などのサービスを提供する際に、情報を求めるのが不適切、または犯罪被害者にとって不愉快なものである場合には、免除される。  
(j) 州の基準の遵守
受給団体は、政府の求めに応じて、VOCA資金の使途や効果に関する統計および活動情報の提出など、州政府が設定した追加の受給資格またはサービス基準に従わなければならない。
(k) 連邦犯罪被害者へのサービス
受給団体は、州/自治体の犯罪の被害者と同じ基準により連邦犯罪  の被害者にサービスを提供しなければならない。
(l) VOCA出資サービスの無償提供
VOCA出資サービスを受ける被害者に料金を請求しない。受給団体は、VOCA出資プロジェクトでは、無料で、犯罪被害者にサービスを提供しなければならない。この規定からはずれる場合には、州政府による事前の承認が求められる。
受給団体による所得創出を認める前に、OVCは、VOCA資金に関して次の点を慎重に検討するよう管理者に強く勧める。
ア.VOCA被害者支援補助制度の目的は、提供されるサービスに対する支払能力や保険あるいはその他第三者による支給財源の有無に係わらず、すべての犯罪被害者にサービスを提供することである。犯罪被害者は、大きな精神的、肉体的、金銭的被害を被っている。被害者に支払いを求めて犯罪の影響をさらに増大させるようなことはVOCAの意図するところではない。
イ.州政府は、自身およびその受給団体が、連邦の財務会計上の要件に従いプログラムの収益を確実に追跡できるようにしなければならない。VOCA出資プログラムやマッチ収入はすべてその多寡を問わず、VOCA補助金である。
ウ.プログラム収益は、VOCA資金により生まれた収益を監視し、それを犯罪被害者に追加サービスの提供に向け利用させるために必要な追跡システムが義務付けられていることから、問題となる場合がある。例えば、VOCAはカウンセラーの時間の一部についてのみ出資する場合が多い。このカウンセラーが生み出したVOCAプログラムの収益の計上は、カウンセラー、 受給団体プログラム、そして州による慎重な記録保管がからむことから、複雑なものとなる。
(m) 利用者/カウンセラーおよび調査情報の機密保持
 州法、連邦法の規定に従い、利用者/カウンセラーの情報の秘密を保持する。
(n) 調査情報の機密保持
連邦法で別途規定している場合を除き、VOCAに基づく受給者は、このプログラムに基づき提供された情報が、VOCAに従い得られた目的以外の目的で、特定の民間人に識別可能であるような、調査または統計情報を利用、暴露してはならない。
そのような情報、また、その写しは、法的プロセスの対象外とし、情報提供者の合意がない限り、証拠として認められることも、いかなる処分、訴訟、またはその他の司法、法的、または行政手続におけるいかなる目的によっても利用してはならない。42 U.S.C. 10604に法典化されたVOCAの1407(d)を参照。
以上の規定は、例えば、VOCA資金を受け取る被害者支援プログラムで仕事をしているカウンセラーに犯罪被害者が提供した情報の機密保持を保証することが目的である。申請の範囲がどうあれ、VOCAやその立法経緯には、議会が犯罪被害者を支援するというVOCAの基本目標を支える情報の開示に適用される州の現行法を覆す狙いはない。
例えば、この規定には、児童虐待容疑の報告義務に関する州の現行法を覆す効果はない。Pennhurst School and Hospital v. Halderman, 451 US 1 (1981)を参照。
さらに、この機密保持規定は、公的機関の合法的な情報ニーズを妨げるものとして解釈してはならない。例えば、この規定は、行方不明者の捜査を行っている警察機関による取調べに対して、当該人物が保護施設に安全に保護されているという事実を家庭内暴力の保護施設が認めることを禁じるものではない。同様に、この規定は、連邦および州の資金が出資に関する合意に従い利用されているかどうかを判断しようとしている連邦または州の機関による被害者支援事業へのアクセスを禁じるものでもない。
(2)研修機会の提供
○ OVCは、州や国のアカデミーでの研修機会や各地の被害者関連の研修機会を提供し、支援者を支援している。また、OVCはVOCAの被害者支援および被害者補償補助金を運営している州機関による年次の全国研修も支援している。こうした研修には全州領土から約300人が参加し、重要な問題を討論している。犯罪被害者へのサービス内容を改善し、被害者支援における全国および州レベルでの問題に関して常に最新情報を持ち、情報交換機会の提供方法を検討するためにワークショップが開かれている。

