第4章 公安の維持と災害対策 

8 右翼の動向と対策

(1)右翼の動向

〔1〕 批判活動の展開
 右翼は、平成18年中、北朝鮮による弾道ミサイル発射や地下核実験実施発表等に対する反発を強め、北朝鮮、朝鮮総聯、我が国政府等を批判した。
 また、中国をめぐっては、中国政府の要人が小泉首相(当時)の靖国神社参拝中止を要求したことなどをとらえ、韓国をめぐっては、竹島問題等をとらえ、ロシアをめぐっては、北方領土問題等をとらえ、それぞれ関係国、我が国政府等を批判した。
 右翼が上記の批判活動に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、表4-3のとおりである。
 このほか、右翼は、靖国神社をめぐる議論や皇室典範改正に関する議論をとらえて、政府等に対する批判活動も活発に行った。
 
 表4-3 右翼による批判活動に伴う動員数(平成18年)
表4-3 右翼による批判活動に伴う動員数(平成18年)

〔2〕 右翼関係事件の傾向
 18年中は、6件の「テロ、ゲリラ」事件が発生した。
 
 表4-4 「テロ、ゲリラ」事件の概要等(平成18年)
表4-4 「テロ、ゲリラ」事件の概要等(平成18年)
 
 図4-15 「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況(平成9~18年)
図4-15 「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況(平成9~18年)
 
 大手企業のビルに突入した街頭宣伝車
大手企業のビルに突入した街頭宣伝車

事例1
 右翼団体幹部(65)は、18年8月、加藤紘一衆議院議員と作家が小泉首相(当時)の靖国神社参拝について対談した雑誌の記事を読み、同議員に抗議する目的で、同議員の実母宅に侵入して、室内にガソリンを撒いて放火し、同家屋等を全焼させた。同月、現住建造物等放火罪で逮捕した(山形)。

 18年中の右翼による違法行為(右翼関係事件)の検挙件数及び検挙人員は、図4-16のとおりである。そのうち、右翼運動に伴う事件等の検挙状況は、次のとおりである。
 <右翼運動に伴って発生した事件(18年中)>
   検挙件数・・・159件(全検挙件数の9.4%)
   検挙人員・・・305人(全検挙人員の15.1%)
 また、右翼関係事件のうち、道路交通法違反を除くすべての検挙罪種のうちで恐喝事件が最も多く、右翼による資金獲得活動の悪質性がうかがえる。
 <右翼による恐喝事件(18年中)>
   検挙件数・・・141件(全検挙件数の8.4%)
   検挙人員・・・269人(全検挙人員の13.3%)
 さらに、右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は、次のとおりであり、銃器の多くを暴力団を通じて入手しているものとみられる。
 <右翼及びその周辺者からの銃器押収状況>
  18年中の押収・・・11丁(前年比7丁(38.9%)減)
  最近5年間の押収・・・153丁(暴力団と関係を有する者からの押収88丁(57.5%))
 
 図4-16 右翼関係事件の検挙状況(平成14~18年)
図4-16 右翼関係事件の検挙状況(平成14~18年)

事例2
 右翼団体会長(65)ら22人は、16年1月から17年10月にかけて、電話帳から無作為に抽出した企業等に電話をかけ、右翼を名乗るなどして脅し、書籍販売等の名目で金融機関に現金を振り込ませ、脅し取るなどした。18年1月までに恐喝罪等で逮捕した(同年2月、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)違反(組織的な恐喝等)に訴因変更)。また、山口組傘下組織組長(60)らは、16年2月から17年9月にかけて、この恐喝によって得られた不法な収益であることを知りながら、同右翼団体会長らから現金を収受した。18年6月、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)で逮捕した(大阪、石川)。
 
右翼団体会長等と山口組傘下組織組長等の組織的犯罪処罰法違反

(2)右翼対策の推進

〔1〕 「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧に向けた違法行為の検挙
 警察は、右翼による「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。
 
 街頭宣伝車の取締り
街頭宣伝車の取締り

〔2〕 街頭宣伝車対策の推進
 警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、市民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。
<18年中の取締り状況>
  暴騒音条例に基づく停止・中止命令(111件)、勧告(194件)、立入り(60件)
  名誉毀損罪、恐喝罪、暴騒音条例違反等による検挙(58件、90人)

 8 右翼の動向と対策

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