第6章 公安の維持と災害対策 

3 右翼の動向と対策

(1)右翼の動向

① 批判活動の展開

右翼は、平成25年中、日本政府の政策、領土問題等を捉え、活発な街頭宣伝活動等に取り組んだ。

 
右翼の抗議行動(8月、都内)

右翼の抗議行動(8月、都内)


中国をめぐっては、同年1月、東シナ海の公海上において、中国海軍艦艇が海上自衛隊護衛艦に対し、火器管制レーダーを照射したことや、中国公船が尖閣諸島周辺の領海に侵入していることを捉えた活動を行った。北朝鮮をめぐっては、同年2月、北朝鮮が核実験を強行したことや、同年5月、朝鮮半島東岸から日本海に向けて短距離ミサイルを発射したことを捉えた活動を、韓国をめぐっては、朴槿恵(パククネ)韓国大統領の竹島問題、歴史認識問題等に関する発言や、同年8月、韓国国会議員が竹島に上陸したことを捉えた活動を、ロシアをめぐっては、北方領土問題等を捉えた活動をそれぞれ行い、関係国、日本政府等を批判した。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-10のとおりである。

 
図表6-10 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成25年)
図表6-10 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成25年)
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② 右翼関係事件の状況

25年中は、オウム真理教主流派(「Aleph(アレフ)」)の拠点施設(足立入谷施設)に街頭宣伝車で突入し、同施設の建物等を損壊した「テロ、ゲリラ」事件(11月、警視庁)が発生し、右翼団体代表1人を逮捕した。

近年の右翼による違法行為の検挙状況の推移は、図表6-11のとおりである。

 
図表6-11 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成21~25年)
図表6-11 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成21~25年)
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このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況、右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は図表6-12のとおりである。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件

 
図表6-12 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成25年)
図表6-12 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成25年)
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(2)右翼対策の推進

① テロ等重大事件の未然防止に向けた違法行為の検挙

警察では、右翼によるテロ等重大事件の未然防止を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

事例

政治団体代表(57)らは、不正の利益を得る目的で、有料衛星放送の契約者以外の者が同放送を視聴することができるように電磁的記録が改変されたB-CASカードを他人に譲渡した。平成25年5月末までに不正競争防止法違反で3人を逮捕した(宮城)。

② 街頭宣伝車対策の推進

警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。

 
図表6-13 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成25年)
図表6-13 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成25年)
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街頭宣伝活動に対する取締り状況

街頭宣伝活動に対する取締り状況


コラム③ 右派系市民グループの動向

平成25年中は、極端な民族主義・排外主義的主張に基づく活動を行っているいわゆる右派系市民グループが、韓国や北朝鮮との問題等を捉えた徒歩デモや街頭宣伝活動等に各地で取り組んだ。

また、こうした右派系市民グループの活動に対して抗議する反対勢力が出現し、一部の参加者の過激な言動を、いわゆるヘイトスピーチであると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

双方の間で対立が激化する中で、トラブルが多発するようになり、同年6月に東京都内で行われたデモに際しては、右派系市民グループ4人及び反対勢力4人の合計8人が暴行事件で逮捕されるなど、その対立は、刑事事件にまで発展している。

警察では、必要な警備を実施するとともに違法行為を認知した際には厳正に対処していくこととしている。


 第3節 公安情勢と対策

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