2. 犯罪被害者基金(Crime Victim Fund)の財源として、罰金(Criminal Fines)、保釈保証金(Bond Forfeitures)、特別賦課金(Special Assessments)を充てることとした経緯・背景について
(1)経緯・背景
○ 犯罪被害者法(VOCA)は、1984年10月の制定以来、犯罪被害者への支援を支える連邦政府の主な手段となってきた。連邦政府は、様々なメカニズムを通して、連邦、州、自治体レベルで犯罪被害者のニーズに応えてきたが、VOCAが、あらゆる種類の犯罪の被害者に対するプログラムやサービスの連邦資金支援の主たる基盤であることに変わりはない。
○ 1984年の法律は、 犯罪被害者に関する大統領特別委員会(President’s Task Force on Victims of Crime)の活動から生まれたものであり、同委員会は1982年12月に報告書を出している。犯罪被害者の扱いを改善するための68件の提言の中に、主に次の二つの目的を掲げる連邦の犯罪被害者支援基金(Crime Victim’s Assistance Fund)の創設があった。一つは、州の犯罪被害者補償制度に財務支援を与えることであり、もう一つは、連邦、州、自治体のシステムにおける被害者/目撃者支援制度を支援することである。
○ 同委員会は、資金難により当時37件あった州補償制度が連邦犯罪の被害者への給付を停止せざるをえなくなるのではないかと懸念していた。 また、連邦政府が、州刑務所や州受刑者の教育と更生に充てる「相当額の資金」についても懸念していた。同委員会は報告書で次のように述べている。「連邦政府が州受刑者の支援に介入すれば、その同じ連邦政府が、政府が支援しているそのまさに受刑者の被害を受けた無実の納税者をあえて支援しないということにならないか。」
○ 連邦の財政難を認識した同委員会は、税収に頼らない財源を求めた。そこで、最終的には連邦政府の一般財源に納められる罰金、違約金、保証金で構成される犯罪被害者支援基金(Crime Victim’s Assistance Fund)の設立を提案したのである。委員会は次のように述べている。「犯罪活動の結果として徴収されたこうした資金を被害者救済に充てることは適当であるだけでなく、こうした資金調達法により、行政運営上効率がよく自己充足型で、税収を財源に求めない、プログラムが確保される。」
○ 参考資料は以下のとおり。
(a) 1982 Final Report of the President’s Task Force on Victims of Crime OVC ウェブサイトでも閲覧可。
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/publications/presdntstskforcrprt/welcome.html
(b) 2006 National Crime Victims’ Rights Week Resource Guide  以下で閲覧可。
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/ncvrw/2006/welcome.html
(c) Landmarks in Victims’Rights and Services 以下で閲覧可。
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/ncvrw/2006/pdf/landmarks.pdf [PDF形式]

3.州被害者支援補助金ガイドライン(State Victim Assistance Guidelines)について
(1)州被害者補助金(State victim assistance grants)の対象となる団体の資格要件(Subrecipient organization eligibility requirements)
○  州被害者補助金の対象となる団体は、州被害者補助金以外にも当該団体において活動に必要な財源や寄付(現金・現物給付)を確保する必要があるとともに、州政府にも財源を確保する責務がある。これは、犯罪被害者法(VOCA)補助金基金で支援されているプロジェクトに利用できる資金を増やすためである。
(2)ガイドラインの概要
○ 各州が、OVCから受ける基本額は決まっている。州、コロンビア特別区、プエルトリコ、ヴァージン諸島は50万ドル、その他の領土は20万ドルである。割当額の残りは人口に応じて比例配分される。VOCAは、VOCA被害者支援補助金の各州での使い方については州政府の裁量に委ねている。
○ OVCガイドラインは、VOCA資金が使えない特定のサービス、活動、費用を列記している(OVC Victim Assistance Final Program Guidelines, Section IV.E.3を参照)。司法プログラム局の財務ガイドにも連邦資金の使途に関する制約と限度が載っている。
○ 参考資料は以下のとおり。
(a) 被害者基金の運営体制(機構図、職員数)
・OVC Report to the Nation 2005 (Fiscal Years 2003-2005)。
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/welcovc/reporttonation2005/welcome.html
・「Crime Victims Fund Support Victim Services and Funding State V ictim Assistance Efforts」パート1、第1章および2章。
・OVCの「Victims of Crime Act Crime Victims Fund」ファクトシート(2005年10月)
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/publications/factshts/vocacvf/welcome.html
(b) 州政府や民間支援団体が提出する会計や活動に関する報告書の様式
・VOCA Victim Assistance and Victim Compensation Annual  Performance Report Form 
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/fund/kits_archives.htm
・The Subgrant Award Report Form  
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/fund/kits/cvc/pdf/subgrant.pdf [PDF形式]
・OJP Financial Status Report (Standard Form 269a)
 http://www.ojp.usdoj.gov/ovc/fund/forms.htm

