第4章 組織犯罪対策 

4 民事介入暴力対策と暴力団排除活動

(1) 都道府県暴力追放運動センターの活動
 暴力団対策法の規定に基づき都道府県公安委員会が指定した都道府県暴力追放運動推進センター(以下「都道府県センター」という。)は、警察、弁護士会等との連携の下に、民事介入暴力対策や暴力団排除活動を活発に展開している。

 
図4-2 都道府県センターの主な活動

図4-2 都道府県センターの主な活動

 
(2) 行政対象暴力対策の推進
 暴力団を始めとしてた反社会的勢力が、不正な利益を得る目的で、行政機関やその職員を対象として違法又は不当な行為を行っている実態が明らかになっている。これに対して、警察では、都道府県センターや弁護士会と連携し、行政機関の職員を対象とした不当要求防止責任者講習を実施するなど、このような行政対象暴力を排除する対策を推進している。
 また、全国の地方公共団体では、暴力団等の不当要求等に対する組織的な対応を規定した、いわゆるコンプライアンス(法令遵守)条例、要綱等の制定を進めており、平成16年末現在、全国の地方公共団体の72.6%が、こうした条例、要綱等を制定している。

事例
 16年7月、警備会社を経営する山口組傘下組織関係者(54)らは、市が委託する市民まつりの会場警備への参入を求め、同市の担当職員に対し、要求を受け入れなければ市民まつりを妨害する旨脅迫したが、同市は、制定後間もない不当要求行為等に関する規則に基づき組織的対応を図り、警察に届け出たことから、同年8月、警察は、同人らを強要罪で検挙した。また、同市は、同規則に基づいて、この警備会社を指名停止処分とした(兵庫)。

 
(3) 各種業及び公共事業からの暴力団排除
 警察では、暴力団の資金源を遮断し、業の健全化を図るため、国及び地方公共団体と連携して、貸金業、産業廃棄物処理業、建設業等の各種業からの暴力団排除を推進している。また、国及び地方公共団体と連携して、公共事業の請負業者から暴力団関係企業を排除するなど、公共事業からの暴力団排除を推進している。

事例1
 警視庁は、東京都知事から貸金業の規制等に関する法律(注)の規定に基づく意見照会を受け、貸金業の登録申請者について所要の調査を実施したところ、申請者が住吉会傘下組織組員であることが判明したことから、その旨の意見陳述を行った。これを受けて、平成16年2月、東京都は、当該登録申請を拒否した。


注:平成15年の貸金業の規制等に関する法律の一部改正により、暴力団員等を貸金業から排除するための登録要件の厳格化等の規定が整備された(16年1月1日施行)。

事例2
 三重県警察は、産業廃棄物処理会社が外国人2人を不法就労させていた事件を捜査する過程で、同社が山口組傘下組織幹部に対し役員報酬を支払っており、同社の人事権が山口組傘下組織幹部に掌握されているなど、同社の事業活動が暴力団構成員等に支配されていることを把握し、三重県に対し、その旨の意見陳述を行った。これを受けて、16年3月、三重県は、同社の産業廃棄物処理業の許可を取り消した。

 
(4) 暴力団員を相手方とする民事訴訟支援
 全国各地で、暴力団事務所の明渡し又は使用禁止請求訴訟、暴力団員の違法行為による被害に係る損害賠償請求訴訟等、暴力団員を相手方とした民事訴訟が提起されており、警察では、都道府県センターや弁護士会等と連携し、訴訟関係者に対する暴力団情報の提供や訴訟関係者の保護対策等の支援を行っている。
 平成16年中に警察が行った暴力団関係事案に係る民事訴訟支援の件数は81件であり、そのうち、訴訟の提起に係る支援が35件、仮処分命令の申請に係る支援が23件であった。

事例
 7年に発生した山口組傘下組織と四代目会津小傘下組織との対立抗争事件において、警戒中の警察官が誤射され、殺害された事案につき、遺族が山口組組長の使用者責任を問う民事訴訟を提起したため、京都府警察等は、情報提供、遺族や弁護団の保護対策の実施等により、遺族側を全面的に支援した。16年11月、最高裁判所は、山口組組長の使用者責任を認める判決を言い渡した。

 第2節 暴力団対策

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