第4章 公安の維持と災害対策 

第11節 自然災害等への対処

(1)自然災害の発生状況と警察活動
 平成20年中は、地震、台風、大雨、強風及び高潮により、死者・行方不明者51人、負傷者851人等の被害が発生した。16年から20年にかけての自然災害による主な被害状況は、表4-6のとおりである。
 
表4-6 自然災害による主な被害状況(平成16~20年。21年4月30日現在)
表4-6 自然災害による主な被害状況(平成16~20年。21年4月30日現在)
Excel形式のファイルはこちら

〔1〕 地震
 20年中は、6月の平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震、7月の岩手県沿岸北部を震源とする地震等が発生し、死者・行方不明者24人、負傷者648人等の被害が発生した(21年4月30日現在)。
 20年中の主な地震の概要及び警察がとった措置は、次のとおりである。

ア 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震
 20年6月14日午前8時43分ころ、岩手県内陸南部を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生し、同県奥州市、宮城県栗原市で震度6強、同県大崎市で震度6弱を観測した。
 この地震により、死者13人、行方不明者10人、負傷者427人等の被害が発生した(21年4月30日現在)。
 
岩手・宮城内陸地震に伴い被災地に向かう広域緊急援助隊
写真 岩手・宮城内陸地震に伴い被災地に向かう広域緊急援助隊

イ 岩手県沿岸北部を震源とする地震
 20年7月24日午前0時26分ころ、岩手県沿岸北部を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生し、同県野田村、青森県八戸市・五戸町・階上町で震度6弱(注1)を観測した。
 この地震により、死者1人、負傷者210人等の被害が発生した(21年4月30日現在)。

注1:岩手県洋野町大野の震度計(岩手県設置)で震度6強を観測したが、計測震度の品質管理上の問題が発生したため、気象庁は、当該震度計で観測された震度は不明として取り扱うこととした。

 
岩手・宮城内陸地震に伴い被災者の救出救助に当たる広域緊急援助隊
写真 岩手・宮城内陸地震に伴い被災者の救出救助に当たる広域緊急援助隊

ウ 警察がとった措置
 関係県警察では、本部長を長とする災害警備本部等を設置し、被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の活動を実施した。警察庁では、警備局長を長とする災害警備本部を設置し、必要な措置を講じた。また、県公安委員会からの援助の要求を受け、他の都道県警察では、広域緊急援助隊やヘリコプターの派遣等の援助を行った(注2)

注2:平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震では、北海道警察、青森・山形・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川・新潟・山梨・長野・静岡・愛知の各県警察及び警視庁が、8日間で延べ約1,430人の広域緊急援助隊を、北海道警察、青森・秋田・山形・千葉・神奈川・新潟・山梨の各県警察及び警視庁が、17日間で延べ約60機のヘリコプターを、それぞれ派遣した。また、岩手県沿岸北部を震源とする地震では、宮城・秋田・山形・福島の各県警察が、約160人の広域緊急援助隊を、北海道警察、宮城・千葉・神奈川・新潟の各県警察及び警視庁が、2日間で延べ約10機のヘリコプターを、それぞれ派遣した。


〔2〕 大雨及び台風
 20年中は、7月28日及び29日に、北陸地方と近畿地方において、多いところで1時間に80ミリ前後の大雨を記録したほか、8月26日から31日にかけては、九州南部に接近し日本の南海上を進んだ低気圧の影響で、東海、関東、中国及び東北地方等で記録的な豪雨(平成20年8月末豪雨)となるなど、日本各地で短時間かつ局地的な大雨を記録した。これらの大雨及び日本に接近した2個の台風により死者・行方不明者20人、負傷者49人等の被害が発生した(21年4月30日現在)。
 関係都道府県警察では、大雨等の発生に際し、災害警備本部等を設置し、被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の活動を実施した。また、警察庁及び関係管区警察局では、災害警備連絡室等を設置し、関連情報の収集や関係機関との連絡調整を行うなど必要な措置を講じた。
 
平成20年8月末豪雨に伴い行方不明者の捜索に当たる機動隊
写真 平成20年8月末豪雨に伴い行方不明者の捜索に当たる機動隊

(2)新型インフルエンザ対策
 新型インフルエンザへの対応は、国内外における緊急の課題となっている。
 政府は、平成17年12月に「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定するなど、新型インフルエンザ対策を進めており、警察庁においても、20年4月に「警察庁新型インフルエンザ対策委員会」を設置し、同年9月に「警察庁新型インフルエンザ対策行動計画」を策定した(21年3月改定)。
 また、21年4月以降、新型インフルエンザ(A/H1N1)が国内外で発生したことに伴い、警察では、同行動計画及び各都道府県警察において策定した新型インフルエンザ対策行動計画に即して、関係機関と連携し、国際空港等における警戒活動の強化等の水際対策の支援のほか、必要に応じ、医療機関等における警戒活動等の医療活動の支援及び混乱に乗じた犯罪の取締り等の社会秩序の維持を始めとする諸対策を実施している。
 
図4-16 「警察庁新型インフルエンザ対策行動計画」の概要
図4-16 「警察庁新型インフルエンザ対策行動計画」の概要

 第11節 自然災害等への対処

前の項目に戻る     次の項目に進む