4.財政的援助以外の援助について
(1)税制上の優遇措置
○ 多くの支援団体は、「非営利」の身分であれば税制上の優遇措置を受けられる。このような身分により、連邦、州の両レベルで、税制上の優遇措置やインセンティブが受けられる。連邦政府はまた、支援者に研修や技術支援を提供している。
(2)自助グループ等犯罪被害者自身による活動に対する援助・連携協力
○ OVCは、被害者支援プログラムや犯罪被害者にサービスを提供するその他の団体に対するコスト効率のよい研修や短期の技術支援を提供する目的で1998年に全米犯罪被害者研修技術支援センター(TTAC:National Victims of Crime Training and Technical Assistance Center)を設立した。OVCは、TTACを通して、全国的に研修や技術支援の活動普及を調整し、OVCの専門家育成や州の犯罪被害者奨学金制度に加え、州および全米の会議支援プログラムを管理し、教育研修対策(全米被害者支援アカデミーなど)や州立被害者支援アカデミー(新規および準備中)への技術支援の提供を監督している。TTACの研修戦略として、支援者や関連専門家らのニーズを把握するための調査やニーズ評価が行われている。また、研修ワークショップの年間日程の調整と発表を行い、犯罪被害者を支援する様々な専門家のニーズに応えるために、特定の研修資材や製品をとりあげ、その調整修正を促している。犯罪被害者対策室リソースセンター(OVCRC:Office for Victims of Crime Resource Center)では、ウェブサイト、犯罪被害者支援オンラインディレクトリ(Online Directory of Crime Victim Services)、ウェブフォーラム、そして新しい全米行事予定表(National Calendar of Events)など、様々な情報を集約し、提供している。
○ OVCは自由裁量(任意の)補助金を出資し、この分野の新規/既存の問題に取り組むための全国規模の研修および技術支援を開発する多くのプロジェクトを支援している。例えば、研修カリキュラム、モデルプロトコル、有望な活動紹介、研修ビデオなどの資料がある。ほとんどはOVCウェブサイトから入手できる。

2 NOVA: National Organization for Victim Assistance

1.財源について
(1)財源、課題
○  財源は十分ではない。政府からの財政的援助は受けていない(OVCから1万ドルの財政的援助を受けているが、これはいわゆるNOVAの運営費に係るものではなく、NOVAが主催する会議に被害者(12人分)が出席できるようにするためのものである。)。政府から財政的援助を受けると、口も出してくるのでもらいたくない。
○ 会員からの会費や寄付、トレーニングの実施や会議の運営による収益が主な収入源である。毎年平均100万ドル程度であるが、日々の運営費やトレーニングの実施、会議の開催に消えてしまう。
○ 活動に必要な人数を雇えない(NOVA本部事務局には5人程度の事務局員がいるのみであった。)。
○  テロなどの重大事件や危機の被害者支援に係る資金ついては、事案そのものが目立って分かりやすいため、資金を集めやすいのに対して、一般の犯罪被害者支援に関しては、事案そのものが目立つことがなく、国民の認識や理解が低いこともあって、資金を集めることは困難である。
(2)財源確保のための方策
○ 単なる会員組織から「協会」組織へ移行し、支援者(プロバイダー)により多くのものを提供したいと考えている。そこで、民間から資金を集めることを考えている。

2.組織体制について
(1)予算配分
○ 被害者に対する直接支援活動に係る予算は、テロなどの重大事件や危機の被害者支援を含めて、全体予算の4分の1程度である。その割合は多くない。
(2)人員体制
○ 会員団体として、政府機関やNGO団体を含め254の組織があり、1,041人の会員がいる。

