第4章 公安の維持と災害対策 

2 サイバーテロ対策

 情報通信技術(IT)が幅広く用いられている現代社会においては、重要インフラ(注1)の基幹システムに対してサイバー攻撃が実行された場合、国民生活や社会経済活動に甚大な支障が生じるおそれがある。平成21年7月には、米国・韓国の政府機関等に対するサイバー攻撃が発生し、我が国所在のサーバが攻撃に利用されていたことが判明するなど、サイバーテロ(注2)の脅威はますます現実のものとなっている。警察では、サイバーテロの予兆等をできる限り早期に把握し、被害の未然防止及び拡大防止を図るため、継続的な対策を実施している。

注1:情報通信、金融、航空、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス(地方公共団体を含む。)、医療、水道及び物流の各分野における社会基盤
 2:重要インフラの基幹システムに対する電子的攻撃又は重要インフラの基幹システムにおける重大な障害で電子的攻撃による可能性が高いもの


(1)サイバーテロ対策に係る体制
 警察庁では、警備、生活安全及び情報通信の部門横断的なサイバーテロ対策推進室を設置して、サイバーテロ対策を推進している。
 また、警察庁には、サイバーテロ対策の技術的中核としてサイバーフォースセンターが設置されており、DoS攻撃(注3)の発生やコンピュータ・ウイルスに感染したコンピュータの動向等を早期に把握するため、24時間体制でリアルタイム検知ネットワークシステム(注4)を運用している。同センターは、サイバーテロ発生時の緊急対処の技術支援の拠点として機能しており、各管区警察局等に設置されたサイバーフォースを通じて都道府県警察への支援に当たっている。
 都道府県警察には、同様に部門横断的なサイバーテロ対策プロジェクトが設置されており、サイバーフォースの技術支援を受けつつ、官民連携した諸対策を推進している。

注3:Denial of Service攻撃の略。特定のコンピュータに対し、大量のアクセスを繰り返し行い、コンピュータのサービス提供を不可能にするサイバー攻撃
 4:インターネットとの接続点に設置した警察のセンサーからの情報を集約・分析するためのシステム

 
図4-17 サイバーフォースセンターの機能
図4-17 サイバーフォースセンターの機能

(2)サイバーテロ対策に係る取組み

〔1〕 重要インフラ事業者等との連携強化
 サイバーテロ対策プロジェクトでは、重要インフラ事業者等への個別訪問を行い、捜査に対する協力等の要請を行うとともに、サイバーテロ対策協議会、サイバーテロ対策セミナー等を開催し、情報セキュリティに関する情報提供や意見交換等を行っているほか、重要インフラ事業者等と事案発生を想定した共同訓練を実施し、緊急対処能力の向上を図るなど、官民連携の強化に努めている。
 
重要インフラ事業者等との共同訓練
重要インフラ事業者等との共同訓練

〔2〕 インターネット利用者への情報提供
 警察庁では、警察庁セキュリティポータルサイト「@police」(http://www.cyberpolice.go.jp/)を開設し、サイバー攻撃等の発生状況等を一定時間ごとに表示する「インターネット定点観測」、各種プログラムのぜい弱性に関する注意喚起情報等を公開している。
 
@police
@police

 第4節 災害等への対処と警備実施

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