第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

12 シンクタンクの活動

(1)警察政策研究センターの活動
 
 図5-29 警察政策研究センターの業務概要
図5-29 警察政策研究センターの業務概要

 警察大学校に置かれている警察政策研究センターは、警察の課題に関する調査研究を進めるとともに、警察と国内外の研究者等との交流の窓口として活動している。
〔1〕 フォーラム等の開催
 財団法人等と連携して、内外の研究者・実務家を交えて組織犯罪対策等をテーマとするフォーラム等を開催している。
 
 表5-8 フォーラム等の開催状況
表5-8 フォーラム等の開催状況

事例 警察政策フォーラムの開催

 平成19年12月、米国司法省組織犯罪対策課主任検事及び米国連邦捜査局ニューヨーク支局特別捜査官を招き、組織犯罪対策をテーマとしたフォーラムを開催した。大学教授、経済団体の幹部、弁護士、新聞記者及び警察庁職員がパネリストとして参加し、活発に意見交換を行った。
 
 フォーラムの開催状況
フォーラムの開催状況

〔2〕 大学関係者との共同研究活動の推進
 大学関係者と共同して研究活動を行っている。最近の研究活動として、慶應義塾大学大学院法学研究科との諸外国のテロ対策法制等に関する共同研究、早稲田大学社会安全政策研究所との少年非行・被害防止及び外国人犯罪に関する共同研究等がある。
〔3〕 大学・大学院における講義の実施
 警察政策に関する研究の発展及び普及のため、早稲田大学法科大学院、中央大学法科大学院、首都大学東京都市教養学部(東京都立大学法学部)、法政大学法学部等の大学・大学院に職員を講師として派遣するとともに、特別講義を行っている。あわせて、学生向けのテキストとなる書籍(警察政策論)を作成した。
 
 大学における講義状況
大学における講義状況

〔4〕 警察に関する国際的な学術交流
 19年11月、フランス共和国内務省高等治安研究所等との間で研究者の交流、研究、講演会の開催等の共同事業の実施について定めた協定を締結するなど、警察に関する国際的な学術交流を実施している。また、日本警察に関する情報発信を行うことなどを目的として、警察に関する国際的な学術会議等にも参加している。

事例

 19年11月、韓国で開催された韓国警察大学治安政策研究所主催のフォーラムに参加し、「日本における警察改革」と題する発表を行い、参加国の警察研究者や実務家と意見交換を行った。

(2)警察情報通信研究センター
 警察大学校に置かれている警察情報通信研究センターでは、情報通信システムに関する技術、暗号技術等、警察活動にかかわる情報通信技術について研究しており、その成果は情報通信システムの整備や情報通信技術を悪用した犯罪対策に活用されている。

研究例 自律分散型無線ネットワークに関する研究

 事件、事故及び災害の発生時に、迅速な警察活動を行うためには、その現場の状況を正確に把握することが重要である。しかし、基地局からの電波が届きにくい地下街等においては、撮影した映像を伝送することが困難な場合がある。
 そのため、無線端末同士が情報交換を行い、随時適切な経路を構築することで、迅速かつ応急的な映像の伝送を可能とする自律分散型無線ネットワークに関する研究を行った。
 
自立分散型無線ネットワーク

(3)科学警察研究所
 生物学、医学、心理学等の専門的知識・技術を有する研究員が、科学捜査、犯罪防止、交通事故防止等についての研究及び開発を行っている。また、各都道府県警察からの依頼により、事件、事故等に係る鑑定や検査を実施している。

研究例 放火事件を想定した散布ガソリンの蒸発特性に関する研究

 床等に散布され蒸発したガソリンが有する性質(空気中で一定の濃度に達すると引火し、また、その濃度によって引火した際の燃焼による周囲への影響が異なるという性質)を理論的に解明・立証するため、床面に散布されたガソリンの蒸発速度、蒸気濃度等の基本的特性を測定し、これに基づいてガソリンの蒸発・拡散挙動をコンピュータを用いて予測する手法の研究を行った。
 
室内に散布されたガソリンの蒸気濃度の計算予測例

 12 シンクタンクの活動

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