第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

13 警察における被害者対策

(1)基本施策

 被害者及びその遺族又は家族は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では、次のとおり、様々な側面から被害者対策の充実を図っている。また、各都道府県警察において、捜査員以外の職員が、被害者への付添い、刑事手続の説明等、事件発生直後に被害者支援を行う指定被害者支援要員制度(注)が導入されている。

注:平成18年12月現在の要員総数2万4,886人

 
警察における被害者対策
 
 被害者の手引
被害者の手引
 
 被害者対策用車両
被害者対策用車両

(2)被害者支援連絡協議会の活動

 被害者が支援を必要とする事柄は、生活、医療、公判等多岐にわたるため、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、地方公共団体の担当部局や相談機関等から成る「被害者支援連絡協議会」が、全都道府県で設立されている。このほか、警察署の管轄区域等を単位とした被害者支援のための連携の枠組みが各地に構築され、よりきめ細かな被害者支援が行われている。

(3)民間の被害者支援団体との連携

 各地で、民間の被害者支援団体の設立が進んでいる。全国被害者支援ネットワークの加盟団体数は、平成19年4月現在、全国で44団体に上る。これらの団体は、電話又は面接による相談、相談員の養成及び研修、自助グループ(遺族の会等)への支援、広報啓発等の活動を行っており、警察は、団体の設立・運営を支援している。また、都道府県公安委員会は、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律に基づき、犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適切かつ確実に実施できる非営利法人を指定する公的認証制度を運用しており、同年4月現在、全国で11団体が犯罪被害者等早期援助団体として指定されている。

(4)犯罪被害給付制度

 犯罪被害給付制度は、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない被害者等に対し、国が一定の給付金を支給するものである。この制度は、昭和56年1月の施行以来、犯罪被害等の早期の軽減に重要な役割を果たしている。
 
 図5-34 犯罪被害者等給付金
図5-34 犯罪被害者等給付金
 
 表5-7 犯罪被害給付制度の運用状況
表5-7 犯罪被害給付制度の運用状況

 
(5)被害者の特性に応じた施策

〔1〕 性犯罪の被害者
 警察では、性犯罪被害者の立場に立った対応に心掛け、その精神的負担の軽減を図るとともに、右のような施策を推進している。
相談体制の整備
・相談専用電話( 「性犯罪110 番」等) や相談室の設置
捜査体制の充実
・性犯罪捜査指導官等の設置及び女性警察官の性犯罪捜査員への指定
・女性専門捜査官の育成及び男性警察官に対する教育・研修の充実
・性犯罪捜査証拠採取セット(証拠採取に必要な用具や被害者の衣類を
証拠として預かる際の着替え等の一式)の整備
経済的な支援
・被害後の検査費用や緊急避妊に要する経費等の支援

〔2〕 少年犯罪の被害者
 警察では、被疑少年の健全育成に配慮しつつ、捜査上支障のない範囲で、被害者の要望にこたえるため、次のような施策を推進している。
身体犯(殺人、強盗致死傷、強姦等)及び重大な交通事故事件の被害者に限り、次の事項を連絡
・被疑少年を検挙するまでの捜査状況
・逮捕若しくは在宅送致をした被疑少年又はその保護者の氏名等
・逮捕した被疑少年を送致した検察庁又は家庭裁判所及びその処分結果等

〔3〕 暴力団犯罪の被害者
 暴力団犯罪の被害者は、警察に相談することによって、暴力団から「お礼参り」や嫌がらせを受けるのではないかとの不安を感じている場合が多いことから、警察では、こうした被害者の不安感を払拭し、被害者からの積極的な被害の申告を促すなどのため、右のような施策を推進している。
暴力団関係相談の受理体制の整備
・相談専用電話の開設
・都道府県暴力追放運動推進センターや弁護士会等の関係機関・団体と連携した被害相談を実施
民事訴訟の支援
・暴力団員を相手方とする民事訴訟に対する情報提供等の支援
警察施設の供用
・被害回復交渉を行う場所として被害者に警察施設を提供
危害防止措置の実施
・被害者や参考人の自宅や勤務先周辺でパトロールを強化
 
〔4〕 交通事故の被害者
 警察では、発生件数が多く、だれもが被害者となり得る交通事故の特性を踏まえ、次のような施策を推進している。
制度に関する情報の提供
・全国の交通安全活動推進センターと連携し、被害者からの相談に応じて、保険請求・損害賠償制度、被害者支援・救済制度、示談・調停・訴訟の基本的な制度、手続等について教示
加害者に関する情報の提供
・被害者からの問い合わせに応じ、加害者の行政処分に係る意見の聴取等の期日及び行政処分の結果について教示
被害者の心情に関する運転免許保有者の理解の促進
・被害者が出演するビデオ、被害者の手記等を停止処分者講習等で活用
・停止処分者講習等における被害者の講話の実施

〔5〕 配偶者からの暴力事案やストーカー事案の被害者
 警察では、重大な犯罪の未然防止を図るとともに、被害に遭った女性・子どもの立ち直りを支援するため、右のような施策を推進している。
相談体制の整備
・配偶者からの暴力事案やストーカー事案等の相談窓口の設置
必要な援助
・配偶者暴力相談支援センター等と連携し、被害者の保護や被害の発生を防止するための必要な援助(相談・防犯指導、行為者への指導警告等)

 13 警察における被害者対策

前の項目に戻る     次の項目に進む