第4章 公安の維持と災害対策 

第12節 災害対策

(1)自然災害等の発生状況と警察活動
 平成19年中は、台風、大雨、強風、高潮及び地震により、死者・行方不明者30人、負傷者3,074人等の被害が発生し、また、航空機の火災等の航空災害が発生した。15年から19年までの自然災害による主な被害状況は、表4-8のとおりである。
 
 表4-8 自然災害による主な被害状況(平成15~19年。20年5月31日現在)
表4-8 自然災害による主な被害状況(平成15~19年。20年5月31日現在)

〔1〕 地震
 19年中は、3月に平成19年(2007年)能登半島地震、7月に平成19年(2007年)新潟県中越沖地震等が発生し、死者16人、負傷者2,721人等の被害が、20年6月には、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震が発生し、死者12人、行方不明者10人、負傷者434人等の被害が発生した(20年6月30日現在)。
 19年中の主な地震の概要、警察がとった措置については、次のとおりである。
ア 平成19年(2007年)能登半島地震
 19年3月25日午前9時41分ころ、石川県能登半島沖を震源とするマグニチュード6.9の地震が発生し、同県七尾市、輪島市、穴水町で震度6強、志賀町、中能登町、能登町で震度6弱を記録した。この地震により、死者1人、負傷者356人等の被害が発生した。
 石川県警察を始めとする関係県警察では、本部長を長とする総合警備本部等を設置し、被害情報の収集、被災者の救出救助、避難誘導等の活動を実施した。警察庁では、警備局長を長とする災害警備本部を設置し、必要な措置を講じた。また、新潟、愛知、岐阜、福井の各県警察は、石川県公安委員会からの援助の要求を受け、延べ380人の広域緊急援助隊を石川県警察に派遣した。
 
 能登半島地震に伴い被災者の避難誘導を行う広域緊急援助隊
能登半島地震に伴い被災者の避難誘導を行う広域緊急援助隊

イ 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震
 19年7月16日午前10時13分ころ、新潟県上中越沖を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生し、同県柏崎市、刈羽村、長岡市、長野県飯綱町で震度6強、新潟県上越市、小千谷市、出雲崎町で震度6弱を記録した。この地震により、死者15人、負傷者2,346人等の被害が発生した(20年5月31日現在)。
 新潟県警察を始めとする関係県警察では、本部長を長とする災害警備本部等を設置し、被害情報の収集、被災者の救出救助、避難誘導等の活動を実施した。また、警察庁では、警備局長を長とする災害警備本部を設置し、必要な措置を講じた。また、宮城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野、静岡、富山、岐阜の各県警察及び警視庁は、新潟県公安委員会からの援助の要求を受け、延べ約2,500人の広域緊急援助隊等を新潟県警察に派遣したほか、延べ約200人の特別パトロール要員、延べ22機のヘリコプター等を同県警察に派遣した。
 
 新潟県中越沖地震に伴い被災者の救出救助に当たる広域緊急援助隊
新潟県中越沖地震に伴い被災者の救出救助に当たる広域緊急援助隊

〔2〕 大雨及び台風
 19年中は、7月上旬から中旬までの間、日本付近に停滞した梅雨前線と台風第4号により、南西諸島から東北地方にかけて、最大533ミリの24時間雨量を記録する大雨となり、9月中旬には、前線と台風第11号から変わった低気圧により、東北地方が大雨となった。
 また、19年中は24個の台風が発生し、うち3個が日本に上陸し、12個が接近した。これらの大雨及び台風により、死者・行方不明者14人、負傷者236人等の被害が発生した。
 関係都府県警察では、これらの災害の発生に際し、災害警備本部等を設置し、被害情報の収集、孤立した住民の避難誘導や行方不明者の捜索等の活動を実施した。また、警察庁及び関係管区警察局では、災害警備連絡室等を設置し、関連情報の収集や関係機関との連絡調整を行うなど必要な措置を講じた。
 
 孤立した住民の避難誘導
孤立した住民の避難誘導

〔3〕 航空災害
 19年3月13日午前10時54分ころ、伊丹空港発、高知空港行きの全日空1603便(乗客56人、乗員4人)が、故障により前輪が下りず、後輪のみで高知空港に着陸したが、人的被害の発生はなかった。また、8月20日午前10時35分ころ、台北空港発、那覇空港行きの中華航空120便(乗客157人、乗員8人)が、那覇空港到着後第2エンジンから出火・炎上した。
 高知県警察及び沖縄県警察では、それぞれの航空機事故の発生に伴い、航空機事故警備本部等を設置し、被害情報の収集を行うとともに、現場付近の交通規制等を実施した。また、警察庁では、警備連絡室を設置し、関連情報の収集や関係機関との連絡調整を行うなど必要な措置を講じた。

(2)広域緊急援助隊特別救助班の活動
 警察では、平成17年4月、12都道府県警察(注1)の広域緊急援助隊に極めて高度な救出救助能力を持つ特別救助班(P-REX)(注2)を設置した。
 特別救助班は、平成19年(2007年)能登半島地震及び平成19年(2007年)新潟県中越沖地震に出動し、被災者の救出救助や安否確認等の活動に当たった。
 特別救助班は、廃屋等を利用した訓練や関係機関との合同訓練等を行い、救出救助能力の向上に努めている。また、救出救助活動を安全かつ迅速に実施するためには、部隊指揮官の指揮能力が重要であることから、部隊指揮要領の実戦的訓練や、各種災害現場についての事例研究等を実施するなど、指揮官の指揮能力の向上を図っている。

注1:北海道、宮城、警視庁、埼玉、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫、広島、香川及び福岡
 2:Police Team of Rescue Experts

 
 廃車を利用して救出救助訓練を行う特別救助班
廃車を利用して救出救助訓練を行う特別救助班
 
 図4-22 特別救助班(P-REX)の設置
図4-22 特別救助班(P-REX)の設置

 第12節 災害対策

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