警察活動の最前線 

警察活動の最前線

新潟県中越地震に出動して
新潟県新津警察署警備課長
根立一成 警部

 


 機動隊の中隊長であった私は、数十人の部下を率い、地震発生直後に緊急出動して以降豪雪期まで、様々な災害警備活動に従事しました。時には自然の脅威を目の当たりにして無力感を味わい、時には人の心の温かさに触れ、涙することもありました。自ら被災しているにもかかわらず、他の被災者に支援・協力の手をさしのべようとする住民は数多く、その姿が目に焼き付いています。
 被害甚大な山古志村では、孤立した2,200人の村民救出に携わりました。車に乗った母子3人が巻き込まれた崩落現場では、消防等と一体となり再崩落の危険と背中合わせで行った救出活動が、奇跡的な男児生還につながりました。しかし、女児救出は残念ながら半月後となり、そのとき隊員は、無言で遺体の顔に付いた泥をぬぐいました。天国で花嫁になれるようにと住民から託されたブーケを現場に手向け、隊員全員で合掌した瞬間、我々の使命の重さを強く実感しました。
 被災地では、新潟だけでなく、全国の警察官やパトカー、ヘリコプターが活動していました。仲間からの助力を大変頼もしく、ありがたいと感じた次第です。
 人の温かさに感謝し、貴重な体験を糧として、今後の活動に臨む決意です。

 
現場に生きる
大阪府警察本部刑事部鑑識課
西山昭彦 警部

 


 私は、機動鑑識隊の指揮官として、班員たちと共に日夜大阪中を走り回っています。そんな私のモットーは、「四の五の言うよりまず現場」です。機動鑑識は「現場に出てなんぼ」の仕事であるからです。
 捜査員が取調室で被疑者と対決するように、我々鑑識課員は、現場で物言わぬ壁や床と対決しています。「現場は証拠の宝庫」と言われますが、手強い現場は簡単には証拠を出してくれません。現場と鑑識との根気比べです。気が遠くなるほどの無駄を積み重ねて、やっと御褒美(証拠)をくれる現場もあります。班員たちは、男か女かは関係なく、皆現場でドロドロになりながら、這いつくばって活動しています。せっかくの美男美女も台無しです。
 私たちは絶対に現場に負けません。死臭の充満する密室の現場で、5時間以上かけて一つの指紋を検出し、涙を流していた女性鑑識課員もいました。私はこれからも大阪中を走り回り、現場で班員たちと「心と体の汗」をかきまくりながら、現場で生きていきます。

 

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