3.財政的援助以外の援助について
(1)連邦政府及び州政府からの援助
○ 研修会や協議会といった会議を開催するに当たって、会議で使用する資料を提供してもらったり、司法長官に出席してもらうなどの技術的後方支援的な援助を受けている。
(2)自助グループ等犯罪被害者自身による活動に対する援助・連携協力
○ 電話、郵便、メールなどの方法により、被害者の精神的安定に関する援助を行っている。支援を受けるためにはどこに行けばいいのかといった情報提供を行っている。
○  自助グループの立ち上げに関するアドバイスを行うとともに、被害者支援に関する一般の人々の意識を高めるため、自団体だけでなく、他団体に関する活動内容についても広報するなどしている。このように他団体を育て、団体相互のパートナーシップを構築することが「協会」の役割だと考える。
○  被害者への直接的支援は減った。公共政策を提言したり、支援団体におけるリーダーシップを発揮するのが役割になりつつある。例えば、被害者権利週間を月間にするように提言したり、連邦議会議員の圧力により、本来であれば支援プログラムのためのOVCの被害者基金のうちからいくらかを全く違う政策の財源として使おうとしたことがあった際に、ロビー活動を行って基金を守るための活動をした。
○ NOVAの主な活動は、全国会議の開催、クライシスレスポンスチームの育成、支援者の認定システムの3つに集約される。

3 ニューヨーク州犯罪被害者委員会(CVB:Crime Victims Board)

1.民間支援団体に対し財政的援助を行う際のガイドラインについて
(1)ガイドラインの概要、評価体制
○ 厳しいガイドラインを設け、プログラムのパフォーマンスと費用の評価を実施している。コミュニティーの被害者のニーズに応じた適切な支援プログラムに援助をしている。約200件のプログラムに援助を行っている。
○  CVBにはプログラムへの助成を担当する職員が2人おり、実際に現地に赴き活動している状況を把握した上で援助の有無に関する評価を行っている。中には、州議会議員から議員の地元の支援団体が行うプログラムに援助するよう圧力を受けることもあるが、プログラムの援助については、連邦政府から援助を受けており、適切なプログラムに適切な財源を配分しないと次回から州政府自体が連邦政府からの援助を受けられなくなるため、適切に財源を配分している。
(2)申請手続
○  政府機関やNPO団体が、プログラムに関して援助を得ようとする際には、必ずCVBが規定する統一の申請様式によって申請を行う必要がある。また、被害者個人が補償を受けようとする場合にも、統一の申請様式によって申請を行う必要がある。申請はオンライン上で行うことも可能であり、社会保障番号などを入力する必要がある。統一の申請様式により、被害者やプログラムに関する情報を一括してコンピューターで管理することが可能になった。
(3)金銭的援助の基準
○  民間被害者支援提供者への金銭的援助の基準はVOCAのプログラム・ガイドラインに規定されている。これらのガイドラインは、米国司法省内のOVCが運営し、州の受益者及び連邦資金を二次的に受け取っている民間支援プログラムに関する有資格基準を示しており、有資格者とみなされるためには次の要件を満たさなければならない。
(a) 被害者にサービスを提供している公共的又は非営利団体であること。
(b) 被害者に対して効果的にサービスを提供している実績があること。
(c) サービスの実績がなければ、資金援助の25~50%は連邦政府以外の源泉から来ることを示さなければならない。
(d) それぞれのプログラムは各VOCAプロジェクトの全体コストの20%相当は負担しなければならない。
(e) ボランティアを使わなければならない。
(f) 犯罪被害者を助けるためのコミュニティーの努力を促進しなければならない。
(g) 被害者の補償給付金申請を助けなければならない。
(h) 連邦政府の助成金規制ルールを遵守しなければならない。
(i) 公民権情報を備えておかなければならない。
(j) 州の基準を遵守しなければならない。
(k) 連邦犯罪の被害者を助けるサービスがなくてはならない。
(l) VOCAにより資金が提供されているサービスについては被害者に無償で提供しなければならない。
(m) 被害者のカウンセラーや被害者に係る調査情報は州並びに連邦法に基づき機密扱いにしておかなければならない。
(4)支援されている活動
○ 直接支援活動として、補償求償申請の援助、裁判所や病院への同行、
 カウンセリング(電話によるカウンセリングを含む。)、情報提供及び紹介、シェルターサービス、犯罪司法擁護、治療、フォローアップ連絡、危機ホットライン等が挙げられる。
○ 支援提供者の技能向上のための活動として、支援提供者の研修への出席、支援提供者の監督、被害者を助けるためのコミュニティーの努力を促進するための連合の会合への出席が挙げられる。

