第4章 公安の維持と災害対策 

9 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向等

〔1〕 革マル派の動向
 革マル派(注1)は、周囲に警戒心を抱かせないよう同派の活動であることを隠し、基幹産業の労働組合への浸透を図るなど、組織拡大に重点を置いた活動を行った。同派とJR東労組との関係を採り上げた週刊誌の連載記事に対しては、同派の機関紙「解放」に批判記事を掲載し、また、JR東日本で発生した置き石等の列車妨害事件に関し、「アメリカ権力者とその意を受けた日本国家権力内謀略グループのフレームアップ」とするいわゆる権力謀略論を唱え、同派の特異な体質をうかがわせた。
 こうした中、同派は、平成18年8月、東京都内で記者会見を行い、創始者である黒田寛一前議長(享年78歳)が6月に死亡したことを明らかにするとともに、植田琢磨議長が声明文を読み上げ、「同志黒田の思想を継承し血肉化し実践的に適用していく」ことを明らかにした。
 また、組織の引締めを図るため、「解放」に、黒田前議長を追悼する論文や、黒田前議長が提唱した理論の継承と組織の強化を訴える論文を掲載したほか、同年10月には、黒田前議長を追悼する集会を開催し、植田議長らが、黒田前議長の遺志の継承及び組織の強化を訴えた。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。


〔2〕 中核派の動向
 中核派は、18年中、憲法改正阻止を最重点課題に掲げ、労働組合の中に活動家や同調者を増やす活動に力を注いだ。同派は、自らが主導する「百万人署名運動」において「9条を変えるな!」をスローガンに、街頭署名や労働組合の事務所訪問等の活動に取り組んだ。また、国旗の掲揚や国歌の斉唱に反対し、高等学校の卒業式及び入学式での不起立を呼び掛けるビラを配布したり、教育委員会へ申し入れるなどした。こうした取組みの成果を集約する集会として、同年11月、東京都内で約2,700人を集めて「全国労働者総決起集会」を開催した。
 同派では、同年3月、関西地方委員会の最高幹部が独善的な組織運営等を理由に同派活動家から糾弾され、解任に追い込まれた。その後、この処理をめぐり、内部対立が発生し、同派中央の幹部多数の除名、地方活動家の大量離党等の事態に発展した。
 
 「全国労働者総決起集会」開催時のデモ
「全国労働者総決起集会」開催時のデモ

〔3〕 革労協の動向
 革労協は、11年5月に主流派と反主流派に分裂して以降、互いに「解体」、「根絶」及び「報復」を主張して対立している。
 主流派は、18年中、成田国際空港の暫定平行滑走路の北側への延伸工事に反対し、三里塚芝山連合空港反対同盟北原グループ(以下「反対同盟」という。)が主催する集会やデモに活動家や同調者を動員するなどした。また、同年8月には、暫定平行滑走路を北側に延伸するための工事実施計画の変更許可申請を審査するため、国土交通省が開催した公聴会の会場周辺で、「反対意見を切り捨てる公聴会は中止せよ」などと訴えて、デモを行うとともに、同年9月、同派が指導する全学連(注2)の全国大会を成田で開催し、デモを行った。
 反主流派では、同年3月、同派の最高幹部の側近とみられていた活動家が、活動拠点である「赤砦社」から都内の病院に搬送され、その後死亡した。同派は、この活動家の死因を心臓麻痺であるとし、傷害致死容疑で「赤砦社」を捜索した警察を批判する追悼文を同派の機関紙「解放」に掲載することで、組織の動揺を抑えようとした。また、同派は、19年2月、在日米軍キャンプ座間に向け、飛翔弾を発射するゲリラ事件を引き起こし、報道機関に犯行を認める声明を郵送した。

注2:正式名称を全日本学生自治会総連合という。

 
 成田国際空港暫定平行滑走路(空港南側から撮影)
成田国際空港暫定平行滑走路(空港南側から撮影)

〔4〕 成田闘争
 成田国際空港株式会社(以下「空港会社」という。)は、17年8月の暫定平行滑走路の北側への延伸決定を踏まえ、航空法に定める手続を経て、18年9月、暫定平行滑走路の北側延伸工事を開始した。また、反対同盟員が賃借している農地により、暫定平行滑走路の西側誘導路が曲折し、航空機の運航に支障が生じている事態を解消するため、農地法に基づき、農地の賃貸借解約の手続を行い、千葉県知事の許可を得た。
 空港会社等のこうした動きに対し、中核派、革労協主流派等が支援する反対同盟は、「北延伸弾劾」を主張してその工事の着工に反対し、デモを行った。また、農地の賃貸借解約の許可決定や、新誘導路の建設に伴い東峰地区の樹林の約半分が伐採されることに対しても、10月の全国総決起集会で「満身の怒りを込めて弾劾し、敢然と農地を守り工事を粉砕する」として反発を強めた。
 
 過激派対策広報ポスター
過激派対策広報ポスター

(2)諸対策の推進

 警察では、極左暴力集団に対する事件捜査を徹底するとともに、非公然アジトを摘発するため、マンション等に対するローラーを積極的に進め、ポスター等を活用して国民からの広範な情報提供を促すなどして、極左暴力集団に対する情報収集を強化している。
 こういった諸対策を推進することにより、平成18年中は、主に次のような事件を検挙するなど、非公然活動家3人を含む76人の活動家を逮捕した。
 
 表4-5 平成18年中の主な極左事件
表4-5 平成18年中の主な極左事件

 9 極左暴力集団の動向と対策

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