第6章 警察活動の支え

4 犯罪被害者支援

(1)基本施策

犯罪被害者及びその遺族又は家族(以下「犯罪被害者等」という。)は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では次のとおり、様々な側面から犯罪被害者支援の充実を図っている。また、各都道府県警察において、捜査員以外の職員が事件発生直後に犯罪被害者支援を行う指定被害者支援要員制度(注)が導入されている。

注:平成26年末の現在の要員総数 34,234人
 
図表6-26 犯罪被害者支援に係る基本施策
図表6-26 犯罪被害者支援に係る基本施策

(2)犯罪被害給付制度

犯罪被害給付制度は、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない犯罪被害者等に対し、犯罪被害者支援法(注)に基づき、国が一定の給付金を支給するものである。この制度は、昭和56年1月に開始して以来、犯罪被害等の早期の軽減に重要な役割を果たしている。

注:犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律
 
図表6-27 犯罪被害者等給付金
図表6-27 犯罪被害者等給付金
 
図表6-28 犯罪被害給付制度の運用状況
図表6-28 犯罪被害給付制度の運用状況
Excel形式のファイルはこちら

(3)被害者の特性に応じた施策

犯罪類型等によって犯罪被害者等には異なる特性があることから、警察では、性犯罪被害者、交通事故被害者(注1)、配偶者からの暴力事案の被害者(注2)、ストーカー事案の被害者(注3)、被害少年(注4)、暴力団犯罪被害者等について、その特性に応じた施策を推進している。

注1:165頁参照
注2・3:98頁参照
注4:107頁参照
 
図表6-29 被害者の特性に応じた施策の例
図表6-29 被害者の特性に応じた施策の例

(4)関係機関・団体との連携

犯罪被害者等が支援を必要とする事柄は、生活、医療、公判等多岐にわたるため、全ての都道府県で、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、地方公共団体の担当部局や相談機関等の関係機関・団体から成る「被害者支援連絡協議会」が設立されている。

また、よりきめ細かな犯罪被害者支援を行うため、全国被害者支援ネットワークに加盟する民間の被害者支援団体が全ての都道府県で設立されているほか、犯罪被害者支援法に基づき、都道府県公安委員会が犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適正かつ確実に実施できる団体を犯罪被害者等早期援助団体(注)として指定している。これらの団体では、電話又は面接による相談、裁判所へ赴く際の付添い等の直接支援、相談員の養成及び研修、自助グループ(被害者遺族の会等)への支援、広報啓発等を行っている。

注:平成27年4月1日現在、全国で46団体

コラム 犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する研究会

 平成23年3月に閣議決定された第2次犯罪被害者等基本計画に基づき開催された有識者検討会(注)の提言を受け、警察庁において、26年3月から、6人の部外有識者による「犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する研究会」が、計5回開催された。同研究会は、精神的被害を受けた犯罪被害者等が心理療法等を受ける際の自己負担の各種軽減方策を検討した上で、27年4月に、

○ 一部の都県で運用されているカウンセリング費用の公費負担制度を国の支援・関与の下で全国展開していくことが望ましいこと

○ 同制度の導入と並行して、同制度の周知や、心理療法等の実施者となる医師、心理職の養成を強化することを期待すること

などを内容とする「犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書」を取りまとめた。

注:犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会


前の項目に戻る     次の項目に進む