第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

7 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況
〔1〕 風俗営業の状況
 警察では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
 
表1-15 風俗営業の営業所数の推移(平成16~20年)
表1-15 風俗営業の営業所数の推移(平成16~20年)
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〔2〕 性風俗関連特殊営業の状況
 人身取引の防止と違法営業の抑止を目的とした平成18年の風営適正化法改正以降、無店舗型性風俗特殊営業の派遣型ファッションヘルス等の届出数は、17年に比べ大幅に減少しているが、20年中は前年より増加した。
 
表1-16 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成16~20年)
表1-16 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成16~20年)
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〔3〕 深夜酒類提供飲食店営業の状況
 深夜酒類提供飲食店の営業所数は、最近5年間は横ばいで推移している。
 
表1-17 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成16~20年)
表1-17 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成16~20年)
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(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
 平成20年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の割合は16.6%(110人)で、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。
 最近では、週刊誌等を広報媒体として利用する事犯のほか、携帯電話の出会い系サイトを利用する事犯が目立ち、女性に債務を負わせて売春を強要したり、派遣型ファッションヘルスを仮装したりするなどの悪質な事犯もみられる。
 
表1-18 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成16~20年)
表1-18 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成16~20年)
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 20年中の風営適正化法による検挙状況についてみると、前年に比べ、無許可営業の検挙件数が増加している。
 
表1-19 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成16~20年)
表1-19 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成16~20年)
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 また、20年中のわいせつ事犯の検挙状況についてみると、前年に比べ、検挙件数が増加しており、近年では、コンピュータ・ネットワークを利用してわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯が多くみられる。
 
表1-20 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
表1-20 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
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(3)人身取引事犯に対する警察の取組み
〔1〕 人身取引事犯の検挙状況等
 近年、人身取引の防止が国際的な課題となっており、警察では、入国管理局等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な雇用主、仲介業者等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っている。
 平成20年中の人身取引事犯の検挙人員の内訳は、経営者等が26人、仲介業者が7人であった。また、被害者の国籍は、タイ(18人)、フィリピン(7人)が多く、これらが全体の69.4%を占めた。被害者の保護時の在留資格は、「短期滞在者」(9人)、「不法入国」(8人)が半数を占めた。
 
表1-21 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成16~20年)
表1-21 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成16~20年)
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事例
 飲食店経営の中国(台湾)人女性(56)は、20年9月、営利の目的で中国人女性を買い受け、この女性に多額の借金を負わせた上、同飲食店において飲食客の接待に従事させるとともに、不特定の遊客を売春の相手方として紹介するなどして売春を強要した。同年11月までに、同経営者を売春防止法違反(周旋及び管理売春)及び人身売買罪で、同店の共同経営者である中国(台湾)人女性(47)を売春防止法違反(周旋及び管理売春)で、同経営者に中国人女性を売り渡した中国(台湾)人男性(58)及び日本人男性(43)を職業安定法違反(有害業務の紹介)及び人身売買罪で逮捕した(千葉)。

〔2〕 匿名通報ダイヤルの運用
 19年10月1日から、被害者本人からの申告が期待しにくく潜在化しやすい犯罪を早期に認知して検挙に結び付けるため、警察庁から委託を受けた民間団体が少年の福祉に関係する一定の犯罪(注)や人身取引事犯に関する通報を国民から匿名で受け付け、事件検挙への貢献度に応じて情報料を支払う「匿名通報ダイヤル」を運用している。20年9月30日現在、少年の福祉に関係する一定の犯罪に関する通報件数は206件、人身取引事犯に関する通報件数は62件であり、このうち7件が事件解決等に結び付いた。

注:福祉犯のうち、未成年者喫煙防止法、未成年者飲酒禁止法に規定する罪等一部の罪を除き、刑法の強制わいせつ罪(少年が被害者になるものに限る。)、未成年者略取、誘拐罪等を含めたもの


(4)銃砲の適正管理と危険物対策
〔1〕 銃砲規制の厳格化と刃物規制の強化
 平成20年末現在、銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)に基づき、都道府県公安委員会の所持許可を受けている猟銃及び空気銃の数は30万8,667丁で、15万2,938人が許可を受けている。警察では、所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めており、20年中、申請を不許可等とした件数は26件、所持許可を取り消した件数は173件であった。
 また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行っている。
 20年中は、長崎県佐世保市で発生した散弾銃使用殺傷事件を受け、各都道府県警察において許可を受けた猟銃等及びその所持者のすべてを対象とした「17万人/30万丁・総点検」を実施するとともに、警察庁において幅広い観点から銃砲行政全般の見直しを行う「銃砲行政の総点検」を実施した。
 総点検の結果及び東京都千代田区で発生したダガーナイフ使用による無差別殺傷事件を受け、20年12月、銃砲規制の厳格化と刃物規制の強化を内容とする銃刀法の一部を改正する法律が可決・成立し、21年1月5日に刃渡り5.5センチメートル以上の剣の所持禁止に係る規定が、同年6月1日に銃砲規制の厳格化に関する規定の一部が、それぞれ施行された。
 
図1-53 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律の概要
図1-53 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律の概要

事例
 会社員の男(45)は、20年7月、医師の診断を受けるのが面倒であるとの理由で、散弾銃の所持許可の更新申請に必要な医師の診断書を偽造し、申請時の添付書類として提出した。対応した警察職員による面接等により偽造が発覚し、有印私文書偽造・同行使罪及び銃刀法違反(虚偽記載)で逮捕した(徳島)。

〔2〕 危険物対策
 火薬類、特定病原体等、放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。
 警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。
 
表1-22 運搬届出・立入検査の状況(平成20年)
表1-22 運搬届出・立入検査の状況(平成20年)
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 第3節 安全で安心な暮らしを守る施策

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