第5章 公安の維持と災害対策

2 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出

(1)大量破壊兵器関連物資等の不拡散についての国際的な取組

平成24年の核セキュリティ・サミットでは、テロリストに核物質が渡ることを防ぐための国際協力の促進等を盛り込んだ共同声明「ソウル・コミュニケ」が採択された。同声明では、「全ての脆弱な核物質の管理を4年以内に徹底する」とした前回の同サミットでの合意事項の達成に向け、25年末までに、核兵器転用が可能である高濃縮ウランの使用を最大限減らすための具体的措置を提示するよう各国に奨励した。

警察では、大量破壊兵器関連物資等の拡散が国際社会における安全保障上の重大な脅威となっていることを踏まえ、各国が主催するPSI(注)阻止訓練に都道府県警察のNBCテロ対応専門部隊を派遣するなど、国際的な取組にも積極的に参加している。

注:Proliferation Security Initiative(拡散に対する安全保障構想)の略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器関連物資等の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転及び輸送の阻止のための措置を検討・実践する取組のことで、102か国(平成24年12月末日現在)がPSIの基本原則や目的に対する支持を表明している。
 
PSI阻止訓練における放射性物資を積載した航空機に対する貨物検査
PSI阻止訓練における放射性物資を積載した航空機に対する貨物検査

(2)不正輸出に対する取締り

警察では、我が国からの大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する積極的な取締りを推進しており、これまでに、不正輸出事件を29件(平成24年12月末日現在)検挙している(うち24年中は1件)。

また、これまで検挙した事件において、第三国を経由した迂回輸出や摘発逃れを目的とした輸出名義人の偽装等の実態が確認されるなど、犯罪の手口が今後更に悪質・巧妙化していくことが懸念されるところ、警察では、国内外の情勢を的確に把握・分析するとともに、国内関係機関との緊密な連携、外国治安機関との情報交換等を通じて、大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する取締りを更に徹底することとしている。

事例

中古半導体製造装置販売会社役員の男(53)は、軍用品の製造等に転用できるものとして、外為法で提供が規制されている技術である半導体製造装置用のプログラムを、経済産業大臣の許可を受けないで、22年9月、同年10月及び23年1月に中国企業等に不正に提供したことから、24年7月、同役員を外為法違反(無許可役務取引)で検挙した(神奈川)。



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