第5章 安全かつ快適な交通の確保 

6 交通指導取締りと交通事故事件捜査

(1) 交通指導取締り
 [1] 悪質・危険性、迷惑性の高い運転行為への対策の強化
 警察では、街頭における機動的な交通取締りを推進し、違法行為の未然防止に努めるとともに、交通事故に直結する悪質・危険性の高い違反及び迷惑性が高く住民からの取締り要望の多い違反に重点を置いた取締りに努めている。平成16年中は、850万5,919件の道路交通法違反を取り締まった。

 
図5-8 道路交通法違反の取締り状況(平成16年)

図5-8 道路交通法違反の取締り状況(平成16年)
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 [2] 使用者等の背後責任の追及
 事業活動に関して行われた放置駐車、過積載運転、過労運転、最高速度等の違反やこれらに起因する事故事件について、運転者の取締りにとどまらず、使用者に対する指示及び自動車の使用制限命令を行っているほか、これらの行為を下命・容認していた使用者等(注)を検挙するなど、その背後責任の追及に努めている。


注:使用者のほか、安全運転管理者その他自動車の運行を直接管理する地位にある者も含む。

事例
 兵庫県警察では、休憩する時間がないなどの無理な運行計画に基づく過労運転による交通事故を防止するため、過労運転等下命・容認事件捜査本部を設置した。捜査本部は、まず、速度制限違反等の交通違反により大型貨物自動車の運転手を検挙し、運転手から運行日程等について詳細に事情聴取を行った。そして、その供述を基に事業者の事務所等を捜索し、運行記録等の証拠を押収して分析し、16年6月までに、22法人1事業所46人を道路交通法違反(自動車の使用者の義務等違反)で検挙した。

 
(2) 交通事故事件捜査
 [1] 交通事故事件の検挙状況
 平成16年中、交通事故に係る業務上(重)過失致死傷事件の検挙件数は86万4,569件と、前年より8,760件(1.0%)増加した。また、警察が認知した物件事故の発生件数は約312万件であった。

 
表5-4 業務上(重)過失致死傷事件の検挙状況(件)(平成16年)

表5-4 業務上(重)過失致死傷事件の検挙状況(件)(平成16年)
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 [2] 適正な交通事故事件捜査の推進
 各都道府県警察本部の交通捜査担当課に事故捜査指導官を配置し、警察署が取り扱う事故事件のうち、原因の究明が困難なものについて、実地に指導を行うなど、組織的な捜査により、適正な交通事故事件捜査の推進に努めている。特に、一方の当事者が死亡し、又は重体であることなどから事情聴取ができない事故や、当事者の言い分が食い違う事故については、初期の段階から組織的な捜査を推進し、目撃者や物証の確保等に努めている。
 ひき逃げ事件については、迅速な初動捜査を行うとともに、現場こん跡画像検索システム(注1)等の交通鑑識資機材を効果的に活用し、被疑者の早期検挙に努めており、16年中の死亡ひき逃げ事件の検挙率は95.9%に達している。


注1:ひき逃げ事件の現場に遺留されたレンズ片やタイヤのこん跡から、逃走した車種等を絞り込むシステム

 
交通事故の捜査
交通事故の捜査

事例1
 15年11月に発生した死亡ひき逃げ事件について、目撃者の供述や被害者の解剖結果を詳細に分析した結果、被疑車両が衝突後に一旦停止しながら、路上に転倒している被害者をひいて逃走していたことが判明した。16年5月、殺人罪で検挙した(神奈川)。

事例2
 16年3月に発生した死亡ひき逃げ事件について、発生から約30時間後に、業務上過失致死罪及び道路交通法違反(救護措置義務違反)で被疑者を逮捕したが、呼気中からアルコールは検出されなかった。しかし、事故発生前に被疑者が利用した飲食店での飲酒量を基に事故発生時のアルコール濃度を推定したところ、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態にあったことが判明した。同月、危険運転致死傷罪により起訴された(千葉)。

 [3] 交通事故事件捜査の科学化・合理化
 ち密で科学的な交通事故事件捜査を求める国民の声を踏まえ、高度な知識及び技能を有する交通捜査員を養成するため、衝突実験を行って事故原因の解析を行うなどの専門的な教育を行っている。また、事故当事者の負担軽減や迅速な事故処理による交通渋滞の早期解消を図るため、交通事故自動記録装置(注2)等の各種捜査支援システムや、一定の軽微な物件事故の現場見分を省略する制度を活用している。


注2:センサー部(ビデオカメラ、マイク)及び制御機(音源識別部、画像メモリー、VTR)から構成され、交差点内で交通事故が発生すると、衝突音やスリップ音を感知して、その前後の状況(車両の走行状況、信号の表示等)をVTRに自動的に記録する装置

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