警察活動の最前線 

機動警察通信隊員としての誇り
近畿管区警察局兵庫県情報通信部機動通信課
鶴田智弘 技官

 


 私は普段、兵庫県内の警察無線の中継所や警察署に設置されている通信機器の維持管理業務に従事しています。しかし、いざ大きな災害が起これば、機動警察通信隊の隊員として、これらの施設を維持するため出動します。
 昨年、台風23号が上陸した際は、台風が猛威を振るっている最中に警察本部を出発し、車で無線中継所に向かいました。途中、冠水していたり土砂崩れが起きていたり、なかなか前に進めません。やむなく現場で一夜を過ごした後、改めて出発し、重い資機材を背負って歩いて山を登りました。そして出発から27時間後、徒歩による登山を開始してから5時間後、やっとの思いで無線中継所に到着し、通信網を確保することができました。
 私たちの仕事は裏方であり、災害警備活動といっても、例えば倒壊した家屋に閉じ込められた被災者に直接手を差し伸べるわけではありません。しかし、被災者の生存を把握したり、現場の状況を的確に伝えて必要な装備を用意したりするなど、被災者の救出活動を支えているのは私たちなのです。こんな気概と誇りを持って、日々頑張っています。

 
縁の下の力持ち
福岡県警察本部総務部留置管理課
川波 卓 警部補

 


 私は現在、警察本部にある留置場の看守係長をしています。留置部門の勤務は5年目となります。被留置者の数はここ10年間で倍増し、精神的に安定しない者や薬物を使用する者も増え、それだけ仕事の苦労は増しています。
 看守係となって間もない頃のことです。傷害事件で留置された元ボクサーが、内妻と接見中に口論となって激昂し、椅子を振り上げ暴れ出しました。驚いた私は対応に迷いましたが、腹の底に気合いを入れて一喝すると、男は私の顔を穴の空くほどジーと見た後、暴れるのをやめておとなしく留置室に戻りました。しばらくして男が謝りたいと申し出たので、「なぜ私に殴りかからなかったのか」と尋ねたところ、「担当さんの気迫に負けたこともありますが、お世話になっているので手は出せませんでした」と答えました。
 被留置者を監視する我々は、一方で被留置者に「監視」されています。お互いに相手の人間性を見極め、間合いを測りながら、適切な接し方を考えるのです。これは、人間対人間の触れ合いであり、戦いでもあります。今後もこの出来事の教訓を忘れることなく、勤務に励んでいくつもりです。

 

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