第4章 公安の維持と災害対策 

第7節 右翼の動向と対策

(1)右翼の動向
〔1〕 批判活動の展開
 右翼は、平成20年中、領土問題、歴史認識問題等をとらえ、批判活動を執拗に行った。
 中国をめぐっては、北京2008オリンピックの開催や中国製冷凍ギョーザによる薬物中毒事案等をとらえ、北朝鮮をめぐっては、日本人拉致容疑事案等をとらえ、韓国をめぐっては、竹島問題等をとらえ、ロシアをめぐっては、北方領土問題等をとらえ、それぞれ関係国、日本政府等を批判した。
 右翼が上記の批判活動に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、表4-4のとおりである。
 
表4-4 右翼による批判活動に伴う動員数(平成20年)
表4-4 右翼による批判活動に伴う動員数(平成20年)
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〔2〕 右翼関係事件の傾向
 20年中は、2件の「テロ、ゲリラ」事件が発生した。
 
表4-5 「テロ、ゲリラ」事件の概要等(平成20年)
表4-5 「テロ、ゲリラ」事件の概要等(平成20年)
 
図4-12  「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況の推移(平成11~20年)
図4-12 「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況の推移(平成11~20年)
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図4-13 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成16~20年)
図4-13 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成16~20年)
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 20年中の右翼による違法行為(右翼関係事件)の検挙状況は、図4-13のとおりである。このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況は、次のとおりである。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件


〈右翼運動に伴う事件の検挙状況〉
  検挙件数・・・130件(全検挙件数の7.7%) 検挙人員・・・212人(全検挙人員の11.4%)
 また、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況は、次のとおりであり、道路交通法違反を除く全検挙件数の44.8%を占めている。
〈資金獲得を目的とした事件の検挙状況〉
  検挙件数・・・339件(道路交通法違反を除く全検挙件数の44.8%)
  検挙人員・・・444人(道路交通法違反を除く全検挙人員の48.4%)
 さらに、右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は、次のとおりであり、銃器の多くを暴力団から入手しているものとみられる。

〈右翼及びその周辺者からの銃器押収状況〉
  20年中の押収・・・7丁(前年比9丁(56.3%)減少)
  過去5年間の押収・・・85丁
  (暴力団と関係を有する者からの押収・・・49丁(57.6%))

 
押収した拳銃
写真 押収した拳銃

(2)右翼対策の推進
〔1〕 「テロ、ゲリラ」事件の未然防止に向けた違法行為の検挙
 警察では、右翼による「テロ、ゲリラ」事件の未然防止を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

事例1
 政治団体代表(59)らは、平成19年10月、街頭宣伝車で町役場に押し掛け、同町内の廃棄物の収集及び運搬を請け負うなどしていた業者が不法に産業廃棄物を保管しているとして、同業者の許可の取消し等を要求したが、同町が誠実な対応をしなかったなどとして、再度、町役場に押し掛け、団体の威力を示して同町職員を脅迫した。20年1月、3人を暴力行為等処罰ニ関スル法律違反(集団的脅迫)で逮捕した。
 さらに、同団体幹部(46)は、けん銃1丁及び実包を自宅に隠し持っていたことから、同月、銃砲刀剣類所持等取締法違反(けん銃所持等)で再逮捕した(群馬)。

事例2
 政治団体幹部(61)は、実父が約30年前に家出し、失踪状態になっているにもかかわらず、家出人捜索願等の届出をせずに、実父との同居を装い、虚偽の現況届を社会保険庁に郵送するなどして、実父の老齢厚生年金等を銀行から不正に引き出してだまし取った。20年10月、詐欺罪で逮捕した(埼玉)。
 
事例2 老齢厚生年金等の不正取得

〔2〕 街頭宣伝車対策の推進
 警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。
〈20年中の取締り状況〉
  暴騒音条例に基づく停止・中止命令・・・・・・ 96件
                勧告・・・・・・152件
                立入・・・・・・ 16件
  恐喝罪、名誉毀損罪、暴騒音条例違反等による検挙
                ・・・・・・37件、62人
 
街頭宣伝車の取締り状況
写真 街頭宣伝車の取締り

 第7節 右翼の動向と対策

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