警察活動の最前線 

被害者の無念を晴らすために
警視庁麻布警察署刑事課
岡本大地 巡査部長

 


 私は、昨年3月に六本木ヒルズの回転扉に子どもが挟まれて亡くなった事件の捜査に従事しました。
 私の担当は、回転扉を設計・製造する企業が使用していたパソコン約30台に記録されたデータの解析でした。台数も多く、回転扉という特殊で専門的な技術に関するデータであったため、初めはその内容が十分理解できず、なかなか解析作業は進みませんでした。
 しかし、事件の捜査では、「よく分からないからできなかった」という言い訳は決して許されません。専門書を購入し、理解できるまで繰り返し勉強するなど、毎日地道に作業を進め、半年以上かかって何とか解析を終わらせることができました。私の解析結果が検挙の決め手になったわけではありませんが、多くの刑事の地道な作業の集大成が、被疑者の検挙に結びつくのです。
 一人の刑事として大きな事件の捜査に携わったという自信、そして、亡くなった幼き子どもとその親御さんの無念を少しでも晴らしたという喜び、これを糧に、どんな困難な捜査にも立ち向かっていきます。

 
少年非行に思うこと
大阪府河内警察署鴻池駅前交番
松田 宏 巡査部長

 


 ある少年の死が、私の非行少年への接し方を大きく変えました。彼は、高校をサボっては非行を繰り返していました。ある日、単車で走り回っている彼を発見した私は、形式的な補導を行い現場を離れたところ、その2日後、彼は、校則に反して単車で通学中に交通事故死したのです。
 この訃報を知ったとき、なぜもっと親身に話を聞いて、校則を守るなどの遵法精神を指導してやれなかったのかと猛省しました。それからの私は、非行少年を発見すれば、名前を名乗った上で、必ず目を確認しながら非行を繰り返さないことを約束をさせるようにしています。そして、この約束を破ったときは、自分の子どもに対するように厳しく叱責した上、アドバイスを行っています。その結果、少年たちは重く閉ざした心を開き、深夜徘徊等の非行が激減しました。
 少年たちと心が通うようになったとき、私は転勤になりました。そのとき彼らから、「松田さん行かんといてや。色々叱られたけど、僕ら嬉しかった。寂しいなあ」という言葉を聞くことができました。私は、心が通い合えば少年の犯罪は減少すると確信し、今日も彼らとの話合いを続けています。

 

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