警察活動の最前線 

被害者の立場で私ができること
広島県警察本部刑事部機動捜査隊
丸田 歩 巡査長

 


 皆さんは、仕事で「鳥肌」が立ったことがありますか。私は、緊張したり感動したり、ここ一番で踏ん張るときには必ず鳥肌が立ちます。そのためいつも長袖を着て勤務しているくらいです。
 機動捜査隊の仕事は、事件現場にいち早く臨場して、事件関係者から話を聞き出し、犯人を検挙することです。その現場で被害者の手を取るとき、事情聴取後に被害者が深々と頭を下げるとき、それが一番鳥肌が立つ瞬間です。特に性犯罪の被害者は、時に偏見を持たれることがあります。本当に被害者なのか、同意の上ではなかったのか。「刑事さん、私の体って50万円なんだって」被疑者は検挙されたけれど、周囲の人が示談を進め、起訴されずに終わった事件の被害者がこう言いました。形の上で事件は終わっても、被害者の心の中では終わっていないのです。被害者とまったく同じ気持ちにはなれなくても、犯人を憎いと思う気持ちは同じです。その気持ちが私のすべての原動力です。目の前で泣き、叫び、我を失っている人を見て私にできることはただ一つ、落ち着くまでそばにいて、じっくりと話を聞くことだと思っています。

 
交通事故防止の心
山形県警察本部交通部交通機動隊
渡邉彰人 巡査部長

 


 交通事故は、被害者や加害者はもちろん、その家族をも巻き込み、不幸の淵に立たせます。こうした交通事故を根絶するため活動しているのが交通警察であり、その一員として私たち交通機動隊は、白バイとパトカーによる交通指導取締りを行っています。事故や違反の抑止につながるよう、その発生状況に応じた活動に努めていますが、そのことによって「警察官がどこにでもいる」という感覚をつくり出し、それが交通ルール遵守の手助けとなればよいと思っています。
 一言で交通違反といっても態様は様々で、悪質な運転者ばかりではありません。誰でも、ちょっとした気の緩みで違反を犯してしまうことがあります。ですから、現場では正義感を一方的に押しつけるのではなく、思いやりを持って対応し、違反者に、高齢者や歩行者などの交通弱者を守る優しさと、交通安全を願う心を持ってもらえるよう心掛けています。「今度から気を付けます」という一言をもらえたときが、相手にこちらの気持ちが通じたと実感できる瞬間です。
 警察官は、県民の悩みに親身になり、その力になれる存在ですが、それ以上に一人の人間として信頼されたいと思い、職務に励んでいます。

 

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