第5章 安全かつ快適な交通の確保 

5 道路交通のIT化

(1) 警察によるITS(高度道路交通システム)
 警察では、最先端の情報通信技術等を活用して交通管理の最適化を図るITS(注1)として、UTMS(注2)(新交通管理システム)の整備を推進している。また、その主要な装置である光ビーコン(注3)を、都市部の主要な一般道路等をおおむね網羅できるように整備することを目指している。


注1:ITS:Intelligent Transport Systems
 2:UTMS:Universal Traffic Management Systems
 3:通過車両を感知して交通量等を測定するとともに、車載装置と交通管制センターの間の情報のやり取りを媒介する路上設置型の赤外線通信装置

 [1] PTPS(注4)(公共車両優先システム)
 バス専用・優先レーンの設定等の交通規制を行うとともに、バスがなるべく停止しないように進行方向の信号を優先的に青にすることにより、一度に多くの者を輸送することができ、年少者や高齢者も多く乗車するバスの定時運行と利便性向上を図るシステム(平成16年度末現在、35都道府県で整備)。


注4:PTPS:Public Transportation Priority Systems

 
図5-5 公共車両優先システム

図5-5 公共車両優先システム

 [2] MOCS (注5)(車両運行管理システム)
 バス、貨物車等の事業用車両の走行位置等の情報を光ビーコンにより収集し、事業者に提供することにより、事業者が行う車両の運行管理を支援するシステム(16年度末現在、11道府県で整備)。


注5:MOCS:Mobile Operation Control Systems

 [3] PICS (注6)(歩行者等支援情報通信システム)
 交差点等に設置する光通信装置と歩行者が所持する携帯端末が、双方向に情報をやり取りすることにより、通行する高齢者、身体障害者等に交差点名、歩行者用信号の状態等に関する情報を提供し、安全な移動を支援するシステム(16年度末現在、30都道府県で整備)。


注6:PICS:Pedestrian Information and Communication Systems

 
図5-6 歩行者等支援情報通信システム

図5-6 歩行者等支援情報通信システム

 
(2) 警察による交通情報提供
 警察では、交通管制システムにより収集・分析したデータを交通情報として広く提供することにより、運転者が混雑の状況や所要時間を的確に把握し、安全かつ快適に運転できるようにするとともに、交通の流れを分散させ、交通渋滞や交通公害の緩和を図っている。
 最近では、情報提供に用いられる媒体の多様化が進展している。特にカーナビゲーション装置の普及がめざましく、平成16年度末現在の累積出荷台数は、約1,809万台に達している。警察では、関係機関・団体と協力し、VICS(道路交通情報通信システム)によりカーナビゲーション装置に交通情報を提供し、時々刻々と変動する道路交通の状況を地図画面上にリアルタイムで表示できるようにしている。
 また、関係団体の協力の下、警察の保有するリアルタイムの交通情報をオンラインで供与するシステムを構築するなどして、カーナビゲーション装置のほか、携帯電話やインターネットを活用して交通情報を提供する民間事業の高度化を支援するとともに、交通情報の提供に関する指針を定め、こうした事業が交通の安全と円滑に資するものとなるようにしている。

 
図5-7 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示

図5-7 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示

 
(3) ITSに関する国際協力の推進
 ITS世界会議は、ITSに関する情報の交換と協力体制の構築を目的として、平成6年以降毎年、欧州地域、アジア・太平洋地域及びアメリカ地域の持ち回りで開催されている。16年10月には、愛知県名古屋市で第11回会議が開催され、世界53か国から産学官の関係者約5,800人の参加を得た。日本警察も、より実際の交通流の状況に即した信号制御を行うことのできる技術の研究開発・普及の状況等を紹介した。
 また、警察庁は、米国運輸省交通安全局との間で署名した、交通安全、ITS及び緊急時対応の協力に関する文書に基づき、職員を16年10月から5か月間、米国運輸省に派遣した。17年1月には、米国運輸省で会議を開催し、両国が推進するITSに関する施策について研究発表を行った。

 
第11回ITS世界会議
第11回ITS世界会議

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