第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

4 構造的な不正事案

(1)政治・行政をめぐる不正事案

国や地方公共団体の幹部や職員等による贈収賄事件、公契約関係競売等妨害事件、買収等の公職選挙法違反事件等の政治・行政をめぐる不正が相次いで表面化している。

警察では、不正の実態に応じて様々な刑罰法令を適用するなどして、事案の解明を進めている。

第46回衆議院議員総選挙(平成24年12月16日施行)における選挙期日後30日現在(25年1月15日現在)の公職選挙法違反の検挙件数は78件、検挙人員は99人(うち逮捕者33人)と、前回の第45回衆議院議員総選挙期日後30日現在の時点に比べ、検挙件数は116件(59.8%)、検挙人員は309人(75.7%)減少した。

 
図2-22 政治・行政をめぐる不正事案の検挙事件数の推移(平成15~24年)
図2-22 政治・行政をめぐる不正事案の検挙事件数の推移(平成15~24年)
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事例①

横浜公共職業安定所の期間業務職員(47)は、24年3月下旬頃から同年5月下旬頃までの間、多数回にわたり、情報サービス会社役員から、雇用保険被保険者の資格取得年月日等の情報を漏えいするよう依頼を受け、漏えいした謝礼として、現金合計96万円を収受した。同年6月、同職員を加重収賄罪で逮捕した(愛知)。

事例②

元農林水産省総合食料局係長(45)は、21年12月下旬頃から22年5月下旬頃までの間、数回にわたり、野菜販売会社役員に対して、同省の補助金の交付に関して有利な取り計らいをしたことの謝礼等として、現金合計210万円を無利息、無担保、無期限で借り受けて金融の利益を得た。24年11月、同元係長を収賄罪で逮捕した(神奈川)。

事例③

第46回衆議院議員総選挙の際、選挙運動員(41)は、24年12月中旬頃、他の選挙運動員3名に対し、投票を呼び掛けるなどの選挙運動をしたことの報酬として、それぞれ現金約20万円を供与した。同年12月、現金を供与した選挙運動員を公職選挙法違反(買収)で逮捕した(大阪)。

(2)経済をめぐる不正事案

最近の経済状況を背景として、金融機関からの各種融資をめぐる詐欺事犯、証券市場を舞台とした証券の発行や取引に関連した事犯のほか、企業の内部統制の不備に起因する事犯や国の補助金等の不正受給事犯が後を絶たない状況にある。

警察では、これら金融・不良債権関連事犯、証券取引事犯、企業の経営等に係る違法事犯、その他国民の経済活動の健全性又は信頼性に重大な影響を及ぼすおそれのある犯罪の取締りを推進している。

また、このような犯罪の捜査では、対象となる企業等の財務実態の解明が不可欠であるとともに、年々、犯行手口が巧妙化していることから、都道府県警察において、公認会計士や税理士等の専門的な知識を有する者を財務捜査官として採用し、その高度な技能を活用して事案の早期解明を図っている。

 
図2-23 金融・不良債権関連事犯の検挙事件数の推移(平成15~24年)
図2-23 金融・不良債権関連事犯の検挙事件数の推移(平成15~24年)
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事例①

東証一部上場の光学機器メーカーの元代表取締役(70)らは、19年6月から23年6月にかけて、関東財務局長に対し、同社の各連結会計年度における連結純資産額について、損失を抱えた金融商品を簿外処理するとともに架空ののれん代を計上するなどの方法により、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。24年2月、東京地方検察庁と共に、同元代表取締役ら7人を金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)等で逮捕した(警視庁)。

事例②

投資顧問会社の代表取締役(60)らは、真実は、同社が実質的に運用するファンドの純資産額が過小になっていたにもかかわらず、そのことを秘し、複数の年金基金の担当者に対し、虚偽の運用実績等を記載した資料を示しつつ、同ファンドの買い付けを勧誘するなどして、21年4月から24年1月にかけて、同ファンドの買い付け代金として現金合計約248億円をだまし取った。同年6月、同代表取締役ら4人を詐欺罪で逮捕した(警視庁)。

事例③

自動車部品販売会社の代表取締役(72)らは、真実は、同社が債務超過の状態にあり、融資金を約定どおり返済する意思も能力もないにもかかわらず、金融機関等に対し、虚偽の財務内容を記載した確定申告書等を提出して融資を申し込み、融資金を確実に回収できると信用させ、20年2月から23年4月にかけて、融資金名下に現金合計約20億円をだまし取った。24年8月、同代表取締役ら2人を詐欺罪で逮捕した(宮崎)。



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