被害者の立場で私ができること
広島県警察本部刑事部機動捜査隊
丸田 歩 巡査長
皆さんは、仕事で「鳥肌」が立ったことがありますか。私は、緊張したり感動したり、ここ一番で踏ん張るときには必ず鳥肌が立ちます。そのためいつも長袖を着て勤務しているくらいです。
機動捜査隊の仕事は、事件現場にいち早く臨場して、事件関係者から話を聞き出し、犯人を検挙することです。その現場で被害者の手を取るとき、事情聴取後に被害者が深々と頭を下げるとき、それが一番鳥肌が立つ瞬間です。特に性犯罪の被害者は、時に偏見を持たれることがあります。本当に被害者なのか、同意の上ではなかったのか。「刑事さん、私の体って50万円なんだって」被疑者は検挙されたけれど、周囲の人が示談を進め、起訴されずに終わった事件の被害者がこう言いました。形の上で事件は終わっても、被害者の心の中では終わっていないのです。被害者とまったく同じ気持ちにはなれなくても、犯人を憎いと思う気持ちは同じです。その気持ちが私のすべての原動力です。目の前で泣き、叫び、我を失っている人を見て私にできることはただ一つ、落ち着くまでそばにいて、じっくりと話を聞くことだと思っています。
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