第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

12 シンクタンクの活動

(1)警察政策研究センターの活動

 警察大学校に置かれている警察政策研究センターは、警察の課題に関する調査研究を進めるとともに、警察と国内外の研究者等との交流の窓口として活動している。
 
 図5-33 警察政策研究センターの業務概要
図5-33 警察政策研究センターの業務概要

〔1〕 フォーラムの開催
 財団法人等と連携して、国内外の研究者・実務家を交えて治安対策に関する各種のフォーラムを開催している。
 
 表5-6 フォーラム等の開催状況
表5-6 フォーラム等の開催状況

事 例
 平成18年10月、英国重大組織犯罪対策庁特定資金情報部長及びオーストラリア連邦取引報告分析センター規制政策部長を招き、マネー・ローンダリング対策をテーマとしたフォーラムを開催した。我が国の大学教授、金融機関の代表者、弁護士、金融庁職員及び警察庁職員がパネリストとして参加し、日英豪の3か国の取組みを紹介するとともに、活発に意見交換を行った。
 
 フォーラムの開催状況
フォーラムの開催状況

〔2〕 大学・大学院における講義の実施
 警察政策に関する研究の発展及び普及のため、中央大学法科大学院、首都大学東京都市教養学部(東京都立大学法学部)等の大学・大学院に職員を講師として派遣するとともに、特別講義を行っている。
 
 講義風景
講義風景

〔3〕 外部研究者との交流等による調査研究の推進
 警察政策学会の犯罪予防法制研究部会を始めとする関係部会や日本犯罪社会学会年次大会において発表を行うなど、学会や研究者との交流を進めている。慶應義塾大学大学院法学研究科との間では、15年度から各国のテロ対策法制等について共同研究を実施している。また、同大学との間では、近年増加傾向の見られる高齢者による犯罪の特徴等についても共同研究を実施している。

〔4〕 警察に関する国際的な学術会議への参加等による日本警察に関する情報発信
 日本警察に関する情報発信を行うことなどを目的として、警察に関する国際的な学術会議等に積極的に参加している。また、日本の治安情勢や日本警察に関する外国語資料を紹介している。

事 例
 18年5月、トルコで開催された国際警察シンポジウムに参加し、議題の「犯罪対策における地域社会から国際社会までの連携」について日本における現状等を発表し、世界各国の警察研究者や実務家と意見交換を行った。

(2)警察情報通信研究センター

 警察大学校に置かれている警察情報通信研究センターでは、情報通信システムに関する技術、暗号技術等、警察活動にかかわる情報通信技術について研究しており、その成果は情報通信システムの整備や情報通信技術を悪用した犯罪対策に活用されている。


研究例
 P2P技術(注1)を利用したIP電話(注2)の警察への導入に関する研究

 現在の警察電話は交換機を経由して情報をやり取りするため、交換機に障害が発生するとそれにつながっているすべての電話端末が通話不能となる場合がある。呼制御サーバ(注3)を利用せず、電話端末間で直接データをやり取りするIP電話は、現在の警察電話と比較し、電話網全体が停止するような障害が発生しにくい。そこで、この研究では、このようなP2P技術を利用したIP電話を警察において活用する場合のシステム構成について研究を行った。

注1:サーバの仲介を前提としなくても、端末間で直接情報のやり取りが可能な技術
 2:インターネットプロトコルを利用した電話
 3:交換機と同等の機能を有するサーバ
 
<P2P技術を利用したIP電話の活用の一例>
<P2P技術を利用したIP電話の活用の一例>


(3)科学警察研究所

 生物学、医学、心理学等の専門的知識・技術を有する研究員が、科学捜査、犯罪防止、交通事故防止等についての研究及び開発を行っている。また、各都道府県警察からの依頼により、事件、事故等に係る鑑定や検査を実施している。

研究例  生体資料からの新たな異同識別検査法の開発

 現在活用されているDNA型検査は、DNAの特定の塩基配列の繰り返しの回数を利用していることから、経時変化した白骨や自然脱落毛等、DNAが断片化した資料から個人を識別することは困難である。こうした資料から個人の識別を行うため、塩基の違いを利用する新しい検査法を開発している。


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