第5章 公安の維持と災害対策

2 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

暴力革命による共産主義社会の実現を目指している極左暴力集団は、平成24年中も、組織の維持・拡大をもくろみ、暴力性・党派性を隠して大衆運動や労働運動に取り組んだ。

革マル派(注1)は、福島第一原子力発電所事故以降の反原発運動の盛り上がりを組織拡大の好機と捉え、「原発・核開発阻止」を主張した独自の取組を行うとともに、市民団体主催の取組に介入する形態で反原発運動に取り組んだ。このほか、既存の労働組合の執行部を批判して同調者の獲得を図った。また、革マル派が相当浸透しているとみられる全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)は、JR東労組の組合員らによる組合脱退及び退職強要事件(注2)について、同年2月に最高裁が上告を棄却し有罪判決が確定した後も、同事件を「国策弾圧」、「えん罪事件」と主張し続けている。

中核派(党中央)(注3)は、労働運動を通じて組織拡大を図る「階級的労働運動路線」を堅持しつつ、23年8月に結成した「すべての原発いますぐなくそう!全国会議」(な全)を中心に、全国で反原発運動に取り組んだ。一方、19年11月に党中央と分裂した関西地方委員会(関西反中央派)は、市民団体等が主催する反原発、オスプレイ配備反対等に関する集会やデモ等に積極的に参加した。

革労協主流派(注4)は、成田闘争と福岡での組織的犯罪処罰法違反事件等の公判闘争を重点に取り組んだ。また、革労協反主流派(注5)は、自衛隊の海外派遣やオスプレイ配備等を捉えて反戦闘争に取り組むとともに、大飯原子力発電所3号機及び4号機の再稼働に反対して現地でデモに取り組んだ。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。
注2:平成13年1月21日から同年6月30日頃にかけて、JR東労組の組合員である被疑者7人が、東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)大宮支社浦和電車区事務所等において、他の労働組合の組合員と行動を共にするなどしたJR東労組の組合員を集団で脅迫し、同組合から脱退させ、さらに、JR東日本から退職させた強要事件
注3:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。
注4:正式名称を革命的労働者協会(社会党社青同解放派)という。
注5:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。
 
反原発運動に取り組む極左暴力集団
反原発運動に取り組む極左暴力集団

(2)極左暴力集団対策の推進

警察では、極左暴力集団に対する事件捜査及び非公然アジト発見に向けたマンション、アパート等に対するローラーを推進している。

平成24年中には、中核派(党中央)の非公然アジトを摘発したほか、大飯原子力発電所3号機及び4号機の再稼働に対する反対行動の際に、警備員に発火した発煙筒を押し当てるなどした活動家を傷害罪等で逮捕するなど、極左暴力集団の活動家ら合計31人を検挙した。

また、極左暴力集団対策への国民の理解と協力を得るため、ポスターを始めとする各種広報媒体を活用した広報活動を推進するとともに、関係機関と連携するなどして組織の維持・拡大を防ぐための対策を推進している。

 
中核派(党中央)の非公然アジトとして利用されていたマンション
中核派(党中央)の非公然アジトとして利用されていたマンション


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