2.財源について
(1)財源
○ ニューヨーク州犯罪被害者委員会補償金の財源は州政府及び連邦政府の資金の組み合わせからなっている。州政府が調達する財源は、罰金、特別課徴金、交通違反に係る過料、囚人による刑務作業に係る収益からの徴収などといった加害者側から徴収したものがほとんどである。

3.州独自で民間団体に求めている報告について
(1)報告書の提出
○  各プログラムは業績及び財務報告書を提出するよう義務付けられている。要求されている業績報告書には、犯罪被害者に毎月提供されたサービスの種類と金額を含むことになっている。四半期ごとに、各プログラムはその報告期間中にサービスを受けている被害者の人数、サービスを提供している被害者に係る犯罪の種類、被害者人口に関する特定の人口動態情報、その報告期間中のプログラム活動を象徴するような事象に関する情報を報告する。
 また、要求されている財務報告は、四半期ごとの提出期限となっている。これらの報告書により、その報告期間中にVOCA及び州政府の資金がどのように使われたかが示される。
(2)報告書提出の目的
○  すべての報告書は、支援提供者が契約を遵守しているかどうかを判断するのに使われる。業績書類は、プログラムの目標及び目的を評価すると同時に、サービス提供改善のために被害者への支援を評価することにも用いられる。また、報告書は、被害者支援を提供するにあたっての費用の効率性を判断するためにも使用される。これは、サービスをすべての犯罪被害者に対してもっとも費用対効果のよい方法で提供できるようにするためである。

4.財政的援助以外の援助について
(1)情報提供
○ CVBは様々な形で追加支援を提供している。諮問委員会(Advisory C ouncil)は、被害者支援提供者がCVBに対しニューヨーク州全体での問題、課題、成功例及び被害者のニーズを伝えるために義務付けられた討議の場であり、CVBはここでの情報を基にサービス提供を改善するための法案改正や方針変更を提案している。被害者支援・プロバイダーに対して重要な事柄を知らせる必要があるときは、CVBは助成金を受けているすべての被害者支援提供者に対して会報を送付するとともに、関心のある支援提供者のためにこの情報をウェブサイトで公表している。
○  CVBは、地域の問題を討議するために集まる地域連合体も支援している。そこにはCVBの代表者が支援と情報を提供するために各地域会合に出席しており、CVBは各事務所(オールバニー、バッファロー、ブルックリン)で補償申請用紙に関する訓練を毎月提供している。この訓練は、毎月第3火曜日に行われており、補償問題に興味のある人であれば誰でも参加できる。CVBは18か月ごとに州全体での訓練会議を後援しており、この会議の場では被害者支援と問題点に関する様々なテーマについて、被害者支援提供者が訓練を受ける機会を提供している。CVBは、州全体の会議が行われるまでの間の18か月間で、重要で関連性のあるタイムリーなテーマについて地域での訓練を提供している。被害者支援プログラム・プロバイダーは助成金を使ってCVBが後援しているものも含めて、どのような訓練にもボランティアを派遣することが認められている。
(2)自助グループなど被害者自身による活動に対する援助・連携協力
○ 被害者支援に関する国民意識を高めたり、CVBの活動を広く知らせるための広報活動を行っている。例えば、病院や警察にチラシを貼ったり、教会に行って話をしたり、新聞に広告を出したりしている。
○ CVBは犯罪被害者に対しての自助支援は提供していないが、多くの助成金を受けている支援提供者は被害者のサポート・グループを開催したり促進している。
○  州では他にも被害者支援プログラムがある。ニューヨーク州保健局は、強姦危機センターに特化した資金を運営し、ニューヨーク州家族子供サービス局は、家庭内暴力シェルターやそのサービスを支援し、ニューヨーク州犯罪司法局は、様々な被害者支援・プロバイダーに対して助成金を出している。CVBは独自の支援プログラムを通じて被害者に直接サービスを提供している。サービスの中には、補償申請書の記入の手伝い、権利擁護、情報提供などが含まれている。

