特集I:サイバー空間の脅威への対処 特集II:子供・女性・高齢者と警察活動

特集I:サイバー空間の脅威への対処
特集II:子供・女性・高齢者と警察活動

特集に当たって

我が国の治安情勢は、刑法犯認知件数についてみると、平成24年中は138万2,121件と、昭和55年以降32年ぶりに140万件を下回り、戦後最多を記録した平成14年の285万3,739件の半数以下に減少するに至り、一定の改善がみられます。しかしながら、世論調査等からは、国民は依然として治安に対する不安を感じていることがうかがえます。

その背景には、児童虐待やストーカー事案、配偶者からの暴力事案が増加傾向にあるほか、特殊詐欺の被害総額が多額に上るなど、子供や女性、高齢者が被害者となる犯罪が多発していることが挙げられます。

また、サイバー空間に目を向けると、サイバー犯罪が多発し、サイバー攻撃が相次ぐなど、治安上の脅威が深刻化しています。

そして、これらの犯罪の多発や脅威の高まりが、刑法犯認知件数の減少にもかかわらず、いまだ国民が治安への不安を感じることにつながっていると考えられます。そこで、本年の警察白書では、こうした情勢を踏まえ、2つの特集を組むこととしました。

第一は「サイバー空間の脅威への対処」です。インターネットバンキングやコミュニティサイト等の個人が利用するサービスから、金融や公共輸送等を始めとする重要なインフラや政府機関等の国の根幹を支える重要なシステムに至るまで、現代の国民生活や経済活動は、今や、サイバー空間を抜きに語ることができません。しかしながら、インターネットバンキングにおける不正送金事案等のサイバー犯罪が多発しているほか、ウェブサイトの改ざん等の政府機関等へのサイバー攻撃が相次いで発生するなど、サイバー空間の脅威は我が国の治安や安全保障を脅かしかねない課題となっており、サイバー空間は、現実空間と並んで、警察が安全・安心を確保すべき新たな領域となっています。

そこで、本年の警察白書では、「サイバー空間の脅威への対処」を特集Iとして取り上げ、第1節で、現下のサイバー空間の脅威の情勢を概観し、第2節でこれに対する警察等の取組について記述した上で、第3節で今後の取組を示しました。

第二は「子供・女性・高齢者と警察活動」です。既に述べたとおり、刑法犯認知件数は総じて減少傾向にありますが、個別の犯罪形態に目を向けると、児童虐待、配偶者からの暴力、高齢者虐待等の家庭内等で発生する事案が増加傾向にあります。また、滋賀県大津市における中学男子生徒に対するいじめ事件や、神奈川県逗子市における恋愛感情等のもつれに起因する殺人事件等が社会的に大きな注目を集めたほか、高齢者を中心として特殊詐欺による多額の被害が発生しています。子供・女性・高齢者が被害者となるこのような犯罪への対処は、国民の身近な日常生活の安全・安心を確保する上で重要となっています。

そこで、「子供・女性・高齢者と警察活動」を特集IIとして取り上げ、第1節で国民の治安に対する意識を、第2節から第4節で子供・女性・高齢者それぞれの安全・安心の確保に向けた警察等の取組を記述した上で、第5節で子供・女性・高齢者を守るための総合的な取組を紹介します。

現実空間はもちろんのこと、サイバー空間においても、安全・安心の確保は独り警察の力のみによって実現できるものではなく、社会全体で取り組む必要があります。今回の2つの特集を通じて、警察の取組に対して今後とも御理解と御協力をいただくとともに、国民の皆様が社会全体の治安確保に向けた対策の在り方について考えていただく一助となれば幸いです。



前の項目に戻る     次の項目に進む