第6節 オウム真理教の動向と対策
(1)オウム真理教の動向
オウム真理教(以下「教団」という。)は、平成19年5月、主流派と上祐派に内部分裂した。
「アーレフ」を名乗る主流派は、危険な教義と厳格な修行を復活させるとともに、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調しており(注1)、20年5月には、綱領、活動規定等を改正し、名称を「Aleph(アレフ)」に改めるとともに松本の写真や教材の使用を制限する規定を削除するなど、原点回帰を進めている。
一方、「ひかりの輪」を名乗る上祐派は、
教団による事件を総括した文書や旧教材の廃棄状況を公表し、松本からの脱却が図られていると主張しているが、地下鉄サリン事件以前からの信者が多数を占めており、また、かつて松本が教団を維持するために別の宗教団体を作るよう指示し、その件は主に当時教団の幹部であった上祐史浩代表に任されていたことなどが判明しており(注2)、観察処分(注3)を免れるため、外形上、松本の影響力を払拭したかのように装って活動しているものとみられる。
図4-11 オウム真理教の拠点施設等
警察庁指定特別手配被疑者(年齢は平成20年11月30日現在)
(2)オウム真理教対策の推進
警察庁指定特別手配被疑者である平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は依然として逃走中であることから、警察では、広く国民の協力を得ながら追跡捜査を推進している。また、教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進し、平成20年中は、資金源確保等を目的とした私電磁的記録不正作出・同供用事件で1人を検挙するとともに、教団施設等4か所を捜索し、関係資料約1,100点を押収した。
警察では、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、教団施設周辺の地域住民や関係する地方公共団体による要望を踏まえ、地域住民の平穏な生活を守るため、教団施設周辺におけるパトロール等の警戒警備活動を実施している。
施設周辺での警戒警備活動