4.Safe Horizon

1.財源について
(1)財源
○ 活動に必要な財源は、大半が政府機関からの援助である。その他の部分は、民間企業からの寄付や財団からの援助で賄っている。民間企業とっては、新しいプログラムを援助していること自体が宣伝にもなるが、財団は、そもそも被害者支援団体への援助は州政府がやるべきことだとして、あまり援助したがらない傾向にある。
(2)財源確保のための方策
○ 法案についての提言を行うことで、法案が成立した際の活動資金を得られるかもしれないと考えたりしている(例えば、被害者だからといって仕事をクビにできない制度などがそれに当たる。「Safe at Work」ともいう。)。

2.連携協力について
(1)関係機関
○ ホームページ上にGovernment Partnersとして、ニューヨーク市、ニューヨーク州、連邦政府を挙げている。
(2)連携状況
○  支援プログラムに対する財政的援助を受ける際に、当該プログラムに関係する機関・団体がパートナーとして組むことがある。互いにパートナーとなることで、これまで連携することが困難だった領域・分野の機関・団体との連携が可能になったり、専門性の足りない分野について学ぶことができるようになった。

3.組織体制について
(1)職員配置
○ 平均して700人~800人のスタッフで構成されている。9.11直後は、その支援のための援助が政府からなされたので、スタッフが1,000人近くになったが、現在は735人である。そのうち519人が常勤である。それ以外の216人は、非常勤であったり、一時的に特定のプログラムに携わっていたりするものである。職業別としては、カウンセラーが13人、精神科医が1人(非常勤)、ソーシャルワーカーが19人、弁護士が9人となっており、専門家は42人である。

4.財政的援助以外の援助について
(1)自助グループなど被害者自身による活動に対する援助・連携協力
○ 自助グループに相当するピアグループに携わっているスタッフの一部は被害者である。ピアグループの育成やそこに参加している被害者への支援に携わる上で、スタッフが被害者であることの方がより適切であろうとの観点から、ピアグループを育てていくための後方支援的な活動を行っている。Safe Horizonが処理するケースのうち、約6割がDVである。DVはなにか大きな事件にならない限りあまり注目されにくいものであるから、マスコミにその重大性について知ってもらえるような広報が大切だと考える。

5.支援プログラムの検討、評価における犯罪被害者の声の反映方法について
(1)意見聴取の方法
○ 被害者からの手紙や苦情といったインフォーマルなものはファイルに保存している。かつて警察官に対して、Safe Horizonの活動に対するアンケート調査を行ったことがある。被害者にプログラムレビュー委員会のメンバーになってもらいたいと考えているが、なかなか担い手がいないのが現状である。ホットラインに20秒以内に出ることを決めているが、それがしっかりとできているかとか、Safe Horizonの説明により司法システムが理解できたかとかについて調査したいとは考えている。

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第2 イギリス

1 内務省(Home Office)

1.被害者基金について
(1)背景
○ 性犯罪被害者は被害が表面化せず、VSでもあまり目を向けられていないため、一般財源とは別に支援することとした。
(2)財源
○ 政府は、2004~2005年に犯罪収益(proceeds of crime)400万ポンド(約9億2000万円)を被害者基金の財源とし、108のプロジェクトを支援 している。刑罰賦課金(surcharge)については、ITシステムが構築されていないためまだ収集できていない。
○ 加害者は個々の被害者のみならず社会全体に対して迷惑をかけたことについて追加的な課徴金という意味合いで、刑罰賦課金を支払うことになる。
○ 通常の罰金は一般会計に入るが、被害者基金は、他の目的で使用されず犯罪被害者支援を行う団体への支援に特化している。今後は、性犯罪被害以外の被害類型を支援する組織にも活用する予定である。

2.民間団体に対する業績評価等について
(1)導入に至った背景
○ これまでも支援を行った被害者の数や、かかった経費について、6か月おきに把握していたものの、特段業績評価をしておらず、会計監査院(National Audit)から財政的援助の効果についてチェックするよう勧告が出されたため、2006年4月から取組を始めたところである。

3.財政的援助以外の援助について
(1)税制上の優遇措置
○ チャリティ財団として優遇措置を受けている以外には、特に優遇措置を設けていない。

2 VS本部(National Office for Victim Support)

1.財源について
(1)財源
○ VSの活動資金については、補助金、全国及び地方レベルでの資金集め、公的機関との契約の締結やプロジェクトの共同実施、EU加盟国や生命保険会社との共同調査などで確保している。
(2)問題点
○ 多くの人々がVSをチャリティではなく政府機関の一部と誤解しているため、全国レベルでの資金集めに苦労することがある。

