第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

1 捜査力の強化

(1)初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等

 事件発生時には、迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、又は現場の証拠物や目撃者の証言等を確保することが重要である。
 警察では、機動力を生かした捜査活動を行うため、都道府県警察本部に機動捜査隊を設置し、事件発生時に現場や関係箇所に急行して犯人確保等を行っているほか、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等を編成し、現場鑑識活動を強化するとともに、関連技術の研究開発や資機材の開発・整備を推進している。
 
図2-29 初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等
図2-29 初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等

コラム⑦ 分析捜査班(モバイルチーム)の発足


 警視庁では、初動捜査段階で、これまで以上に高度な分析を迅速に行うため、平成24年4月、捜査支援分析センター内に分析捜査班を発足させた。同捜査班は、各種事件の現場や発生警察署に出動して犯罪関連情報の集約と多角的な分析等を行い、被疑者検挙に結びつく情報を提供することとしている。

(2)法務省との情報の共有

 警察庁と法務省は、子ども対象・暴力的性犯罪の出所者、凶悪重大犯罪等の出所者、所在不明の仮釈放者及び保護観察付執行猶予者等による再犯の防止等を図るため、両省庁間で所要の情報を共有し、連携を図る仕組みを構築している。警察では、子ども対象・暴力的性犯罪の出所者について、平成17年6月の運用開始から23年末までに966人分、凶悪重大犯罪等の出所者について、17年9月の運用開始から23年末までに約17万3千人分の出所情報の提供を法務省から受けている。
 
図2-30 警察庁と法務省における情報の共有と連携
図2-30 警察庁と法務省における情報の共有と連携

(3)国民からの情報提供の促進

 警察では、犯罪捜査に不可欠な国民の理解と協力を得るため、国民に対し、都道府県警察のウェブサイトを活用して情報提供を呼び掛けるほか、様々な媒体を活用して、聞き込み捜査に対する協力、事件に関する情報の提供等を広く呼び掛けている。また、必要に応じ、被疑者の発見・検挙や犯罪の再発防止のため、被疑者の氏名等を広く一般に公表して捜査を行う公開捜査を行っている。
 さらに、警察庁では、平成19年度から、国民からの情報提供を促進し、重要犯罪等の検挙を図ることを目的として、捜査特別報奨金制度(公的懸賞金制度)を導入し、警察庁ウェブサイト(http://www.npa.go.jp)等で対象となる事件等について広報している。
 
警察庁ウェブサイト
警察庁ウェブサイト

(4)検視体制の強化

 平成23年中に警察が取り扱った死体数は約17万4,000体であり、過去10年間で約1.4倍に増加している。
 
図2-31 死体取扱数の推移(平成14~23年)
図2-31 死体取扱数の推移(平成14~23年)
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 警察においては、死体取扱数の急増に的確に対応し、適正な検視業務を推進するため、検視官(注)及びその補助者の増員、検視業務に携わる警察官に対する教育訓練の充実、資機材の整備による検視体制の強化を推進している。

注:原則として、刑事部門における10年以上の捜査経験又は捜査幹部として4年以上の強行犯捜査等の経験を有する警視の階級にある警察官で、警察大学校における法医専門研究科を修了した者から任用される検視の専門家であり、全国で304人(平成24年4月1日現在)配置されている。

コラム⑧ 犯罪死の見逃し防止への取組


 我が国の死因究明制度は、現状では国際的に見て必ずしも十分なものとは言い難く、近年においても犯罪死を見逃したケースも見受けられた。このため、警察庁では、法医学者、刑事法学者等の有識者から成る研究会を設置し、警察庁職員を海外に派遣するなどして、諸外国の死因究明制度について調査・研究を行うとともに、在るべき死因究明制度について検討を行い、その結果を23年4月、提言として取りまとめて公表した。
 また、第180回国会において、死因究明等の推進に関する施策について横断的かつ包括的に検討・実施することを目的とした死因究明等の推進に関する法律と、警察等が取り扱う死体について、警察署長が
 ① 体液又は尿を採取して行う薬毒物検査や死亡時画像診断等の検査を行うことができること
 ② 遺族に必要性を説明した上で、その承諾を得ることなく、医師に解剖を行わせることができること
 ③ 身元を明らかにするため必要があるときに、血液、歯牙、骨等の組織の一部の採取
等を行うことができること等を内容とする警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律が24年6月に成立した。
 
図2-32 警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律(概要)
図2-32 警察が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律(概要)

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

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