第4章 公安の維持と災害対策 

第8節 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向
 暴力革命による共産主義社会の実現を目指している極左暴力集団は、平成20年中も、周囲に警戒心を抱かせないよう暴力性を隠しながら、労働運動や大衆運動に取り組み、組織の維持・拡大を企図した。

〔1〕 革マル派
 革マル派(注1)は、機関紙「解放」に「許すな!今日版貧窮化」と題する非正規雇用問題に関する記事を掲載したり、主要な労働組合が主催する定期大会等の会場周辺でビラを配ったりするなどの労働運動や、北海道洞爺湖サミットへの反対行動を行うなどの大衆運動に取り組み、基幹産業の労働組合等各界各層への浸透を図った。
 特に、JR総連(注2)及びJR東労組(注3)には相当浸透しているとみられる(注4)
 また、東京都、千葉県及び神奈川県内のマンション等に設定された革マル派の非公然アジト4か所の一斉摘発(注5)の結果、対立する組織・個人に対する調査活動を継続している革マル派の実態が明らかになった。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。
 2:正式名称を全日本鉄道労働組合総連合会という。
 3:正式名称を東日本旅客鉄道労働組合という。
 4:平成13年1月21日から同年6月30日ころにかけて、JR東労組の組合員である被疑者7人が、東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)大宮支社浦和電車区事務所等において、他の労働組合の組合員と行動を共にするなどしたJR東労組の組合員を集団で脅迫し、同組合から脱退させ、さらに、JR東日本から退職させた強要事件があり、同被疑者7人の中には、革マル派の活動家とみられる者がいる。
 5:平成20年2月、神奈川県警察及び警視庁が、革マル派の活動家(42)による有印私文書偽造等事件に関して実施

 
図4-14 革マル派の非公然アジトとして利用されたマンション等
図4-14 革マル派の非公然アジトとして利用されたマンション等

〔2〕 中核派
 中核派(党中央)(注6)は、労働運動を通じての組織拡大を重視する「階級的労働運動路線」を進めており、20年11月、その成果と国際連帯をアピールすることを目的として、東京都で約2,550人を集めて「全国労働者総決起集会」を開催した。
 また、19年11月に中核派(党中央)と分裂した関西地方委員会は、機関紙等で中核派(党中央)の「打倒」を主張して、「革命的共産主義者同盟全国委員会の再建をめざす全国協議会」を結成するとともに、20年7月には独自の政治集会を開催し、他の極左暴力集団との共闘を模索しながら全国組織の結成に向け組織基盤の確立を図った。

注6:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。


〔3〕 革労協
 革労協主流派(注1)は、成田国際空港の暫定平行滑走路の北側延伸工事等に反発し、20年3月、成田国際空港に向けて、また、革労協反主流派(注2)は、在日米軍の再編をめぐる議論等をとらえた反戦闘争に取り組む中、同年9月、在日米海軍横須賀基地に向けて、それぞれ飛翔弾を発射する「テロ、ゲリラ」事件を引き起こした。また、両派は、日雇労働者を対象とした相談活動や炊き出しを行って同調者の獲得を図り、集会、デモ等にこれらの労働者を動員した。

注1:正式名称を革命的労働者協会(社会党社青同解放派)という。
 2:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。

 
「成田国際空港に向けた飛翔弾発射事件」の発射装置
写真 「成田国際空港に向けた飛翔弾発射事件」の発射装置

(2)極左暴力集団対策の推進
 警察では、極左暴力集団に対する事件捜査や非公然アジト発見に向けたマンション、アパート等に対するローラーを推進するとともに、ポスターを活用して、国民からの広範な情報提供を促すなど、各種対策を推進している。
 平成20年中には、革マル派の非公然アジト4か所を摘発するとともに、活動家及びその同調者合計109人を検挙した。
 
捜査への協力を呼び掛ける広報用ポスター
写真 捜査への協力を呼び掛ける広報用ポスター
写真 捜査への協力を呼び掛ける広報用ポスター

事例1
 革労協主流派の活動家(52)らは、同派の活動に協力していた身体障害者を介護したように装って虚偽の領収書を福岡県太宰府市に提出し、生活扶助の障害者加算他人介護料名下に同市から約190万円をだまし取った。20年5月、7人を組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(組織的な詐欺)で逮捕した(福岡)。
 
事例1 生活扶助の障害者加算他人介護料不正取得

事例2
 革マル派の活動家(63)らは、大阪府及び和歌山県に所在するホテルにおいて、宿泊者名簿に虚偽の氏名、住所等を記載し、同派の会議を開催するために客室を使用した。20年11月、12人を有印私文書偽造・同行使罪等で逮捕した(大阪、和歌山)。
 
事例2 有印私文書偽造・同行使罪等

 第8節 極左暴力集団の動向と対策

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