2.地方支部への補助金の分配について
(1)配分方法
○ 犯罪発生件数や、警察から連絡を受けた数(事件として立件されないものを含む)等に基づき地方支部に配分している。犯罪類型別には細かく分けて考えてはいない。

3.地方支部の活動の評価・監視の仕組みについて
(1)評価・監視の仕組み
○ Quality & Standards Inspectionでは、3年おきに検査官を現地派遣してリポートを作成し、理事会の下に置かれているファンディングパネル(内部組織の本部財政部門)に提出する。検査が行われない間は地方支部内で自己評価(150にわたる自己評価項目を本部で作成)を行う。
 検査結果が悪いと、ファンディングパネルは支援サービスを向上させるための行動計画の提出を求めるとともに、見直し期間として6か月間、1年間を与えるなど、すぐには経済的制裁を行わない。非常に厳しい方法という人もいるが、支援サービスを組織的にきちんと提供するためには必要である。検査は問題を提示していくことに意味があり、処罰することが目的ではない。
 検査官は公募して採用する。検査官のうち2人は一般的な面を、1人は財務的な面を調査する。検査官単独ではなく、刑事司法機関と共同で調査する場合もある。
 検査官は、地方支部の活動が全国水準(Victim Support’s national s tandards)を遵守しているか質的な面から検査している。
(2)地方支部の管理・運営
○ 各地方支部の理事会(Board of Trustees)が、各地方支部の運営に責任を有している。各地方支部の管理運営については、全国水準に規定がある。
(4)今後の取組み
○ 今後特に支援を充実させていきたい分野は、DV被害者、人種的偏見に基づく犯罪(race crime)、性犯罪、傷つきやすくかつ脅えた証人(vulnerable and intimidated witness)、若年層の被害者である。

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第3 フランス

1.司法省(Ministere de la Justice)

1.民間団体に財政的援助を行う際の基準について
(1)司法省が民間団体に補助を行う基準
○ 法律的には控訴院の第一検事長が協定を締結することとされているが、実際には団体政策担当の司法官(magistrat)が協定に関する事務を担当する。
 現在、控訴院と協定を結んでいる180団体のうち、司法省が補助を行っているのは168団体である。このうち、148団体がINAVEMの下部組織であり、残りの20団体は「市民と司法の連盟」(FEDERATION CITOYENS et JUSTICE 本部はボルドー、活動拠点は100程度)の加盟団体である。
 「市民と司法の連盟」は、加害者に対する司法上の管理(検察官による取調べから裁判に出頭するまで)を受ける際の監視を主な活動内容としているが、加盟団体のうち20団体が補足的に被害者支援活動を行っているため、補助を行っている。
○ 団体内の職業倫理や組織体制がきちんとしていなければならない。
○ 先に述べた協定とは別に、3か年にわたる目標協定を控訴院と締結していること。
 目標協定には、控訴院が活動に必要な場所を提供する代わりに、団体は一定のサービスを提供しなければならないといった項目が盛り込まれている。

2.財政的援助以外の援助について
(1)関係機関間の調整
○ 各控訴院において、困難な状況にある民間支援団体と司法省各部局との橋渡しを行うとともに、管轄内の各民間支援団体が一貫した目的の下、支援活動を行うよう調整を行っている。各民間団体で法的問題が生じた際には、各地域の控訴院に助言を求める場合もある。
(2)研修
○ 好事例の普及と共有の観点から、司法省とINAVEMが共同で研修・フォーラムを開催している。
(3)税制上の優遇措置
○ 税制上の寄付控除は、各団体の規模が小さく控除基準に満たないこと、フランスではそもそも公的活動に対する個人・団体からの寄付が少ないことから、行われていない。
(4)場所の提供
○ 民間団体の中には、地方公共団体から無償で事務所(裁判所、市町村役場)の提供を受けている場合が多い。

3.民間団体を評価・監視する仕組みについて
(1)報告書の提出
○ 年間15万ユーロ(約2250万円)以上国から補助を受ける民間団体は、控訴院と協定を締結するとともに、毎年活動・会計報告を提出することとされている。
○ 目標協定についても、司法省及び控訴院に毎年及び目標期間終了後に達成状況に関する報告書を提出する必要がある。
(2)評価・監視の仕組み
○ 各団体の評価・監視は、控訴院にいる団体政策担当の司法官が、大審裁判所(控訴院の下級裁判所に相当)から各団体の情報をもらった上で、行っている。支援サービスの質が低下するなど問題が発生した場合には、司法官は改善策を講じて事態を改善するようにしている。また、INAVEMとの契約事項の中には、各加盟団体のサービスの質の確保を盛り込んでいる。

