第6章 警察活動の支え

第3節 外国治安機関等との連携

1 外国治安機関等との連携

(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携

① ASEAN加盟国、G7各国等との連携

警察庁では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野においてASEAN加盟国等の外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。

ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注1)が平成16年から開催されており、25年にはラオスにおいて開催された第6回会議に併せ、日・ASEAN国際犯罪閣僚会議が初めて開催されている。また、ASEAN警察長官会合(ASEANAPOL)(注2)には、17年以降、我が国から警察庁幹部が出席している。そのほか、26年11月及び27年3月には、ドイツにおいてG7ローマ/リヨン・グループ会合が開催され、我が国からは警察庁担当者等が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。

注1:ASEAN加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する会議
注2:東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として昭和56年に結成されたもので、我が国は、平成17年の第25回会合からオブザーバーとして参加し、20年の第28回会合からは、中国、韓国等と共に議題提案権を有する「ダイアログ・パートナー」として参加している。
② 二国間の連携

警察では、国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関との間で協議を行うなどして協力関係を深めている。26年には、東京において、10月に中国公安部との間で第7回日中警察協議を、12月にベトナム公安省との間で第2回日越治安当局次官級協議を開催したほか、27年3月には、東京において、韓国警察庁との間で第4回日韓警察協議を開催した。また、国家公安委員会委員長が、イスラエル(26年10月)、カンボジア(27年2月)、コロンビア(同年3月)、米国(同年5月)等各国の治安担当大臣、駐日大使等と会談を行うなど、外国治安機関等との協力関係を強化した。

 
第2回日越治安当局次官級協議
第2回日越治安当局次官級協議
 
国家公安委員会委員長と米国司法長官との会談
国家公安委員会委員長と米国司法長官との会談

(2)治安に関係する国際約束の締結

刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期するとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。そのほか、平成26年2月、PCSC協定(注)が日米両政府間において署名され、引き続き同協定の発効に向けた協議を行っている。

注:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(Agreement between the Government of Japan and the Government of the United States of America on Enhancing Cooperation in Preventing and Combating Serious Crime)の略称。日米査証免除措置の下で安全な国際的渡航を一層容易にしつつ、日米両国国民の安全を強化するために、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、相互に必要な指紋情報等を交換するための枠組みを定めたもの外国治安機関等との連携

(3)国際協力の推進

警察庁では、我が国の警察の知見や特質をいかし、外務省や独立行政法人国際協力機構(JICA)と協力して、インドネシア、トルコ、ブラジル等に専門家を派遣して交番制度、犯罪鑑識等の分野で知識・技術の移転を図っている。平成26年中には、15人の専門家を新たに派遣し、派遣された者の数は、継続派遣中の者と合わせ延べ23人となっている。

① インドネシア国家警察改革支援プログラム

13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。24年以降、市民警察活動を全国展開させるため、交番制度、犯罪鑑識、通信指令システム等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。

② 東ティモール国家警察に対する協力

東ティモール政府からの要請に基づき、26年10月、専門家を派遣し、地域警察の現状を視察した上で、助言・指導を行うとともに、インドネシア国家警察と協力しながら、インドネシアにおける交番の視察、巡回連絡の研修等を実施した。

③ トルコにおけるアフガニスタン警察官訓練等に対する協力

トルコ警察では、アフガニスタンの治安改善のため、同国警察の能力向上に必要な警察官訓練を実施している。我が国では、トルコ政府からの要請を受け、23年以降、同国に柔道講師の警察職員を派遣してアフガニスタン警察官に対し柔道技術を指導するとともに、これらを通じて、警察官として必要な規律や職業倫理も教えている。

 
トルコでのアフガニスタン警察官訓練の様子
トルコでのアフガニスタン警察官訓練の様子
④ ブラジルに対する地域警察活動支援

これまでも、我が国警察官をブラジルに派遣し、地域警察活動の強化及び交番制度の普及の支援を実施してきたところ、ブラジル政府からの要請を受け、26年6月に調査団を、27年1月には専門家を派遣して、交番制度を始めとした地域警察活動の更なる質の向上及び全国展開に向けた支援を行っている。

 
ブラジルの警察官への住民広報の指導の様子
ブラジルの警察官への住民広報の指導の様子
⑤ 研修員の受入れ

警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。26年中には、13回の研修でインドネシア、フィリピン、トルコ等各国の警察幹部を含む130人の研修員を受け入れた。

コラム 警察による国際緊急援助活動

我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。

平成27年4月25日午後3時11分(現地時間同日午前11時56分)、ネパール首都カトマンズ北西約80キロのガンダキ県ラムジュン郡付近でマグニチュード7.8の地震が発生し、ネパール政府から要請を受けたことから、我が国政府は、同月26日から、同年5月9日にかけての14日間、警察職員23人及び警備犬4頭を含む国際緊急援助隊・救助チームを派遣した。同チームは、建物倒壊現場での被災者の捜索等に従事した。



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