3 振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺
(1)特殊詐欺の現状
特殊詐欺とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく欺もうし、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝も含む。)の総称であり、その代表的なものが振り込め詐欺(オレオレ詐欺(注1)、架空請求詐欺(注2)、融資保証金詐欺(注3)及び還付金等詐欺(注4))である。
平成24年中の特殊詐欺の認知件数は8,693件、被害総額は約364億4,000万円と、いずれも前年より増加した。中でも、金融商品等取引名目等の特殊詐欺が前年に比べ大幅に増加し、多額の被害が発生したことがその大きな要因となっている。振り込め詐欺についても、1件当たりの被害額が大きい、現金を直接受け取る手口のオレオレ詐欺の多発等により、被害総額が増加した。
注2:架空の事実を口実に金品を請求する文書を送付して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
注3:融資を受けるための保証金の名目で、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺
注4:市区町村の職員等を装い、医療費の還付等に必要な手続を装ってATMを操作させて口座間送金により振り込ませる手口による電子計算機使用詐欺(平成18年6月に初めて認知された。)
コラム① 金融商品等取引名目の特殊詐欺
金融商品等取引名目の特殊詐欺は、振り込め詐欺以外の特殊詐欺のうち8割以上を占めている。これは、実際には無価値又は対価ほどの価値がない未公開株、社債等の有価証券や外国通貨等について電話やダイレクトメール等により虚偽の情報を提供し、その購入名目等で金銭をだまし取る手口で行われるものであり、1件当たりの被害額が平均約1,000万円と大きな点に特徴がある。
(2)特殊詐欺を撲滅するための取組
警察では、依然として大きな被害が発生しているこれらの特殊詐欺を撲滅するための取組を推進している。
① 警察の総力を挙げた取締活動の推進
都道府県警察では、現に犯行を繰り返す特殊詐欺の犯行グループに重点を指向し、部門横断的な集中取締体制の構築等により、検挙の徹底を図っている。また、警察庁では、集約した情報を都道府県警察に還元し、戦略的な取締活動を推進するとともに、都道府県警察間の合同・共同捜査を積極的に推進している。
また、架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等が特殊詐欺に利用されていることから、これらの流通を遮断し、犯行グループの手に渡らないようにするため、預貯金口座を売買するなどの特殊詐欺を助長する行為についても、関係法令を駆使して取締りに当たっている。さらに、外国に渡航した日本人がその国の犯行拠点から日本国内の被害者に電話をかけているケースがあることから、外国治安機関と緊密な連携を図っている。
② 国民から寄せられた情報による先制的抑止措置の推進
警察では、110番通報のほか、警察相談専用電話(全国統一電話番号「#(シャープ)9110」)、専用メールアドレス等様々な窓口を通じて、特殊詐欺に関する相談や情報を幅広く受け付けている。また、国民から寄せられた情報を活用し、携帯電話事業者に対する犯行に利用された携帯電話の契約者確認の求め、金融機関に対する振込先指定口座の凍結依頼等による犯行ツールの無力化等を実施するほか、「だまされた振り作戦(注)」による犯人の検挙を推進している。
広報啓発ポスター
③ 官民一体となった予防活動の推進
ア 広報啓発活動の推進
特殊詐欺の被害を防止するためには、国民の犯罪に対する「抵抗力(注)」を高めていくことが重要である。このため、警察では、様々な機会を通じて、その手口や被害に遭わないための注意点等の情報を積極的に国民に対して提供しているほか、戸別訪問等の直接的・個別的な働き掛けを推進している。
イ 関係機関・団体等との連携
振り込め詐欺に加え、金融商品等取引名目の特殊詐欺が全国的に多発し、多額の被害が発生している。このため、警察では、金融機関や日本証券業協会等の関係機関・団体等との連携を強化し、被害防止キャンペーンの実施等、官民一体となった予防活動を推進している。
島根県警察による日本証券業協会との被害防止キャンペーン