2 INAVEM(Insutitut National d’Aide aux Victimes Et de Mediation)

1.組織体制について
(1)職員配置
○ 加盟機関全体の有給職員は約700名、ボランティアは約600名、予算は約3000万ユーロである。うち本部の職員は25人である。
(2)予算
○ 予算は約170万ユーロとなっている。また、3000万ユーロのうち900万ユーロが司法省からの補助金である。うち本部への補助金は約100万ユーロである。

2.本部と加盟機関との関係について
(1)財政的援助
○ 加盟機関への財政的援助は司法省及び地方公共団体から直接行われ、本部を経由しない。

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第4 ドイツ

1 白い環(Weisser Ring)

1.財源について
(1)財源
○ 寄付、特に遺言状による寄付の財源に占める割合が大きい(2005年で650万ユーロ)。刑法上の軽犯罪関連の罰金(刑事裁判を停止するための罰金)の配分も受けているが、全体の財源に占める割合は小さい。
○ 刑法上の罰金は、区裁判所や検察庁が徴収しており、国庫を経由せずに公益団体に振り込まれる(近年は財政難のため、徴収した罰金の約半分は国庫に入る。)。税務署が非営利団体という証明を行い、かつ、良好な評判を得ていれば、罰金の配分を受けられる。青少年関係団体や赤十字がかなり多額の配分を受けている。
(2)財源確保のための方策
○ 政府から独立して活動できるよう、極力政府から財政的援助を受けないようにしている。しかし、今後、寄付が少なくなって財源が不足すれば、財政的援助を公的機関に求めるかもしれない。

2.財政的援助以外の援助について
(1)事務所の提供
○  相談等で決められた時間だけ借りる、イベント等で一室を借りるといった場合はあるものの、恒常的には事務所の貸与・提供を受けていない。家賃を自ら払って事務所を借りるか、一部ではボランティアの家を借りたりしている。ミュンヘン警察本部が相談窓口として場所を貸与している例もあるが、唯一の例外である。
(2)税制上の優遇措置
○ 非営利団体として、白い環の活動については法人税が免除され、白い環に対する寄付については所得税が免除される。

3.白い環本部と地方支部との関係について
(1)地方支部を認定する基準
○ 地方支部はいずれも本部のイニシアティブの下、設立したものであり、本部から法的に独立した組織ではない。このため、地方支部を認定するような基準はない。
(2)地方支部への財政的援助
○ 2006年上半期で、運営経費として、400の地方支部(AuBenstelle)に50万ユーロ、18の州レベルの活動拠点(Landesburos)に70万ユーロの計120万ユーロを支出している。1支部当たり平均1200ユーロの運営資金が支出されるが、交通費や通信費などのコストや支援の対象となる被害者の数によって異なってくる。
○ 地方支部の運営経費のうち、交通費、通信費の占める割合がほとんどである。人件費も研修費程度しかかからない。被害者宅かボランティア宅で支援活動を行う場合が多いので、場所代もほとんどかからない。
(3)活動に対する監視、評価の仕組み
○ 会計規則(Kassenordnung)に則って適切に支出しているか、各種領収書の金額の合計と各地方支部の支部長名で管理されている銀行口座の残額とが整合しているかといった点から、2人の監査員(ボランティア)による内部の会計監査が行われる。このほか外部の会計監査も行われる。
○ 貸借対照表等の財務書類については、自主的に公表している。
 また、裁判所や検察に対しては、活動内容に関する資料を定期的に提供している。罰金の配分をめぐり他団体との競争もあるので、司法機関に好印象を与える必要がある。

4.組織体制について
(1)職員配置
○ 80名の有給スタッフと3000人のボランティアで構成される。80名の有給スタッフのうち、46名はマインツ本部に、残りは州レベルの活動拠点に1,2名ずつ配置される。46名のうち3分の1は短時間勤務の正規職員である。
○ 地方支部は、通常、ボランティアのコーディネーターの役割も兼ねた支部長と数人のボランティアにより構成される。


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平成18年度 海外調査結果最終報告書 III 海外調査結果報告 iii)民間団体援助に関する検討会関係
共生社会政策 犯罪被害者等施策